中国の老人ホーム
上海市内の住宅街。
その中にある市政府が運営する標準的な老人ホーム。
中に入ると冷房は扇風機が回るだけの蒸し暑さのなか、入所者が横になっていました。
よく見るとベッドはタンスの上に薄いマットが敷かれているだけ。
建物の老朽化が進んでいるのかトイレの柱の一部が腐って剥がれ落ちています。
入所者は
ここは狭すぎるし暑い、生活環境は良くないよ。
この施設の介護費用は年間約30万円。
人手が足りないのか、ベッドでズボンを下げたまま放置されている入所者もいます。
今、中国では介護の環境やその質が大きな問題となっています。
上海礼愛頤養院
上海市郊外、ここに人気を集める介護施設「上海礼愛頤養院」があります。
2013年に介護サービス企業「株式会社リエイ」が日系企業として初めて上海にオープンした老人ホームです。
入所者は
いいわ、この施設はとてもいい。
開放的な部屋に電動介護ベッドなど最新の設備を備える上海礼愛頤養院。
費用は年間介護費用は平均90万円と公立の3倍かかりますが稼働率は90%を超えているといいます。
上海礼愛の玉置哲馬社長は
ターゲットとしては中間層を狙っている。日本のサービスを期待している方たちがいる。
上海礼愛頤養院が取り組むのは中国ではほとんど行われていない自立支援を目的とする介護です。
食事や排泄など、できることを自分ですることで症状が重くなるのを防ぐなどといわれています。
入居者の家族は
入所して3ヶ月よ。満足しているわ、お年寄りをこの施設に預けるのは安心ね。
中国の介護事情
こうした介護サービス事業には日本最大手の株式会社ニチイ学館が今年度中に進出するなど続々と日系企業の市場開拓が広がっています。
実は中国では伝統的に「親の面倒は子が見る」という考えが根強く、こうした施設のニーズは高くないとされてきました。
しかし意識が変わりつつあるといいます。
50代、60代は経済成長の中で生活してきたので、今の中国の介護サービスを求めないと思う。ある程度、裕福になってきているので非常に大きな市場になるのではないか。
フランスベッド株式会社
[blogcard url="http://www.francebed.co.jp/"]
中国に進出しているのは介護サービス企業だけではありません。
寝具大手のフランスベッド株式会社は2012年に江蘇省南通市に電動介護ベッドの製造・販売拠点を設けました。
しかし1台15万以上と高価なため売行きは伸び悩んでいます。
中国市場を統括している江蘇フランスベッドの田原啓佐社長は事業拡大に向け、ある制度に期待を寄せています。
中国政府も政策、補助金で養老産業の育成を図ってきているので変わってきた感じがする。
現地の製造工場。
現在は月平均200台を生産して、90%以上が日本に輸出されていますが、今後は中国国内への需要拡大を期待しています。
青島や大連など一部地域では導入が始まっている中国の補助金制度。
介護ベッドが対象になれば需要は大きく伸びると考えています。
何かしら補助金が出るとなると事業拡大の一つの起爆剤になる。
第11回 中国国際福祉機器展示会
2016年6月に上海で開かれた介護関連の展示会。
パナソニック株式会社やトヨタ自動車株式会社など日本の大手企業も最新機器を展示するなど中国への本格的な参入チャンスを狙っています。
また5月には日本の介護用品を専門に扱う通販サイト「銀色98」も開設され、開始三ヶ月で出店企業は6企業から3倍の18企業に増加したといいま。
2015年の中国介護市場の規模は8兆円、10年後の2025年には22兆円を超えるといわれる中国の介護市場。
日本企業にとって宝の山となるのでしょうか?