アメリカで最も需要な経済指標の一つ最新の雇用統計が8月5日に発表されました。7月の農業分野以外の雇用者数は市場予想では前の月と比べて25万人の増加でしたが、実際は52万8,000人の増加となりました。雇用者の総数は新型コロナの感染が拡大する前の2020年2月の水準を回復しました。そして失業率は前の月から0.1ポイント改善した3.5%でこちらも2020年2月の水準に並んでいます。こうした中、人手不足に悩む観光地では新たな対策が始まっています。
米雇用統計 予想上回る!レジャー・接客業がけん引
ニューヨーク支局
滝沢孝祐記者
ニューヨークの中心部から車で3時間ほど離れたニュージャージー州にある行楽地に来ています。私が歩いている遊歩道沿いにはアイスクリームを売っている飲食店やサングラスを扱っている店舗、Tシャツなどを売っている土産物店などが並んでいます。まだ早い時間ですが海水浴に来たお客さんの姿で少しずつ賑わいを見せています。
新型コロナによる巣ごもりからの反動で旅行やレジャーに対する需要は強く飲食店などの雇用も増えています。
8月5日に発表された雇用統計でもレジャー・接客業の雇用者数は前の月と比べて9万6,000人増加し全体をけん引しています。
ニューヨーク支局
滝沢孝祐記者
このあたりの店舗では若い人が働く姿が多く見られます。人手不足を解消するためこちらでは高校生アルバイトの雇用拡大に向けてなんと法律まで改正しました。
アメリカ 高校生時給2,000円!人手確保に夏限定新制度も
ニューヨークに近い大西洋に面したビーチ。新型コロナで旅行を避けていた観光客が戻り賑わっています。
海辺の遊歩道にあるゲームセンター「ゲートウェー26」。店内は海水浴の合間に立ち寄る観光客が押し寄せています。昔ながらのコイン落としゲームやUFOキャッチャーなどが楽しめます。
オーナーのブライアン・シャープさん。夏が一番の稼ぎ時です。
ゲームセンターを経営
ブライアン・シャープさん
今までで一番忙しく従業員の数も過去最高だ。
今の人数でないと押し寄せる大勢のお客様に対応できない。
ただスタッフの募集には苦労したといいます。そこで頼ったのが彼ら。
ゲームセンターを経営
ブライアン・シャープさん
お客様の入りはどうだ?
10代の高校生や大学生です。いまやこの店に欠かせない存在となっています。
学生アルバイト
ジェイデン・リベラさん(18歳)
外科医を目指しているが道のりは遠い。資金が必要なのでがんばって働いている。
高校生や大学生を引きつけるため時給はコロナ前の1.4倍、日本円で2,000円に引き上げて人手を確保しました。
ただ高校生の労働には制限も。ニュージャージー州では16~17歳の労働時間の上限が1週間あたり40時間と定められています。そこで州政府は6月に働き手を確保したい産業界の要請を受けて労働に関する法律を改正。労働時間の上限を夏休み限定で50時間に引き上げる法案に州知事が署名しました。
シャープさんは今後、労働時間の上限の引き上げを活用したいと考えています。
ゲームセンターを経営
ブライアン・シャープさん
今年はなんとか人手を確保できたが今後は必ず新制度を活用するだろう。
法律の改正を求めていた州の経済団体の幹部は…
経済団体「NJBIA」
クリッシー・ビュータス氏
短期雇用が多い観光地の企業は人手不足の影響を最も受けている。
この新制度は人手不足への直接かつ即効性のある解決策だ。
規制緩和で雇用拡大狙う!法改正に批判の声も
人手不足を解消するために高校生の労働時間を延長するというのは苦肉の策ともいえます。こうした動きは広がっているのでしょうか。
ニューヨーク支局
滝沢孝祐記者
若者の雇用機会を拡大する動きはニュージャージー州に限ったことではありません。
ミシガン州ではこれまで禁止されていた飲食店で働く17歳の若者がアルコールを提供することが可能になりました。これも人手不足に対応するための法改正です。
ただアメリカのメディアからは労働者を引きつける賃金や福利厚生を整えなければ人手不足の根本的な解決にはならないと批判的な声が挙がっています。
アメリカでは今、人手不足が続く状況にも関わらず経済成長率は今年に入って2四半期連続でマイナスとなっています。
景気後退が現実味を帯びている中で企業が採用意欲を維持していけるのか今後も雇用の動向に注目が集まります。