Koichiさん
[blogcard url="https://www.instagram.com/koichi1717/"]
スマートフォンを手に写真撮影をしている男性。
世界でも高い評価を受けているモバイルフォトグラファーのKoichiさんです。
Koichiさんの作品は去年と今年、連続してiPhoneの広告キャンペーンに採用され、渋谷の109、ドイツのベルリン、フランスのパリなど世界中のビルボードを飾っています。
Instagramのフォロワーは15万人以上。
その時、その瞬間の一番美しい姿、美しい情景をとらえる。
そんな、Koichiさんが最近手に入れたのが開発中のレンズです。
今までになかった表現ができるといいます。
まったく湾曲しない。
歪みなくクリアに撮影できる広角レンズです。
従来のレンズだと写真が中央に歪んでいますが、開発中のレンズは真っ直ぐクリアになっています。
世界でいろいろなメーカーがアタッチメントレンズを出している。試しているが一つとしていいものがない。今回のレンズは人間の目が見たままの雰囲気で撮れる。
実はこのレンズ、Koichiさんが「歪みのない、iPhone6用の広角レンズを作って欲しい」とある中小企業に依頼したものです。
株式会社コゾフィルタース
[blogcard url="http://cozofilters.co.jp/"]
その広角レンズを作っているのが東京・板橋区にある中小企業、株式会社コゾフィルタースです。
大手メーカーのレンズ製造の下請けをしていますが、石川晃社長は自社ブランドを作りたいという思いがありました。
しかし、そこには悩みもあります。
こういうものを作ろうとアイデアはあるが設計する人がいない。
レンズを設計する人、いわゆる光学設計士が中小企業にはほとんどいないといいます。
そこで頼ったのが光学設計士の木村正資さん(66歳)。
オリンパス株式会社などでレンズの設計をしていましたが、2年前に定年退職をしました。
これが従来のレンズ、4枚構造で少し歪んだ画像になる。今回はレンズを1枚増やして5枚構成で性能を出す。
従来は凹レンズ、2枚の接合レンズ、凸レンズの4枚で構成されていたものを今回は凸レンズ、凹レンズ、接合レンズ2枚、凸レンズの5枚構成にしました。
さらに、
今回1枚増えたが値段の安いガラスをなるべく多く使うようにした。
目標は販売価格1万円台。
予算を立てるのも設計士の仕事です。
株式会社コゾフィルタースが5枚構成のレンズを作るのは初めてのこと。
組み立ての現場
栃木県内の組み立ての現場では、1つ1つのレンズを手作業で重ね合わせていました。
ポイントは5枚のレンズの中心を一直線に合わせていくこと。
枚数が多くなるほど難しくなりますが、そこは技術の見せ所。
一通り重ね終えると、今度は機械にかけます。
山崎久美男工場長は
5枚のレンズの芯を出すために試行錯誤して作った機械。
振動を与えると、5枚のレンズの中心が一直線に並ぶといいます。
どんなに難しいものでも設計図通りに作るのは株式会社コゾフィルタースの得意技です。
歪みのない広角レンズを作り上げました。
石川晃社長は、このレンズに「トーキょーグラファー」というブランド名を付け世界に打って出ようと考えています。
iPhoneでこだわった写真を撮る人はユーザーの1割はいると思う。その全ての人に売るのが目標。
板橋区
板橋区役所。
そこに今回のレンズを設計した木村正資さんの姿がありました。
実は定年退職後、板橋区の企業活性化専門員に重任しています。
板橋区は昭和初期から双眼鏡や陸軍の光学兵器を製造する工場が集まり、その関連企業は1978年ごろの全盛期で約400社、光学の町として知られていました。
しかし、現在はわずか60社。
そこで板橋区は光学の町を再生させようと木村正資さんを専門医として呼びました。
板橋区産業経済部の産業戦略担当課長の諸橋達昭さんは
板橋のポテンシャル「光学」を高めてもらい、外から新しい風にも入ってもらう。
チームオプト株式会社
[blogcard url="http://www.team-opt.co.jp/"]
板橋区の取り組みを受けて新たな企業も誕生しました。
槌田博文社長(58歳)が去年、中小企業の設計を請け負う、光学設計士集団を立ち上げました。
集めたのはオリンパスやペンタックスなど大手企業の出身者ばかりです。
会社の夢は「日本一の光学設計士集団」。
株式会社システムズエンジニアリング
[blogcard url="http://www.systems-eng.co.jp/"]
槌田博文社長がこの日、向かったのは板橋区にある株式会社システムズエンジニアリング。
この日、相談を受けたのは麻薬などの薬物を検査できる測定器。
赤外の光を使って物質を判断します。
例えば見た目では、何か分からない白い粉。
これを装置にかけると、ボタンを押すだけで成分がすぐに分かります。
4ミリだが2ミリにしてサンプルの量を少なくして測りたい。
うまく2ミリの所に光を通して反射させた所にも通して。
ロスなく拾いたい。
レンズの形を調整することで、赤外の光を対象物にうまく集中させて測定性能を高めて欲しいといいます。
この設計なら3日でできる。
ものづくり企業と設計士集団などをうまくマッチングさせていこうとする板橋区のプロジェクト。
木村正資さんは大きな手応えを感じています。
世界からネットを通して板橋区にこんなことできないかと連絡が来る。設計はここ、製造はここにまかせようという仕組みづくりができたらいい。