元電通マン58歳の挑戦
一方こちらはスポーツ局出身の桑原浩幸さん。退職後は畑違いの音楽ビジネスを始めました。
一緒に仕事ができていけば良いと思います。
ありがとうございます。
この日は演奏家として行きていくことを目指す音大生たちとの打ち合わせでした。
元電通マンたちはどんな働き方をしているのか。桑原さんの自宅を訪ねました。
こちらが住居兼オフィス。
いまの桑原さん主な仕事場はこのリビングの一画。なぜ大手企業の電通を定年前に辞めたのでしょうか。
私の場合は電通に入社してがむしゃらに仕事をして、40歳のときに国債スポーツ業務部長の要職に就いた。
上から命令されるのはもともと好きではなかったが、下に命令するのもあまり好きじゃないことに気付いた。
50歳のときにゼロからピアノを習い始めたことが現在の音楽ビジネスへの挑戦につながったといいます。
すごい演奏力を持っている人たちの演奏を多くの人に聴いてもらえたらいいなと思った。
たぶん僕くらいの規模のビジネスで十分できるんじゃないかなと。
埼玉県所沢市。
ワンルームマンションの一室で引っ越しが行われていました。
クレーンで引き上げられるグランドピアノ。その横に桑原さんの姿がありました。
北海道の実家に戻るピアニスト、安藤有佳さんのためにグランドピアノを無償で預かることにしたのです。
本当にありがたいです。
一体どこで預かるのでしょうか。
2週間後、川崎市武蔵小杉のタワーマンション「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」。
そのロビーにあのグランドピアノがありました。
そこで始まったのが海外のコンクールで優勝経験のある注目の若手ピアニスト、吉原麻実さんのコンサート。
吉原さんは桑原さんが支援する第一号のピアニストです。
住民向けのコンサートは無料。
ピアノもマンションに無償で貸しています。
ミッドスカイタワー管理組合の志村仁代表理事。
ピアノを置いてほしい人が世間にいて、我々には空いている空間があるのでみんなにとってWin-Win。
無料ばかりの桑原さんのビジネスですがそれでも利益を上げられる秘密がありました。
本日イヤリングを身につけている。
とっても軽くてすごくおしゃれなデザイン。
皆さんよろしければ、店にお立ち寄りください。
吉原さんが紹介したのは玄関近くに設置されたポップアップストア。
実は紙と木でできたイヤリングのメーカーなど2社がタワーマンション住民との接点を求めてスポンサーになっていたのです。
スポンサーがあることによって成立するビジネスモデル。
十分これで経済が回っていく。
3月25日、栃木県宇都宮市。
ここで新たなビジネスへの挑戦が始まろうとしていました。
宇都宮短期大学のコンサートホールにいたのはあの吉原さん。
そして桑原さんの姿もありました。
実は桑原さんは自ら音楽レーベル「キームジーク」を設立。吉原さんのCDを販売するほか、今後は演奏動画の配信なども検討していてそのトライアルを行っていたのです。
チームメンバーも電通を早期退職した音楽や映像のスペシャリスト。
制作したコンテンツを今後世界に発信していきたい考えです。
皆さんの応援のおかげで今の私がいる。
本当に感謝しています。
仕事が遊びで、遊びが仕事になっている。
あまり働いている意識はない。
世の中のためになることを自分たちのスキルでできて、暮らしていける最低限のお金は稼げる。
そのへんが魅力なのかなと。
仕事の規模は小さくなったものの確かな充実感があるという元電通マンたち。ミドル層の新たな働き方のヒントになるかもしれません。