シリーズ「どう変わる?働き方」。
政府の後押しもあって副業を認める企業の割合は2017年からの4年間で2倍近くに増えています。ではどうすれば自分にあった副業を見つけれるのでしょうか、副業の達人の働き方を取材しました。
10の副業持つ複業家
千葉県北部の町、印西市。日曜日に行われていたのは…
中村龍太さん
良い色してますね。
スペイン発祥の炊き込みご飯「パエリア」の作り方教室です。
中村龍太さん
おこげができているかは見えないんですけど、スプーンで刺して具材を動かします。おこげができていれば動かない。
教室を主催するのは中村龍太さん(57歳)。実はこの教室、ただの料理教室ではありませんでした。
中村龍太さん
大切なのは皆さんがいうように理想や目標を作ること。
今日もパエリアのコンセプトを最初に書いてもらって始めたい。
参加者
トマトも切っちゃったほうが良いですよね。
パエリア作りを学ぶと同時に最新の経営理論「ティール型組織」について学べるワークショップにもなっているのです。
参加者
ワークショップをやって、パエリア作りをやるとすごく知り合い度・親密度も上がる。
楽しみながらパエリアを作りました。
実は中村さんにとってこのワークショップは…
中村龍太さん
副業でやっています。
パエリア教室だけでなくて副業が少しずつ増えている。
今は10事業。
なんと10個の副業を持つという中村さん。自らを"複業"家と名乗っていました。
転職先からの驚きの提案
東京・日本橋にあるIT企業「サイボウズ」。中村さんの本業はここの社員。DX(デジタル・トランスフォーメーション)によって社会課題の解決を目指しています。
もともとマイクロソフトの事業開発部で働いていた中村さん。9年前に青野慶久社長に実力を買われスカウトされました。ただ決断には大きな壁が…
中村龍太さん
転職すると給料がマイクロソフトの半分になってしまう。
家族に説明するには勇気が必要でためらった。
その話をした時に青野さんから"別のところで稼いできたらどうですか"と。
もともとサイボウズの事業には興味があった中村さん。給与の減少分は複業でカバーするという提案を受け入れ入社を決めたのです。
働き方改革という言葉もない2005年に副業を解禁したサイボウズ。青野社長は給与以上に自由な働き方を認めることが大事だと考えていました。
サイボウズ
青野慶久社長
1人1人が自分らしい働き方ができていると業績がよくない時に社員が離れていかない。
サイボウズも2008年から2012年くらいずっと業績が上がらなかったが、それでも離職率が下がり続けた。
副業が副業を呼ぶ?
そんなサイボウズに転職した中村さんが最初に副業として選んだのが…
中村龍太さん
これはニンジンの種です。
近所の人から借りた畑を使っての農業です。農業を副業に選んだのはITの知識を生かせると感じたからです。
中村龍太さん
与える水の適正値をスマホで見たり、ニンジンが得る温度の積算量を見て、収穫時期を予測するためのセンサー。
ITを活用した農業で味の良い野菜を安定して作るノウハウを構築。次第に周囲の農家から教えてほしいと言われるほどに。
そしてこの副業としての農業が思わぬ展開を呼んでいきます。
近くの農家と交流を続けるうちに生育状況の確認のために畑を上空から撮影するニーズがあると分かりドローンによる撮影や簡単な動画編集を行う副業を新たにスタートしたのです。
副業はさらなる広がりを見せていきました。
中村さんの畑のそばにある1棟のビニールハウス。サイボウズの仕事をリモートワークで行いながら空いた時間で農業をするために作り上げた、その名もグリーンベース。
このグリーンベースの作り方を教えるワークショップが新たな副業になりました。
中村龍太さん
こういう形でグリーンベースが売れるとは思わなかった。
中村さんは副業が副業を呼ぶ不思議な展開をSNSなどで発信。すると大学や企業から複業関連の講演が相次ぐようになりこれも副業の1つとなったのです。
現在の副業の数はなんと10種類。1つの仕事が別の仕事を生み出していく展開は回り回って本業にもいい影響を与えているといいます。
副業の収入によってトータルの年収はマイクロソフト時代とほぼ同じに。個人事業主として経費を使えるようになったため実質の収入はもっと増えた実感があるといいます。
"複業"が当然の時代へ
家族はこの10年近くの中村さんの働き方の変化をどうみているのでしょうか。
娘
菅原綾乃さん
前より笑顔が増えたかなと思います。
仕事というより集まって遊んでいるのかなって思うぐらい楽しそうに見えます。
企業の副業解禁が加速し始めた今、中村さんは複業が副業を呼ぶ働き方を多くの人に伝えたいといいます。
中村龍太さん
少し一歩先を進んだ働き方をしていると思いますし、それを僕は「人体実験」とよく言っているんですけど、実験の内容を共有することによって、もしかしたらその人に合った働き方に遭遇するかもしれない。。