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[モーニングサテライト]【Marketリアル】イギリス期待の大型上場が…[Deliveroo]

2021年5月10日

モーニングサテライト

「Marketリアル」、いまマーケットで起こっているリアルな事柄を現場をリポートしながらお伝えました。

今回お伝えするのはイギリスのロンドン証券取引所に上場したイギリスの料理宅配大手のデリバルーです。

このデリバルーは3月末に上場したばかりですが、上場前は「真の成功物語」と期待されていました。

しかし、実際は上場直後に株価が急落し「ロンドン史上、最悪のIPO」とまでいわれるようになりました。

株価急落の背景には何があったのでしょうか、ロンドンの中村記者が取材しました。

Deliveroo(デリバルー)

[blogcard url="https://deliveroo.co.uk/"]

イギリス・ロンドン。

ロンドン支局の中村航記者、

ロンドンの街中を少し歩くとあのような水色のバックを持ったデリバルーの、飲食の配達員というのが見えます。

2013年創業の料理宅配ベンチャー「デリバルー」。

ヨーロッパのほか、中等やアジアなど12の国と地域でサービスを展開しています。

利用者は専用アプリで好きな料理をオーダーするだけ。

中村記者、ハンバーガーセットともう一品を選びました。

ライダーと呼ばれる配達員たちの位置を確認しながら待つこと20分。商品が届きました。

コーラ、チーズフライ、ハンバーガー。

配達料などを含め締めて5,300円。

コロナの中、去年3月に始まったロックダウンで宅配サービスの利用が広がり、デリバルーの2020年の取引総額は前の年から64%も増加しました。

アメリカのアマゾンなどが630億円を共同出資する注目企業。

ロックダウンの最中にロンドン証券取引所への上場を発表するとイギリスのリシ・スナク財務省までもが異例のコメントを寄せました。

デリバルーは何千もの雇用を生むイギリスのテック企業の真の成功物語だ。

上場当日にデリバルーの創業者もこんな風に意気込みを明かしていました。

デリバルー創業者のウィル・シューCEO、

料理の宅配から始まり、日用品の宅配などに事業を拡大している。

デリバルーは未来の顧客について徹底的に考えている。

時価総額1兆円超えとの見方も出るほど久々の大型上場にロンドンは湧いていました。

ところが「ロンドン史上最悪のIPO」、翌日のフィナンシャル・タイムズにはこんな見出しが…

上場直後に株価は急落、公開価格から30%以上下落したのです。

その価格には今も届いていません。

長年、ロンドンの株式市場を見てきたフィナンシャル・タイムズの記者は…

ケイティー・マーティン記者、

株価は大幅下落し、取引に関与した人には衝撃だった。

誰にとってもまるで大惨事だった。

多くのファンドマネージャーが「株の構成」を良く思っていなかった。

上場後もCEOが支配力を残すかたちだからだ。

マーティン記者は背景にいくつもの要因があると分析しますが、そのひとつがCEOが議決権の過半数を握るかたちで上場したことにあったといいます。

さらに、

ライダーたち労働者の権利問題も理由だった。

ライダーが企業から適正に扱われているのか、上場などを機に関心が高まった。

上場発表により街中を走るライダーたちの労働環境に注目が集まったというのです。

4月、賃金や補償が十分でない抗議のデモがデリバルー本社や証券取引所の前で行われました。

恥を知れ!

こちらのムハンマドさんもデモに参加した一人。

仕事のスタートは朝7時30分ですが、効率よく稼げるわけではないようです。

店で中々品物を受け取れなくて30分待たされる時もある。

1件の注文で貰えるのは平均530円ほどだといいます。

しかも最近、こんなトラブルも…

事故に遭ったんだ。見てよ。

足をケガして2週間動けなかった。

もちろん補償なんてないよ。

契約書にはケガは保険でカバーされるとあります。

しかし、休業補償は出なかったといいます。ライダーは個人事業主とされるからです。

ライダーはひどい扱いを受けているのでデリバルーのもとで幸せとは言えない。

いろいろな企業がコロナ下でもスタッフにどうにか賃金を払ったりした。

ちゃんと賃金を払うことが正義だ。

ライダーたちの労働問題を抱えたまま上場したデリバルー。

今回の上場をロンドン証券取引所はどう捉えているのか話を聞きました。

ロンドン証券取引所株式債券プライマリー市場部門、チャーリー・ウォーカー氏、

個別の案件には答えられない。

私が言えるのはロンドン証券取引所に上場する全ての会社は法律を順守し、規制当局の承認を受ける必要があるということだけだ。

一方、一部の投資家から問題視された「CEOが支配権を握れる株式の発行」。

実はこれはイギリスが国として上場企業を増やそうと規制緩和に動いた中で起きていることでした。

デリバルーが上場先にロンドンを選んだのはこの「CEOが支配権を握れる株式の発行」した企業の上場が上位区分の市場でも認められる見通しだからです。

「支配権を握れる株式」のことは誤解されている。

プレミアム市場の規制緩和案は経営者に有利な株発行を何でも認めるのではなく、あくまでも敵対的買収や創業者の排除を防ぐためのものだ。

規制緩和の背景にあるのはロンドン取引所の危機感です。

2015年から2020年の世界IPO(新規株式公開)に占めるロンドンの比率はわずか5%。

EUから離脱したイギリスにとって金融市場をいかに活性化させるかが喫緊の課題なのです。

この上場を成功させないといけないというプレッシャーがブレグジット以降特にあった。

ヨーロッパ中の他の取引所がIPOを呼び込もうと躍起になっているからだ。

騒動はすぐに収束すると願っている。

今回のことは個別企業の問題でロンドン市場自体が間違ったわけではない。

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