
イギリスの新たなリーダーが就任会見を行いました。10月24日にイギリスの新たな首相になることが決まったのがジョンソン政権で財務相を務めていたリシ・スナク氏です。年齢は42歳と20世紀以降のイギリスの首相として最年少です。まだインド系の両親を持つ移民2世で初めてのアジア系としても注目されています。トラス前首相の経済政策を一貫して批判してきたスナク氏ですが、今後どのような政策を打ち出すのかWBSが徹底分析します。
アジア系で初イギリス新首相誕生
金融エリート スナク氏の経歴
日本時間10月25日午後6時すぎ、辞任を前に最後の会見に臨んだトラス氏。
イギリス
トラス前首相

この国は引き続き嵐の中を戦うことになるが、私はイギリスとイギリス国民を信じている。
こう言ってわずか7週間で首相官邸を去ることになったトラス氏。
そのおよそ1時間半後、姿を現したのはチャールズ国王から新たな首相に任命されたスナク氏です。
イギリス
スナク首相(42歳)

イギリスを団結させる。言葉ではなく行動で。
だから私はここにいる。国を未来に導くための準備はできている。
42歳での就任は20世紀以降のイギリスの首相としては最年少。さらに史上初めてとなる「インド系」「白人以外」の首相です。
イギリスのインド系住民からは歓迎の声が…
インド系の住民

インド系として誇らしい。イギリス経済にもいいことだ。
インド系の住民

白人か白人以外かは関係ない。彼(スナク氏)はイギリス生まれだから。
喜びの声はインドでも…
インドの住民

かつてインドを支配していたイギリスでインド系が首相になるのは誇りだ。
実はスナク氏の首相就任が決まった10月24日はインドのヒンズー教徒の祭り「ディワリ」の初日。
アメリカのホワイトハウスでもディワリを祝うイベントが開かれました。出席したバイデン大統領はスナク氏について…
アメリカ
バイデン大統領

非常に驚くべきこと。画期的な出来事で重要なことだ。
1980年、イギリス南部で生まれたスナク氏。両親はアフリカからイギリスに渡ったインド系移民です。母親が経営していた薬局を手伝ううちにビジネスに目覚めたといいます。
イギリスの名門オックスフォード大学を卒業し、アメリカのスタンフォード大学大学院でMBAを取得。
その後、金融大手のゴールドマン・サックスに入社するなど金融エリートの道を歩んできました。
政治の世界に入ったのは2015年。わずか5年後の2020年にジョンソン政権でNo.2の財務相に就任しました。
自らレストランのスタッフ役を務め、イギリス版Go To Eatと呼ばれた飲食業の支援策をアピール。
ジョンソン氏とともにコロナ禍で打撃を受けたイギリス経済の立て直しに務めました。
スナク氏 財務相時に「増税」も
"減税派"トラス氏とは真逆?
一方でスナク氏は膨らむ財政支出を補うため大企業向けの法人税率をおよそ50年ぶりに引き上げると発表。財政規律を重んじる増税派としての一面を覗かせました。
イギリス
スナク財務相(当時)

これは重大な決断であり、どの財務相もやりたがらないことだ。
しかしその後、当時のジョンソン首相がコロナ禍でパーティーをしていた問題などで支持率が低迷します。
見切りをつけたスナク氏は今年7月に財務相を辞任。
これをきっかけに他の主要な閣僚や政権幹部が相次いで辞任したことでジョンソン氏退陣の流れを決定しました。
そして始まった党首選では…
イギリス
トラス氏

今こそこれまでと違うことをしなければ。
大胆に、それが首相として行うことだ。
インフレ対策として大幅減税を掲げたトラス氏と減税には慎重な姿勢を見せたスナク氏が真っ向から対立。
この時はトラス氏に破れたものの実際にトラス政権が減税を推し進めるとポンドが急落するなど市場は混乱。その結果、トラス氏は辞任に追い込まれ経済混乱の収拾に向けて手腕を期待される形でスナク氏が新たな首相として就任することに。
今後の経済政策についてスナク氏は…
イギリス
スナク財務相(当時)

経済の安定を政府の政策の中心に据える。
イギリス 砂区新首相の政策は?
求められる「経済の安定」
スナク氏は経済の安定のためどのような政策をとるのでしょうか。
イギリス経済に詳しい専門家は…
第一生命経済研究所
主席エコノミスト
田中理さん

市場の信頼回復というためには税制規律を重視せざるを得ないだろう。
さらなる増税、そして歳出削減を盛り込んでくることになるだろう。
トラス氏が掲げていたインフラ投資の拡大や国防費の増額を見直す他、資源価格の高騰の恩恵を受けるエネルギー企業への税金を引き上げる可能性があると指摘します。
一方で求められるのが物価対策です。イギリスの消費者物価指数の上昇率は10%台と40年ぶりの高水準となっていますが…
第一生命経済研究所
主席エコノミスト
田中理さん

物価上昇が一段と加速するのであれば、そこでの対応も必要となってくる。
財政規律をとるのか、物価対策をとるのか、そういった重要な選択を迫られる。
今後のイギリスの景気については…
第一生命経済研究所
主席エコノミスト
田中理さん

物価上昇が続く中で金融の引き締めも続いていく。
ここから景気後退がある程度長期化するのは避けられない。
そうなると国民からの不満も高まりかねない。
そう考えるとスナク政権は短命に終わる可能性も十分に考えられる。
難しい舵取りが求められる中、経済の安定を実現できるのか、スナク新首相の手腕が問われています。