治る最前線。
今回は年々患者が増加している認知症です。
これまで根本的な治療法はなかった認知症ですが、いま治る可能性がある治療法が試されています。
最新の治療を取材しました。

認知症
千葉県に住む林佳秀さん(62歳)。10年ほど前から認知症を患っています。

働き盛りだった50歳の時、物忘れがひどく病院に行ったところ認知症と診断されました。

林さんは徐々に記憶がなくなり、最近では会話が成り立たないことも多くなってきたといいます。
誰この人?

これは難しすぎる。

いまでは子どもが生まれた時のことも忘れてしまっているといいます。

「夫が認知症になって一番つらいことは?」
一緒の思い出がなくなってしまうこと。

そうかもね。

出会った時のこと、旅行に行った時のこと、子どもが生まれた時のこととか。

話す相手がいなくなってしまう。

林さんの病気は認知症の中でも最も多いアルツハイマー型認知症です。

認知症にはほかに脳血管性認知症、レビー小体型認知症などがあり、それぞれ治療が異なります。

認知症は神経細胞が死滅するなどして脳が萎縮し、記憶に障害が起きる。

発症の詳しい原因は解明されていません。
これはアルツハイマー型認知症の脳の検査画像。

正常な脳に比べ萎縮しているのが分かります。
亡くなったおばあさんがちょっとボケていたかもしれません。僕のことを忘れていた。

祖父祖母が認知症になったのを実際に見ていたので怖い。

父母はまだ大丈夫だがそろそろという感じ。

現在、国内の認知症の患者数は推定で500万人を超え、2025年には700万人に上ると考えられています。

アルツクリニック東京の新井平伊医師は、
認知症が怖いという社会的なイメージと一緒になって慌てふためいてしまうのが現状。

家族にとって経済的なダメージや精神的なダメージが大きい。

年々、患者が増え続ける認知症。
その治療の最前線を追いました。

日本医科大学千葉北総病院
[blogcard url="https://www.nms.ac.jp/hokuso-h/"]
認知症の新たな検査が登場しています。

千葉県に住む田村良子さん(仮名・77歳)。

1年ほど前から家族にもの忘れを指摘されるようになりました。

自分は全然気付いていない。

昨日話をしたと言われてもそれが思い出せない。

認知症になったら迷惑をかけてしまう。お父さんにも家族(子ども)にも。

そこで田村さんは最新の検査を受けることにしました。
ここに座って靴を脱いで寝ましょう。

受けるのはSPECT(スペクト)と呼ばれる検査です。

検査で使う薬が用意されました。

2ccの液体。ここからガンマ線が出ている。

微量な放射性物質を出す特殊な薬剤で副作用はほとんどないといいます。

検査ではまず薬を田村さんに注射します。
撮影します。動かずにいてください。

薬の投与から15分後、専用の装置で脳を撮影します。

この薬は血液で脳に運ばれ、血流が多いところに集まります。

薬から出る放射線を計測することで脳内の血流が少ない場所を特定できます。

認知症は種類によって脳の血流が悪くなる箇所が異なるため、血流状態を調べることで診断することができます。

検査にかかる時間はおよそ30分。
検査には保険が適応され3割負担でおよそ3万円。

お疲れさまでした。

結果は1週間ほどで出るといいます。
これは認知症患者の脳を左側から撮った断面画像。

明るいところは血流が悪い場所。
アルツハイマー型は脳の中心からやや後ろ側、レビー小体型は脳の後ろ側全体の血流が低下しています。

日本医科大学千葉北総病院の脳神経内科、山崎峰雄教授は、
早期発見し早く薬を使うことでいい状態で長く生活できる。

東北大学病院
[blogcard url="https://www.hosp.tohoku.ac.jp/"]
これまで根本的な治療法がなかった認知症に対する臨床試験が始まっています。

治療がどんなものか見せてもらいました。

使うのはこの最新の装置。

ヘッドホンのような形をした器具の先端から微弱な超音波が出る仕組みです。

器具を患者の頭に装着します。

開始します。

超音波を患者の頭に照射します。

治療はこめかみに当てた左右の端子から脳に超音波を照射します。

すると超音波の刺激により新しい血管が作られ血流が改善するのです。

血流が良くなることで脳の機能が改善するといいます。
治療は20分ずつ1日3回、週に3回続けます。

この臨床試験は現在、軽度アルツハイマー型認知症を対象に行なわれています。

東北大学の循環器内科、下川宏明教授は、
超音波の持つ血管新生効果、血流改善作用を使って直接脳に働き掛ける。

これまで十分な治療法がなかったアルツハイマー型認知症に対して患者に負担の少ない治療法になると期待している。

高齢化とともに患者が増え続ける認知症。
もの忘れなどが気になったら専門医を受診することが重要だといいます。
