アメリカの実業家イーロン・マスク氏が率いるスペースXのインターネット接続サービス「スターリンク」の運用が先週、日本でも始まりました。人工衛星を利用するため専用のアンテナがあればエリア内どこでも拘束なインターネット回線に接続できるとして注目を集めています。宇宙に広がる通信網は私たちの生活をどう変えるのか追跡取材しました。
スターリンク その実力は?
角谷暁子キャスターがこの日、訪れたのは都内にあるIT企業「ビーコア」です。こちらではAI(人工知能)を使った画像認識サービスを提供しています。
ビーコア 取締役
杉山典男さん
これが当社独自のカラービットというコード。3色の色を並べコードとしてカメラで認識する。
カメラが色の配列を自動で識別することで店舗や工場の在庫管理ができるほか、入館システムなどのサービスを提供しています。
しかし、このサービスに必ず必要になるものが…
ビーコア 取締役
杉山典男さん
クラウド上でやっているので通信環境が重要になる。
山間部や海とかで利用したいというお客様とか、ゼネコンのお客様が結構いるので。
そういったところで何かしらできる通信を探していた。
こうした中、先週新たに導入したものがあるということで見せてもらいました。
ビーコア 取締役
杉山典男さん
スターリンクになります。
こちらがイーロン・マスク氏が率いるスペースXが提供する通信サービス「スターリンク」です。
自社のロケットで数千の衛星を打ち上げていてどんな場所でもインターネットを利用することができるといいます。
このサービスについては…
イーロン・マスク氏
スターリンクは現在ウクライナで稼働中だ。
ロシアの侵攻を受けたウクライナに無償で提供し、注目されました。
こうした中、先週から日本でもサービスの提供が始まったのです。
使い方は電源につなげるだけ。待っているとアンテナが自動で衛星を探してくれます。3分ほど待っているだけで簡単にインターネットが利用できるようになりました。
しかし、気になるのが通信速度。
試しに動画を見てみると…
角谷暁子キャスター
今ポチッと押しただけで、すぐに長い動画がスムーズに流れ始めました。
速度を計測しても問題なくインターネットが利用できる速さが出ていました。
この通信速度がスターリンクの最大の特徴。
通常使用される静止衛星は地上から3万6,000キロの高さにあります。距離があるので通信に時間がかかります。
それに比べスターリンクの高度は550キロ。地上に近く高速通信が可能だということです。
アンテナなどの機材は7万3,000円ですが、月額の利用料は1万2,000円ほど。
こちらではスターリンクを活用し、山間部など通信環境が整っていない現場へのサービス拡大に期待しています。
ビーコア 取締役
杉山典男さん
本当に小規模事業体でもこれだけ通信衛星を自由に使ってソリューション(自社のサービスを)展開できるのは非常に魅力的だと思う。
スターリンクをスペースXとともに法人や自治体に向けて提供するのがKDDIです。
KDDI
松田浩路執行役員
自然災害で陸上の通信ネットワークが切れた場合は通信が途絶えていたが、そこも衛星でバックアップとして活用できる。
自治体からの声掛けを多くいただいている。
「空飛ぶ基地局」が実現へ!
衛星を使った通信サービス「スターリンク」が登場する中、国内でも新たな通信手段の開発が進められています。
NTTと衛星通信大手のスカパーJSATが立ち上げたスペースコンパス。
現在、開発を進めているのがHAPS(高高度プラットフォーム)と呼ばれる新たな通信手段です。
HAPSはスターリンクのような低軌道衛星よりずっと地球に近い高度20キロの成層圏から通信サービスを提供します。
携帯電話の基地局を搭載した無人機から地上に電波を飛ばすのでアンテナなどは要らずインターネットを利用できます。
アメリカで行われた試験飛行の様子。無人機は幅25メートル、重さはわずか70キロ。機体の全体にソーラーパネルが貼られていて太陽光で動きます。
スペースコンパス
松藤浩一郎共同CEO
約半年間、成層圏の一定の場所を滞空できる機体を開発している。
スペースコンパスは2025年度中の国内実用化を目指しています。
5G(高速通信規格)のネットワークを日本全域に展開する構想です。
角谷暁子キャスター
実用化に向けた課題は?
スペースコンパス
松藤浩一郎共同CEO
一つは制度面、HAPSは世界でまだ誰もやっていないサービスなので電波法・航空法の整備が必要になる。
国内外のさまざまなパートナーと構想を実現に結びつけていきたい。