中国のコーヒー市場
中国の上海では老若男女を問わずコーヒーを飲む姿がよく見られます。
空前のコーヒーブームを背景に大手コーヒーチェーンが出店を強化しています。
中国でのスターバックスの店舗数は日本の1,173店舗(世界4位)を上回る2,064店舗(世界2位)、
最近ではこだわりのコーヒーを提供する独立系カフェも増えています。
ある店舗の人気コーヒーは中国の雲南省産のコーヒーです。
中国はコーヒー消費大国から生産大国に変貌を図ろうとしています。
雲南省
中国最大のコーヒーの産地「雲南省」。
山道を走ること2時間。
そこにはコーヒー畑が広がっていました。
雲南省といえばプーアル茶が有名ですが、中国国内で生産されるコーヒーの98%が雲南省で生産されています。
愛伲コーヒー
コーヒー栽培に適した標高1,400m以上の高地。
東京ドーム200個分を超える広大な敷地はプーアル市最大のコーヒー生産会社「愛伲コーヒー」の農場です。
豆の洗浄、乾燥など一連の生産設備を完備しています。
敷地内には牧場も併設され堆肥を使用した完全有機栽培に取り組んでいます。
農場長は
小さい農場と違い自社ブランド商品も販売しているので品質が一番重要。
雲南コーヒーコンテスト
雲南省政府は2015年から愛伲コーヒーなど生産者が出品する「雲南コーヒーコンテスト」を開催しています。
豆の格付けなどを行うアメリカのSCAA(スペシャルティコーヒー協会)と提携して国際資格を持つコーヒー鑑定士が審査をしています。
その中にはコーヒー商社とカフェを経営する日本人鑑定士の田村英冶さんもいます。
田村英冶さんによると
今の世界中のブームに乗っている味だと思います。
審査員のお墨付きも得た雲南コーヒー。
その豆を確保しようとネスレやスターバックスなどコーヒーメジャーが動き出していました。
コーヒー豆買い取りセンター
プーアル市郊外にあるスターバックスのコーヒー豆買い取りセンター。
コーヒー豆を山積みにしたトラックが次々に訪れます。
朝9時に、この日の買取価格が発表されました。
1kg当たり約250円。
これを見た農家の表情は冴えません。
こんな値段じゃ売りたくない。もうけが全然ないよ。
こんなに安いなら来年は栽培を減らすよ。
ここではコーヒー農家とスターバックスが直接、豆の取引を行っています。
農家側に交渉権はなく決められた価格で売るしかありません。
コーヒー豆加工工場の経営者は
豆の取引価格は大手が全てコントロールしている。
雲南コーヒーは品質が向上したものの、世界的な信頼やブランド力が不足しています。
農家側が期待する価格では買ってもらえないのが現状です。
こうした状況を打破するために政府はある対策に乗り出しました。
雲南コーヒー交易センター
雲南省政府と民間企業が共同で設立したコーヒー豆取引所。
雲南省農業庁熱帯作物所の馬馳所長は
雲南コーヒーはニューヨーク先物市場の一般価格より10%以上安い。独自の価格設定システムが必要だ。
目的は買い手側が主導権を持つ直接取引から取引所を介した間接取引への移行です。
農家が生産した豆の品質に合わせ交易センターが最低価格を設定します。
これを世界中のバイヤーが競売形式で入札する仕組みです。
こうすることで雲南コーヒーのブランド力と価格は品質に見合ったモノにアップするといいます。
交易センターによって雲南コーヒーのブランド力と価格は上昇すると確信している。
ブランド化に逆行
雲南省昆明市にある会社で雲南コーヒーのブランド化に逆行する取引を行っています。
コーヒー豆商社の林社長(仮名)。
オフィスには焙煎機やサンプル豆が置かれています。
奥の倉庫には大量のコーヒー豆の袋が積み重なっています。
あっちは去年の豆で、こっちは2年前。1kg、400円で高かったよ。
どれも古く品質の落ちた雲南コーヒーばかり、林社長が行っているのはコーヒー豆投機です。
2年程前に値上がりを期待してコーヒー豆を大量購入しましたが、世界的な景気低迷で価格は下落。
放置していた豆をアラブ諸国に格安で売却する予定です。
投機に失敗しても懲りた様子はありません。
1kg、260円以下の豆ならまたいくらでも買う。1kg、400円になったら全部売るんだ。
そのワケはこの一言から見えてきました。
政府系の農業集団が4億円の資金を提供してくれた。
投機資金は政府系企業から得たといいます。
政府関係者との会合に行く林社長に同行しました。
古びた倉庫の中では大勢が鍋を囲んでいました。
彼は政府系の農業集団のリーダーだ。
席に座った林社長の両隣が政府関係者だといいます。
政府関係者は
われわれは彼を政策面でも資金面でも支援して互いに利益を得ている。
彼らはコーヒー豆の投機だけでなく、先物取引なども行い巨額の利益を得ているといいます。
彼らにとってコーヒー豆取引は金のなる木です。
雲南コーヒー交易センターは成功するか?という質問に対して
無理だね。2年以内にわれわれが買収する。
ブランド化を目指す一方で巨額の利益だけを得ようとする人々。
巨大化する中国のコーヒー市場の行方は期待と暗雲が立ち込めています。