このところ円安が急速に進み、先週ついに一時1ドル148円代後半に下落しました。日本とアメリカの金利差の拡大を背景に円安が進行したことに加えて、日本は物価上昇率が低く物価が高い欧米との差が広がっています。なぜ日本は安い国になったのか、コロンビア大学の伊藤隆敏教授に聞きました。
日本 賃金なぜ上がらない?
10月5日にコロンビア大学のビジネススクールで開催された講演会。そこに書かれていて題名は「なぜ日本はこれほど安くなったのか」。
その要因には日本の硬直した賃金制度があると伊藤教授は強調しました。
コロンビア大学
伊藤隆敏教授

問題は「終身雇用」と「年功序列」。
日本の上の年代は生産性以上の給料をもらっている。
会場にいるその年代の日本人のみなさんは目をそらしましたね。
日本企業が長年続けてきた終身雇用制度が働く人の生産性を下げ、安い国「日本」を生み出してしまったと話します。
終身雇用「通用しない」
コロンビア大学
伊藤隆敏教授

これまでは同じ企業にとどまり、同じ企業の中で生産性を上げていって、年をとってから賃金を取り戻すことが行われてきたが、「30年後に通用するスキルを学んでいるから低賃金で我慢しろ」は今は通用しない。
割り切って必要な人材は高い給料でも雇う。企業の外からでも社内にシフトでもいいが、そうすることで生産性を上げ、賃金も上がる方向転換をしないと日本は非常にまずい。
賃金を上げ、物価も上昇する好循環によって安い国から脱却するため、今こそ国も企業も大胆な発想の転換が必要だとしています。
日本 退職金廃止で還元を
コロンビア大学
伊藤隆敏教授

わかりやすいのが退職金制度をやめて、積み立てている分を全部労働者に払う。
退職金の前払いを促すのは税制改正でできること。
激変緩和措置は必要だと思うが、とにかく若い人に賃金が支払われるようにする。
今やっている仕事で成果を出せば、すぐ賃金が上がる、それで働く意欲もできる。
必要な部署、業種、スキルに人材が動いて、経済全体の生産性が上がる。