政府は来年度以降、防衛費を大幅に増やす方針ですが、岸田総理大臣は12月8日にその財源としておよそ1兆円分の増税を検討するよう与党に対して指示しました。
いつからどのような税金が上がるのでしょうか?
防衛費「増額」めぐり…
与党に増税検討指示
12月8日、総理大臣官邸には浜田防衛大臣、鈴木財務大臣、自民党の麻生副総裁や宮沢税調会長、公明党の山口代表など岸田政権の中枢メンバーが集まりました。
その場で岸田総理が伝えたのが…
岸田総理

2027年度以降、防衛力を安定的に維持するためには毎年度、約4兆円の追加財源の確保が必要となります。
約1兆円超については国民の税制でご協力をお願いしなければならないと考えております。
防衛費拡大の財源としての増税です。
岸田総理

家計を取り巻く状況に配慮し、個人の所得税の負担が増加するような措置は行わないことといたします。
税目・方式等の施行時期を含めて検討いただくようお願いを致します。
5年間で総額約43兆円へ
防衛費財源は?新たな資金も
防衛費増額の内訳を見ていきます。
政府・与党は来年度からの5年間で防衛費を全体で17兆円ほど増額し、総額およそ43兆円とする方針を示しています。
現在、1年間の防衛費はおよそ5兆円ですが、今後は段階的に増やしていき、2027年度には9兆円に達する見通しです。
増額分の財源についてみていくと、2027年度に足りなくなる4兆円のうち、まず1兆円は既存の予算配分を見直す歳出改革によって捻出します。
次にもう1兆円は決算剰余金の活用を行います。この決算剰余金というのは前の年に余った予算のことで、2021年度の場合、およそ1兆4,000億円でした。その半分は国債の返済に、そしてもう半分は経済対策などに充てられてきたのですが、この経済対策などの分を防衛費に回します。
さらにもう1兆円は新たに創設する防衛力強化資金で対応します。この防衛力強化資金というのはどういった財源なのでしょうか?
そしてこれらの財源捻出にも関わらず1兆円ほど財源が足りなくなるとみられています。
岸田総理が12月8日に増税の検討を指示したのは、この1兆円分についてです。
増税されるのは一体どのような税金になるのでしょうか?
防衛強化のため「増税」へ
なぜ必要?異例のビル売却も
角谷キャスターが向かったのは防衛省。そもそも防衛費はなぜここまで膨らむのでしょうか?
自衛隊のトップを直撃しました。
角谷暁子キャスター
防衛費の大幅増額の必要性と意義は?

山崎統合幕僚長

中国の力による一方的な現状変更や試み、北朝鮮による核実験や弾道ミサイルの発射など、わが国の安全保障上の課題は深刻化している。
防衛力の抜本的強化には必要な予算の確保が必須だと考えている。
こちらは各国の国防費です。
金額 | 98~22年の伸び率 | |
---|---|---|
アメリカ | 約101兆円 | 2.9倍 |
中国 | 約28兆円 | 10.7倍 |
ロシア | 約7.6兆円 | 5.3倍 |
韓国 | 約5.6兆円 | 3.6倍 |
日本 | 約5.4兆円 | 1.8倍 |
金額ではアメリカが100兆円を超え、圧倒的ですが、およそ20年間の伸び率を見ると中国は10倍以上と急速に拡大しています。
日本もNATO(北大西洋条約機構)が防衛費の目標とするGDP比2%という水準まで引き上げようとしているのですが…
角谷暁子キャスター
GDP比2%の数字ありきになっているという声もあるが?

山崎統合幕僚長

必要性に基づいて積み上げた結果を要求している。
予算をしっかり確保し、国を守る体制の構築が必要だと思っている。
そのために政府は来年度以降、5年間で総額43兆円の予算が必要だとしています。
新たに新設されるのが防衛力強化資金です。資金を貯めておき、1兆円程度をまかないます。
その資金の一つだといわれているのが…
角谷暁子キャスター
防衛費増額の財源として、政府は大手町プレイスの一部の売却益を活用することを検討していることが分かりました。

東京・大手町にあるビル「大手町プレイス」。実はその一部が国の資産で、その売却益となる4,364億円を資金に充てる考えです。
ほかにもコロナ禍で支援を受けた病院を運営する独立行政法人などから剰余金などを返納させます。
「法人税」を増税か…なぜ?
公約になかった「増税」
それでも防衛予算の全ては賄いきれないため、岸田総理大臣は与党に対し「増税の検討」を指示したのです。
すでに与党税制調査会の中では「たばこ税」や「酒税」の税率引き上げも浮上していますが、現状有力視されているのは法人税の引き上げです。
指示を受けた自民党の宮沢税調会長は…
記者
草履から財源の4分の1は国民の税収で賄うという発言があったが?

自民党
宮沢税調会長

これからだね。
なぜ法人税の引き上げなのでしょうか?
自民党 安全保障調査会顧問の石破茂議員に聞きました。
自民党 安全保障調査会顧問
石破茂議員

法人税もずっと下がってきた。
円も安い水準、金利も低いということで、それは法人がそういう恵まれた状況にある法人が多いことは事実なんでしょう。
いろいろな社会インフラとか、そういうものが紛争によって破壊されたときに、そもそも経済活動は成り立たない。
だからどこに担税力、税を負担する能力があるかということをきちんと見極めるべきと私は思います。
ただ、去年の参院選の公約では増税については一切書かれていません。
角谷暁子キャスター
参院選の公約を見ると増税は書かれていない。
国民の理解は得られるか?

自民党 安全保障調査会顧問
石破茂議員

それは努力しないといけない。
みなさん今年大変でしね、ロシアがウクライナに侵攻しましたね、台湾情勢もなかなか厳しいですね、ですからよろしいでしょっていう。
それは感情に訴えることにはなっても本当に理解を得ることになると私は思っていない。
安全保障環境がどうなのかということもきちんと説明しなくてはいけない。
防衛力強化で「増税」
与党内から異論も
各国と比べて高い日本の法人税率。上げると企業は収益の圧迫化を恐れ、投資を控える可能性もあります。
与党内からも…
自民党中堅議員

法人税増税はあり得ない。コロナの出口がまだ見えていない。景気を冷やすことになる。
自民党税調幹部

国債で賄うこともできるわけだし、増税は公約には書いていないわけだから。
番組スタッフ
法人税増税に与党内で反対意見もあるが?

公明党
山口代表

これから税調でそうした防衛力強化のご理解の前提のもとで理解を求めるような議論を進めてもらいたい。
番組スタッフ
法人税増税すると企業は設備投資などを控えて…

公明党
山口代表

あなたは法人税を前提にしているが、私はそんなこと一言も言っていない。
踏まえないでください。税調の議論ですから。
自民党と公明党は12月9日以降、増税をめぐる所属議員の意見を聞く場を設けるなどし、意見集約を図り年内に一定の方針を示したい考えです。