経済WEEK特別企画。WBS最終日のチェンジは売り方と住宅の常識です。
こちらは1993年の映像です。ランチの時間でしょうか、店内が人で溢れています。そしてレジには商品片手に長い行列ができています。
店員が接客をして商品を売り、お客様がレジでお金を払う。これまで当たり前だった売り方の常識をチェンジすることで新たな需要を掴んだ企業があります。
取材を進めるとそこに日本の反転攻勢のヒントが見えてきました。
チェンジ!売り方の常識
東京・丸の内。
午前11時半ごろ。男性客が今日のランチを探しているようです。
すると冷蔵庫から何やら商品を取り出し、そのまま袋に入れて帰ってしまいました。
こちらのお客様も足早に去っていきます。
あれ、お会計は?
先月、丸の内にオープンしたクリスプ・ステーション。
店員がいない、レジもない、サラダの専門店です。
一番人気はアボカドやトマトが入ったメキシコ風「カル・メックス」。
全部で8種類、一律1,295円です。
その売り方に特徴が…
クリスプ 広報、坂井奈央さん。
自分の好きなサラダを選んで、このまま持って買っていただく。
新飲食店!?会計はいつでもOK
支払いは容器のカバーに印刷されたQRコードを読み取る。
クレジットカードなどで決済するだけ。事前に会員登録する必要はありません。
会計はその日であれば自分の好きなタイミングで決済が可能です。
常連客は…
昼休みがあまり長くない。
レジに並ばなくていいのが一番大きい。
社長の宮野浩史さん、なぜこうした店を作ったのでしょうか?
お客様が一番やりたいことはサラダを食べたいこと。
お金を払うことや並ぶことではない。
楽しいことを一番最初に持っていって、その後に面倒くさいことをやってもらう順番にできたらお客様の体験価値は上がるのではないか。
クリスプでは4年前から店頭のタッチパネルで注文から決済まで完結するシステムを導入。いち早く売り方の常識を覆してきました。
そんな中、コロナ禍で高まった非対面へのニーズ。さらに踏み込んだ業態への可能性を感じています。
本来10年とか15年のスパンで起きるような進化が2年ぐらいに濃縮されて、一気に起きている。
イノベーションにもっとお金や時間を使うことができたらもっと伸びる可能性があるのではないか。
チェンジ!売り方の常識
北海道札幌市。
北の大地にもこれまでの売り方の常識をチェンジした店「マンハッタンストア ムジン」があります。
お客様についていくと、一見普通のお店に見えますがどこにも店員の姿がありません。
脱・接客…新アパレル店とは?
実はここ、11月にオープンした無人のアパレル店です。
子供服からスキーウェアまでおよそ1,000点が並ぶ店内。
お客様はセルフレジでキャッシュレス決済をするだけです。
訪れたの客様は…
コロナ禍で人がたくさんいたらいや。逆にいないのは安心につながる。ゆっくり見られる。
こちらの親子、1時間ほど滞在し、1万円分をお買い上げ。
たくさん買ってしまった。
入店するには会員登録し、後はスマホのアプリでカギを解除するだけ。いつでも入退室できます。
店員を置かないことで24時間、年中無休で営業が可能に。
周辺の店舗が閉店した夜の時間にも続々とお客様が訪れます。
レジの近くに置いてある感想ノートには…
働く親には24時間営業ありがたし!
多様化しているライフスタイルに対応している点もお客様から支持を集めているようです。
さらにアパレル店ならではの理由も。
服を選ぶとき店員とのコミュニケーションも大事な場面もあるけど、どちらかというと苦手。
話しかけられると買わなければいけないのかなと思ってしまう。
店員からの明るい挨拶、お客様を見ると声をかける"おもてなし接客"がこれまでのアパレル店の常識でした。しかし、中にはこうした接客を苦手に感じるお客様もいたのです。
こうしたお客様のストレスを解消しようと常識をチェンジしたのが社長の竹田尚弘さんです。
私は昔から接客されるのがすごく嫌いで。
ゆっくり買い物することを考えると接客はなくてもいいのではないか。
竹田さん、実は創業93年のアパレル卸問屋「竹栄」の4代目。
去年10月、コロナ禍で社長に就任しました。真っ先に手掛けたのがこの店です。
コロナ禍によって売る側も変わらなければいけない。
店で見て、ネットで買う。この店は拡大するネット通販へと誘導するショールームの意味合いもあるといいます。
オープンから1ヵ月、早くも反響が…
竹田さんが見せてくれたのは東京にある同業者からのメールです。
次は無人店舗をやりたい。御社の無人店舗を訪問したい。
竹田さんのもとにはこうした問い合わせが相次いでいます。今後はこのビジネスモデルを全国に広げることを検討中です。
コロナ禍でチャレンジしやすい環境になっている。
逆にすごくチャンスだと思っている。
今だからこそできること、今じゃなければできないことを今やっている。