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[WBS] 【ニッポンの素材力】人に優しい新金属

2016年5月17日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

クレサンベール銀座店

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東京の銀座にある電子機器大手京セラ株式会社が直営するジュエリーショップ「クレサンベール銀座店」

竹内桂一郎店長が取り出したのは

コバリオンという金属。

世界で唯一日本が製造技術を持つコバリオン。

プラチナのように見えますが、中身はコバルトとクロムなどからなる合金です。

プラチナ商品に比べて3~7割安く売れ行きは好調です。

さらに支持される理由がもうひとつ。

ニッケルアレルギーの人は着けてかゆくなることがあるが、そういった反応はまったくないと伺っている。

通常、金属は加工しやすくするためにニッケルを入れます。

コバリオンは金属アレルギーの主な原因のニッケルをほとんど含まず、アレルギー反応を心配するお客様から人気となっています。

千葉晶彦教授

仙台市青葉区の東北大学金属材料研究所の千葉晶彦教授。

コバリオンの開発者です。

千葉晶彦教授が見せてくれたニッケルアレルギーを発症した患者様の写真。

人工股関節のニッケルに反応したという患者様の全身に激しいアレルギー症状が出ていました。

人工股関節には欧米から輸入したコバルトとニッケルなどを合わせたコバルト合金が多く使用されてきました。

そこに千葉晶彦教授は疑問を持ちました。

日本は素材力が高いと自負していたが、なぜ人間に大事な合金を日本でどこも作っていないのか。1つは驚きだったということと、ちょっとがっかりした。

2001年、研究を始めた千葉晶彦教授でしたがニッケルのない金属は加工が難しくなかなかうまくいきませんでした。

そんな時にある学生が一言。

ニッケルの代わりに窒素を入れてみてはどうでしょうか?

ニッケルの入った金属の結晶は安定して加工のしやすい状態ですが、ニッケルがなくなると不安定になり割れやすくなります。
窒素を加えると再び安定して加工しやすくなりました。

モヤモヤが晴れた感じ。今まではデータが違う不一致だ。なんだろうと思いながら窒素でそういうことが明確にできた。

こうした中、千葉晶彦教授に手を差し伸べてくれたのが岩手県釜石市の株式会社エイワでした。

株式会社エイワ

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採算が取れるか見通すことが難しいなか、2007年赤字覚悟で生産を引き受けた株式会社エイワ。

佐々木雄大常務は生産を引き受けた決め手は千葉晶彦教授の熱意だったといいます。

千葉先生という、すごい親身になってくれる先生がいたのが一番心強かった。

唯一、ここでしか製造できないというコバリオン。

まず原料のコバルトやクロムなどを溶解炉に入れて溶かします。

そこに加えるのが窒素化合物。

適切な窒素含有率を見極めるところに独自のノウハウがあるといいます。

出来上がった合金をさらに高温の炉に入れ、加熱した金属をハンマーで叩いて組織を緻密にし加工しやすくします。

こうして作られた新しい合金がコバリオンです。

生産を決めて9年、人工関節以外の製品化も進み来年度には黒字化も見えてきました。

今も千葉先生といろいろな合金を開発している。コバリオンのラインナップも10種類あるが、もっと増やしていく。

日本が誇る新素材。
コバリオンに期待が集まっています。

山崎健医師

岩手医科大学付属病院の山崎健医師もコバリオンに期待をしています。

山崎健医師の専門は側湾症です。

側湾症は背骨がS字に曲がる病気で多くは原因不明です。

背骨矯正に使うつっかえ棒の素材にコバリオンの利用を検討しています。

生体内に埋入するものなので副作用が少なく合併症が少なくて強度を持っていることが大前提。この金属は適合しているのではないか。

側湾症のコバリオン医療器具は国の認可所得後、年内にも医療現場で使用される見通しです。

千葉晶彦教授

千葉晶彦教授は自ら開発した素材に確かな手応えを感じています。

ニッケルアレルギーの問題は今では一般的になってきたので、自分の研究の方向性は正しかったと思う。

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