東京オリンピック・パラリンピックをめぐって汚職事件に続き、新たな不正疑惑が明らかになりました。
五輪テスト大会で談合か
電通本社など家宅捜索
午前10時すぎ、特捜部の係官などが向かったのは広告最大手「電通」の本社です。
今度は東京オリンピックのテスト大会をめぐる談合疑惑が浮上。独占禁止法違反の疑いがあるとして東京地検特捜部と公正取引委員会が合同で家宅捜索に入りました。。
宮崎文子記者
午後8時30分すぎです。暗くなっている社内から捜査関係者だと思われる係官らが次々と階段を降りていく様子が伺えます。
強制捜査はテスト大会に関する業務などを受注したイベント制作会社のセレスポのほか、大会組織委員会の運営局元次長の自宅などにも及びました。
問題となっているのが大会組織委員会が行ったオリンピックテスト大会の計画立案など26件の事業についての競争入札。
電通や今のADKなどの広告会社やセレスポなど9つの会社と1つの共同事業体が総額およそ5億円あまりで落札しました。
関係者によるとこの競争入札で事前に落札者を決める受注調整、つまり談合を行った疑いが持たれています。
さらに入札で決まった5億円分とは別に実際のテスト大会や本番での競技運営についてもそのまま随意契約が締結されていて、その総額は数百億円にのぼるとみられます。
今回の一斉捜索を受け、電通は…
電通
多大なるご心配、ご迷惑をおかけしていることを心よりおわび申し上げます。
全容の解明に向けて調査に全面的に協力してまいります。
解明のカギは"課徴金減免"?
11月25日の強制捜査を受け、この人は…
東京都
小池知事
よく使われる言葉かもしれないが誠に遺憾。
調査チームを設置した東京都。組織委員会に派遣されていた都の職員などから聞き取り調査を行うとしていて、年内にも中間まとめを公表する方針です。
東京都
小池知事
捜査には全面的に協力するように伝えている。
11月25日に一斉捜索が行われた談合疑惑。発端となったのは別の事件、すでに起訴されている元理事らによる汚職事件なのです。
汚職事件で前社長などが逮捕・起訴されたADKが公正取引委員会に対し、受注調整があったと自主申告したとみられます。
ここで使われたのが独占禁止法の課徴金減免制度です。
課徴金減免制度とは関与した事業者自らが違反内容を自主申告すれば課徴金が減額されるというもの。捜査が始まる前、1番目に申告すれば全額免除、その後は申請順位と協力の度合いによって課徴金が少なくなります。
公正取引委員会での勤務経験もある酒井弁護士によると…
公正取引委員会で勤務経験
堂島法律事務所
酒井紀子弁護士
最近はコンプライアンスという形で企業の中でも法令順守が非常に厳しくなっているので、違反行為をしたことを明らかにしていくことの方が事業者にとってメリットがあると捉えられる。
過去にはリニア中央新幹線の工事をめぐり大手ゼネコン4社が談合した、いわゆる「リニア談合事件」でもこの制度が使われました。談合を自主申告した大林組と清水建設への課徴金は3割減額されました。
酒井弁護士は今後、後に続く企業が出てくる可能性もあると指摘します。
公正取引委員会で勤務経験
堂島法律事務所
酒井紀子弁護士
1社が減免申請すると証拠なども公正取引委員会にいくので、そうすると他の事業者も申請しないと減免申請によるメリットを受けられない。
1社申請すると次々に申請するという形になる。
オリンピックへの不信をさらに深めた談合疑惑。特捜部と公正取引委員会は押収した資料などを分析し、実態解明を進めます。