地球温暖化対策を話し合う国際会議「COP26」の首脳級会合の2日目がイギリス・グラスゴーで始まり、岸田総理は各国に向けてスピーチを行いました。
現地には住田瑠菜記者が行っています。岸田総理はどのようなメッセージを発信したのでしょうか。

岸田総理は先程行ったスピーチで気候問題に全力で取り組んでいくと訴えました。

岸田総理。
「2050年カーボンニュートラル」日本はこれを新たに策定した長期戦略の下、実現していきます。

日本はアジアを中心に再エネを最大限導入しながらクリーンエネルギーへの移行を推進し、脱炭素社会をつくりあげます。

岸田はこう述べ、アジアなどの脱炭素化支援のため新たに5年間で最大100ドルの追加支援を行うと表明しました。

スピーチに先立ち岸田総理は就任後初めてアメリカのバイデン大統領と顔を合わせて短時間の懇談を行いました。両首脳は気候変動問題に加え「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、引き続き緊密に連携していくことを確認しました。

この後、イギリスのジョンソン首相やオーストラリアのモリソン首相などと会談する予定です。

「衆議院選挙の直後、非常にタイトな日程となりましたが、それでも現地での参加にこだわったその理由は何でしょうか?」
ある政府関係者は「G7で唯一いないというのはどうなのか、肝心なときにいないと言われても困る」と話しました。岸田総理はアメリカやヨーロッパ諸国などとの結束を示し、日本としても気候問題でのリーダーシップを示したい考えです。

しかし、COP26の会議では早くも資金などをめぐり先進国と新興国の間で溝が見られています。

第一生命ホールディングス株式会社
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日本時間の午後6時過ぎに始まった首脳級会合の2日目。

スリナムのサントキ大統領。
十分な資金援助がないことに深く失望している。

タンザニアのサミア・スルフ・ハッサン大統領。
気候変動に対する資金援助を求める。

新興国から相次いだのは温暖化対策を進めるための資金援助を求める声でした。

これに追い打ちをかけるのは世界最大の排出国である中国。会合は欠席しましたが書面で声明を発表。

先進国は新興国が対策をより良く実施できるよう支援するべき。

と求めました。
これに対し排出量2位のアメリカは…

アメリカのバイデン大統領。
2024年までに新興国向けの資金援助を従来の4倍にする。

さらにドイツ…
ドイツのメルケル首相。
ドイツは2025年までの拠出額を約7,900億円に増額する。

またEU(ヨーロッパ連合)も2027年までにEU予算から追加でおよそ5,600億円を拠出すると表明。次々と支援を打ち出しました。

先進国は2009年に新興国向けに年間およそ11兆円の資金支援を行うことで合意。ただ実際にはおよそ9兆円にとどまっていて新興国からは不満の声が上がっているのです。

排出量3位のインドも資金援助を求めた上で…

インドのモディ首相。
インドは2070年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする。

アメリカやヨーロッパ、日本などが2050年までの目標を掲げる中、さらに20年遅い目標を設定すると発表。

先進国と新興国で資金援助や達成時期をめぐり溝が深まっています。
新興国への資金支援が課題となる中、期待されるのが民間の金融機関による取り組みです。

世界の民間金融機関が加盟する団体がCOP26に合わせて現地で会合を開催。

そこに参加している第一生命ホールディングスの稲垣精二社長がテレビ東京の単独インタビューに応じました。

地球全体が脱炭素しないとこの問題を解決できない。

いち金融機関が取り組んでもダメだ。

Glasgow Financial Alliance for Net Zero、通称「GFANZ」。

主要メンバー会議の20人の顔ぶれの中には世界の大手金融機関のトップが名を連ねます、そしてアジアで唯一参加しているのが第一生命の稲垣社長です。

GFANZはCOPに合わせて3日にあるメッセージを表明します。
われわれ民間金融機関で資金を新興国に提供していくスキームをつくっていきたい。

2030年までに新興国の脱炭素化に必要とされる新規の投資額は1兆ドル以上とされています。

新興国の再生可能エネルギー投資やさまざまなインフラ投資はプロジェクト自体のリスクは先進国に比べるとやや高い。

国や公的機関はハイリスク・ハイリターンの部分を負担。

われわれ民間はミドルリスク・ミドルリターン。

場合によってはローリスク・ローリターンの部分を負担。

移行のリスクが高いところは新興国なので、新興国にしっかりとした資金提供をしていくことが全世界で脱炭素をしていくうえで非常に重要なテーマ。

資金支援の課題のほかに今回の会議ではどのようなテーマが焦点となったのでしょうか。
議長国のイギリス、ジョンソン首相が提案したのがCO2を多く排出する火力発電の廃止です。これに対し岸田総理はスピーチで次のように述べました。

日本は「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアチブ」を通じ、化石火力をアンモニア、水素などのゼロエミ火力に転換するため1億ドル規模の先導的な事業を展開します。

岸田総理が打ち出した排出量ゼロの火力発電。これに向けた日本独自の取り組みを取材しました。
石炭火力発電の依存度が高い日本。

現場では脱炭素に向けた取り組みが始まっていました。
名古屋市から車で1時間、巨大な建物です。

海沿いの一帯にあったのは…
JERAの碧南火力発電所、谷川勝哉所長。
石炭火力としては日本最大の出力を誇る発電所。

東京電力ホールディングスと中部電力が出資する発電会社「JERA」が運営する火力発電所。年間の発電量は300億キロワットアワーで工場が集中する愛知県の半分の消費電力に相当します。

石炭火力はこれまで経済発展、安価な燃料ということで安定供給に貢献してきたがCO2の問題がある。

先月発表されたエネルギー基本計画では石炭に依存せず、CO2を排出しない燃料の活用を促しました。

中でも注目されているのが…
ここはアンモニアタンク。燃料としてボイラーで燃焼させている。

主に肥料として活用されてきたアンモニア。

実は燃焼してもCO2を排出しないため、2030年の電源構成で水素とともに全体の1%程度を賄うことが基本計画に明記されました。

そこでこの発電所では10月から石炭に少量のアンモニアを混ぜて燃焼させる実証実験をスタート。

技術的な課題を検証し、2030年代には保有する石炭火力全体でアンモニアの比率を20%まで高める計画です。

段階的にアンモニアの利用率を高めていき、ゆくゆくは100%アンモニアを燃料にするように考えていく。

石炭火力を当面維持しつつもCO2が出ない火力発電を目指すJERA。
イギリスのジョンソン首相が石炭火力の早期全廃を呼び掛けたことについて社長の小野田聡氏は…

国によって事情が異なるから、どのように脱炭素を目指すかは国ごとに考えていくべき。

小野田社長はこう指摘した上で新興国への投資や技術供与を進め、国際的な脱炭素にも貢献していく意義を強調しました。

アジアだと、その国のプラットフォームのような企業に出資して一緒に取り組んでいく。

脱炭素に取り組んでいく。
