1兆91億円、こちらはインターネット上に違法に漫画をアップしている、いわゆる海賊版サイトによる去年1年間の出版業界の推定被害額です。

社会問題化した海賊版サイト「漫画村」の閉鎖で一時は減った被害ですが、その後も新たなサイトが登場し、今では上位10サイトの合計で月に4億アクセスにのぼります。

海賊版サイトへの対策が急がれる中、大手出版4社が先週、アメリカの大手IT企業を提訴しました。一体どんな狙いがあるのでしょうか。

海賊版被害で出版社が提訴!訴えられたCDM業者とは
東京・神保町の小学館本社。今週、あるオンライン会議が開かれていました。

第90回の海賊版対策会議を開始させていただきます。

小学館、集英社、講談社にKADOKAWAの大手出版4社と顧問弁護士が集まり、海賊版サイトに関する情報や被害対策などについて話し合っています。

この4社が今月、新たな裁判を起こしました。その相手は…
小学館の松野直裕さん。
クラウドフレアに関する訴訟が本丸。

クラウドフレアとは一体…
川﨑太郎記者。
こちらが問題となっている海賊版サイトのひとつです。中を見るとワンピースなど人気の漫画がずらりと並んでいます。

たとえばこちらの表紙の画像、どこのサーバーを経由したのか調べてみると「クラウドフレア」とあります。


アクセス数の多い海賊版サイト上位10のうち9つが利用しているといわれているのがクラウドフレアのサービスです。

クラウドフレアはアメリカのIT企業。3年前にはニューヨーク証券取引所に上場を果たし、日本を含む世界の大手の企業を顧客に抱えています。

主なサービスの一つがCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)と呼ばれるサービスです。

通常、インターネットで画像などを見る場合、閲覧者から直接サイトの運営側のサイトのサーバーにアクセスがあります。そのため運営側はアクセス数の増加に応じてサーバーを強化する必要があります。

一方、CDNでは運営側のサーバーが配信したデータは閲覧者に最も近いCDN上のサーバーに複製されます。一度データが複製されるとその後はほかの閲覧者もそのサーバーのアクセスする形になります。

自前のサーバーを増やす必要がいないためコストの削減につながります。
弁護団の一人がアクセス数トップの海賊版サイトのケースで計算したところ、CDNを使わない場合、月に1億5,700万円のサーバー費用がかかりますが、CDNを使えば166万円で済むため、結果的に海賊版ビジネスを助けているといいます。

ただ、CDNのサービス自体はアマゾンやグーグルなどの大手IT企業のほか、NTTコミュニケーションズなども提供。

ネット社会を支える重要なインフラになっています。
そのインフラであるクラウドフレアをなぜ出版社側は訴えたのでしょうか。

背景にはクラウドフレア特有の問題があるといいます。
クラウドフレアを訴えた大手出版4社の代理人、丸田憲和弁護士。
メールアドレスだけで登録が可能。

他の事業者ではそうはいかない。

出版社側はクラウドフレアが海賊版の運営者に規制をかけずに野放しにしてきたことを問題視しているのです。

大手出版4社はこれまでクラウドフレアと協議を続けてきましたが、出版社側の要請に対して「適切な対応をとった」と説明するばかりで「詳細についてはお答えできない」としているといいます。

きとんとした企業だからこそ権利侵害が明らかな犯罪サイトへのサービスをやめてほしいと2年後しでお願いしている。なかなか協力してくれない。

そのため出版4社は海賊版コンテンツの送信の差し止めと合わせて4億6,000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。

クラウドフレア側に取材を申し込むと…
これらの問題を非常に深刻に受け止めており、日本の権利者を支援するため義務以上のことを取り組んでいます。

などとコメントしましたが、具体的な回答については回答できないとしました。
