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[WBS]岸田総理 原油備蓄放出を表明!原油価格さらに値上がり…何が!?

2021年11月24日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

アメリカのバイデン大統領の呼び掛けに応じるかたちで岸田総理大臣は11月24日に政府が緊急時のために備蓄している石油の一部を市場に放出すると表明しました。

原油の価格高騰に歯止めをかける狙いですが、発表後も価格は上がり続けています。一体なにが起きているのでしょうか。

石油高騰 国家備蓄を放出へ!ガソリン価格いつ下がる?

都内のガソリンスタンド。

レギュラーの1リットルあたりの価格は174円、去年の同じ時期と比べて20円以上値上がりしています。

お客様は…

ただでさえ給料安いところに庶民の懐としてはきつい。

7年ぶりの高値水準が続くガソリン価格。

仕入れの値上がり分を価格に転嫁できず、アルバイトを減らすなどコストを削減してしのぐ日々が続いています。

中央石油の渡邊一央所長。

コロナも落ち着いてきて人が動こうというときにこのガソリンの値段だと車で出かける人が少なくなってしまう。頭が痛い。

国民の生活や経済を直撃している価格高騰。11月24日に岸田総理自ら表明したのは…

現行の石油備蓄法に反しない形で国家備蓄石油の一部を売却することを決定した。

史上初めて石油の国家備蓄を放出する決断をしました。

今回、放出が決まった石油備蓄とはどういったものなのでしょうか。

備蓄の現場に角谷暁子キャスターが向かいました。

見えてきました石油タンクです。東京からヘリコプターで5分ほど離れた千葉県袖ヶ浦市ですが、大小さまざまな石油タンクが広い規模で並んでいます。

日本各地にある石油備蓄基地。政府による国家備蓄と民間の石油会社に義務づけている民間備蓄などがあります。

中でも国が所有する10ヵ所の備蓄基地では緊急時に備えて国内消費量の90日以上を貯蔵すると決められています。9月末の時点で145日分と大きく上回っていて、その余りの一部を今回放出するのです。

放出するタイミングや量について政府は…

萩生田経産大臣。

売却時期・量については現在精査中。

いずれも法令に従い公告・入札などの手続きを可能な限り速やかに進めていきたい。

放出量は2日分程度に相当する見込みで、年内にも売却する石油の油種や量を確定させ、早期の売却を目指す方針です。

今回、政府が放出を決断した背景には何があるのでしょうか。

米国とはこれまでも国際石油市場の安定のため連携を取ってきた。

原油価格の安定はコロナからの経済回復、これを実現する上で重要な課題である。

日本の決断を主導したのは他ならぬアメリカでした。

バイデン大統領は国際的な原油価格の高騰を問題視し、主要消費国に備蓄する石油を放出するよう呼び掛け、日本としても共同歩調を取ることにしたのです。

上がり続ける原油価格に歯止めをかけるための今回の大きな決断。

しかし…

金子律人記者。

岸田総理が国家備蓄の放出を発表しましたが原油先物価格は依然として高値を維持しています。

東京市場では中東産原油の先物価格が3,000円以上の急騰。今年最大の上げ幅になりました。

なぜ価格は上がったのでしょうか、専門家は…

伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリーの伊藤敏憲代表。

備蓄原油の放出は短期的な対策。恒常的に継続できるわけではない。

どの程度の効果があるかは容易に計算できる。

需給を引き締める効果が小さいとみられ相場が上昇した。

その上でこのような高値が続くと年末に追い打ちをかける可能性があるといいます。

冬場は灯油も生活の影響も大きいし、農業漁業、運送コストが上がるので影響を受ける消費財の価格の上昇はこれから数ヵ月にわたり続く可能性が高い。

ハウス栽培の農産物や漁業の水産物の価格を押し上げる可能性は十分にある。

採算が合わないから出量を抑えるという動きがおきてもおかしくない。

日米中 石油対策で共同歩調!バイデン大統領 焦りのワケ

今回、石油備蓄の放出を決めた岸田総理。

その数時間前には…

バイデン大統領。

これまでで最大の石油備蓄の放出を行う。他の国々と強調し、この問題を解決する。

バイデン大統領は日本、イギリス、韓国、インドと強調して石油備蓄を放出すると発表しました。

そして中国も石油備蓄を放出することを改めて表明。

なぜ主要消費国などで協調したのでしょうか?

石油価格が高騰しているのは産油国や大企業が需要に見合った生産をしていないからだ。

狙いは産油国へのプレッシャーです。

日本はアメリカからの呼びかけに応じる可能性があったとして、中国も備蓄への放出について前向きに検討している。

そういう意味では政策的には少なからず効果があったと考えてよい。

では、産油国はどう対応するのでしょうか?

少なくとも産油国は今回の日米中の備蓄放出に対して対応を取る動きはないと考えて良い。

消費国がお金を出しても原油が調達できない状況になればOPECプラスは増産ペースをを早める可能性がある。

バイデン大統領が国際協調に踏み切った背景には原油の高騰に対するアメリカ国内の切実な実情が…

ワシントン市内にある精肉店「ハービーズマーケット」。

25日の感謝祭を前に多くに人で賑わっていますが…

ワシントン支局の中村寛人記者。

さまざまな種類の肉を販売しているこちらのお店ですが、特に牛のステーキの価格が高騰しているそうです。

この店の店長は…

ハービーズマーケットのグレッグ・ヘリング店長。

このステーキ用の肉は卸売価格が3倍になった。

100グラム280円ほどだった肉が、この夏から890円だ。

ステーキ肉の価格が3倍に。

この店では飲食店向けの需要が回復したことに加え、原油価格が高騰したことで輸送のコストが上がり、牛肉価格の高止まりが続いているといいます。

お客様は…

あらゆるものが値上がりしているが小さいリブ肉が1万円以上というのは高い。

店長のヘリングさんは原油の高騰は輸送コストだけにとどまる問題ではないといいます。

「飼料」は大きな要素。輸送・収穫・植え付け、肥料の生産にも燃料を使う。

原油価格が上昇すれば仕入れ価格も上昇し、店にも影響があるだろう。

放出決定後も原油価格上昇!バイデン大統領 受け止めは?

石油の放出を決めた後も原油価格は上がっていますがバイデン大統領はどのように受け止めているのでしょうか?

アメリカ政府の高官からは原油価格を下げるために必要ならばさらなる行動も取るという声も聞かれています。

ただバイデン大統領の半ば強引な市場介入ともいえるやり方に産油国が対抗処置をとるとの見方も出ていて、価格が抑制されるかは不透明な状態です。

どうしてバイデン大統領はここまで力を入れるのでしょうか?

支持率低下が続く中、バイデン大統領の頭の中心にあるのは残り1年を切った中間選挙です。アメリカでは11月25日の木曜日は感謝祭で休日ですが家族と食事をするため週末にかけて多くの人が車などで長距離を移動します。

その際にガソリン価格が高い、食料品の値段が高いというのは生活実感としてバイデン政権の不満につながりやすい。

11月23日にワシントン市内を走るタクシー運転手にも話を聞きましたが「多くのお客様を乗せるようになったがガソリン価格が上昇した分、手取りが減って厳しい状況」との声も聞かれました。

バイデン大統領にとっては有権者に身近な物価高抑制は喫緊の課題となっていて、原油高に対抗することで下がる支持率を食い止めたい狙いがあるといえます。

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