小北農場
鹿児島の畜産農家、小北農場の小北剛さん。
出産予定日を迎えた牛のために毎晩、見張り小屋で待機をしていました。
予定日から4日後、親牛に出産の兆候が…。
仔牛を無事に出産しました。
やっと産まれた。本当ひと安心です。
牛の出産は危険と隣り合わせ。人間が立ち会えず死産になることもあるといいます。
まる1年間、損失になるので10月10日分の経費、親牛の餌をあげる、そういったものが全て。
畜産農家のリスクと重労働。
その解決に動き出した会社があります。
デザミス株式会社
[blogcard url="https://www.desamis.co.jp/"]
デザミス、2016年に創業したばかりのベンチャー企業です。
社長は清家浩二さん(49歳)。
清家さんは以前、パナソニックのグループ会社に勤務。農業用扇風機の営業を担当していました。
その時、畜産農家の過酷な現場を目の当たりにして、それを解決したいと会社を立ち上げました。
過酷な環境の中で仕事をしている人もいっぱいいて、牛1頭1頭に手が届かない、そういった人の代わりを。
U―motion
清家さんが手掛けるのは首に取り付けるセンサー「U―motion」。
牛の動きをリアルタイムで捉えることができるといいます。
牛が移動する向きや速さを感知して、今どのような動きをしているかを判別。首の高さから立っているのか寝ているのかもわかります。
それらのデータを受信機からコンピューターに送ります。
また牛が餌場にいくとセンサーが感知。餌を食べたかどうかも分かります。
さらにはこんな情報も、
発情見られる画面ある?
ちょうど今、この牛が出ているんですけど。
パソコン画面に映し出されていたのは発情のタイミングを表す波形。発情している牛特有の動きを捉え知らせてくれるのです。
牛から「気持ちいいよ」とか「この建物が最高だよ」と聞ければ一番いいが、それがかなわない。牛にセンサーをつけて答えを導き出すのが最善策。
森ファーム宮崎
10月上旬、宮崎県高鍋町。
清家さんがやって来たのは大規模な畜産農家。
すでに「U―motion」を導入していました。
採食、飲水、動態、動いているとか。
するとパソコン画面に牛の異変を示すデータが…。1頭の牛がほとんど餌を食べていないといいます。
森ファーム宮崎の角園大樹さん、
牛のそばに行ってくれる?
43101、歩いていいない。多分、朝から。
牛舎に駆けつけると、そこには立てなくなった牛が…。
獣医呼んだ?呼んで!
30分後、
自分でまだ立てますか?
肘で立ちます。
もともと足が弱いとか?
ない。今日たまたま。首にこれをつけて、水を飲んだとか、動いていないとか。寝る時間が長くて、動いていないというのを拾って見に来たら全然立てなくて。
牛の異変を「U―motion」だけが捉えていました。
「U―motion」には更なる可能性もあります。
森ファーム組合の森義之さん、
若い子の就農を目指すには見える形にしないといけない。
牛の生態をデータ化することで経験不足をカバー。
若手の新規就農を助けることも期待されています。
この画期的な装置、畜産の現場をさらに大きく変えようとしていました。
分娩アラート
デザミスの清家社長、畜産の仕事を一変させる新たなシステムの開発に着手していました。
今回、新しい機能を実装する予定なので、繁殖の一連の流れの中で「分娩」という事象があるのでそれをお知らせできるアラートがあれば。
清家さんが訪れたのはあの小北農場。
牛の出産で苦労していた小北さん。分娩時期を知らせるアラートに可能性を感じデータ集めの協力を買って出たのです。
おっぱい張ってきましたよ。まだ余裕がある。
まだつかめる感じ。これが張ってくるとつかめない。皮膚に余裕がなくなる。
清家さん、分娩アラートの開発に向け出産間近の牛に起きる体の変化を知ろうとしていました。
実際に自分の目で見て、自分の手で触ることで理解を深めていきます。
目で見えるような変化がないと難しい。
清家さんと牛を観察しているのは赤野間伸行さん。データ分析を得意とするNTTテクノクロスの技術者です。
分娩アラートの開発、清家さんと二人三脚で取り組みます。
常に寝ていたのがだんだんなくなってきて、その1時間後にポッと産まれるという理屈じゃないような気がする。
NTTテクノクロス株式会社
[blogcard url="https://www.ntt-tx.co.jp/"]
NTTテクノクロスではデータの分析が進められていました、
「U―motion」で捉えたデータと自分で見た牛の行動を照らし合わせていきます。
このデータが何でこういう動きになるのか全てメモしていかないと分からない。ものすごくアナログで労力がかかる。
気が遠くなるような地道な作業。
分娩の兆候を示す牛の動きを果たして見つけ出すことができるのでしょうか?
出産
12月16日未明。
小北農場で動きがありました。
分娩アラートが鳴ったので牛舎を見にいく。
分娩アラートのテストを行っていたのです。その通知が初めて届きました。
出産を控えた牛の様子を見ていくと、
尻尾を上げていたりするのでだいぶ近くなっている。
尻尾を上げるのは出産間近のしるし。
そして、無事に仔牛が産まれました。
1頭目だから。今からどんどん分娩アラートを活用していきたい。1頭目では役に立った。
出産は通知から8時間後のことでした。
「U―motion」の分娩アラートが捉えていたのはいつもと違う牛の行動。
寝ているはずの時間に落ち着きのない動き。これが決め手となりました。
大きな一歩を踏み出した分娩アラート。
実用化されれば畜産農家の負担を減らすことになるはずです。
さらに清家さん、「U―motion」の小型化も進めています。
分娩アラートも搭載予定。
より扱いやすくすることでさらなる普及を目指します。
世界の牛全てをインターネットでつなげていくのが目標。日本国内だけではなくて海外に向けてさまざまな展開をしていきたい。
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