5年に1度開かれる中国で最も重要な会議「中国共産党大会」が10月18日に開幕しました。
世界第2位の経済大国の今後5年間の経済方針や最高幹部の人事がここで決まります。
北京には五島尚武記者がいます。
「開幕を振り返って気になったところはどのようなところですか?」
大会初日の今日は習近平主席の演説がありました。その全文がこちらです。中国語で68ページにも及びます。まるで1冊の本のようです。
演説の時間は3時間以上に及びました。その長さに相応しく、その中身は経済、内政、軍事、外交、あらちゅる分野を網羅し、その中で自らの5年間の政策運営について実績を誇示しました。
中国共産党大会
10月18日の北京市内。厳戒態勢の中、5年に1度の共産党大会が始まりました。
約2,300人の代表による大きな拍手の中、入場する習近平国家主席。
大会の冒頭、習主席は江沢民氏と胡錦濤氏という先輩である元国家主席の目の前で自らの実績を讃えました。
この5年、我が党は強い勇気と責任感を持って一連の新理念、新思想、新戦略を打ち出し、一連の重要な活動を進め長年の多くの課題を解決した。
さらに、
トラ、ハエ、キツネを摘発し反腐敗闘争は所期の目標を実現した。
国民の支持の源である汚職対策には今後も力を入れる構えです。
実は汚職対策で摘発された中には江沢民派の幹部も含まれ、対立する派閥を弱める目的も。
そして経済、外交面においても、
中国は対外開放の基本政策を堅持し門戸を開き「一帯一路」での国際協力を積極的に促進する。
自らが提唱するシルクロード経済圏構想「一帯一路」を推し進めるなど貿易関係において中国が主導権を握っていくという強い姿勢を示しました。
共産党大会のポイント
今回の党大会、ポイントは習近平国家主席の一強体制の確立に向けた2つの動きです。
まず一つ目は党内での権力強化。そしてもう一つは最高指導部人事です。
権力強化
権力強化で注目されているのは、まず習氏が「党主席」というポストを復活させるかどうかです。いま習氏は政府では国家主席ですが、党では「党総書紀」という役職に就いています。
「党主席」というのは建国の父である毛沢東氏が就いていたポストですが、権力の集中を招いたとして今は廃止されています。
習氏は党総書紀として今は集団指導体制に基づいて行動しているわけですが、党主席になりますと絶対的な決定権を持つことになります。
これを復活させるかどうかというところに注目が集まっています。
そして2つ目が10月18日の党大会で習氏が提唱した指導理念、これが「習近平思想」と習氏の名前入りで党の規約に盛り込まれるがどうかです。
過去に名前が入ったのは「毛沢東思想」、それから「鄧小平理論」の2つだけで、もし習氏の名前が規約に明記されることになると2人に並ぶ権威を持つことになります。
実際に地方の村を取材してみると毛沢東氏に近付きつつある習氏の姿が見えてきました。
「現在の毛沢東」狙う?地方に広がる「習思想」!
中国南部の山間にある湖南省・韶山村。
広場に大勢の人が集まっていました。よく見ると胸元には建国の父、毛沢東氏のバッジ。
視線の先にあったのは巨大な毛沢東像です。
韶山村は毛沢東氏の生まれ故郷。9月9日の命日のこの日は多くの人が追悼に集まっていました。
膝をついて祈りを捧げる人や、像を見て感極まる人。
「像を見て感激したのか?」
ああ、このために1人で来た。
毛沢東氏は神様。大きな存在よ。
ある民家を尋ねると観音様、商売の神様に並んで毛沢東氏の像が飾られていました。
住民は、
ご飯を炊いたら、まず毛沢東氏、商売の神様、観音様に供える。
10人に1人が毛沢東氏を信仰しているといいます。
村の土産物店には毛沢東像がずらり。なかには80万円を超えるものもあります。
店員は、
ほほ笑みかけてくる像を買わせていただく、祝福されてすべてが順調に進む。
毛沢東氏に寄り添って生きるこの村にある異変が起こっています。
像のすぐそばにあったのは習近平国家主席の肖像画。
さらに別の土産物店でも毛沢東氏の横に習主席。
「なぜ毛沢東氏の隣に習主席を飾っているのか?」
店主は、
習主席も毛沢東氏と同じように共産党の色が強い指導者だから。
別の店では棚の真ん中に習主席の皿が飾られていました。
店主は、
「現在の毛沢東氏」を求めている。その重責を担えるのは習主席だけだ。習主席の政策は毛沢東氏と同じように民の生活を根本にしているからだ。
若い頃に毛沢東氏と話したことがあるというホテルの支配人も習主席に毛沢東氏を重ね合わせています。
習主席が言うことは毛沢東思想。習主席がすることも毛沢東思想。習主席についていきなさい。
最高指導部人事
習主席は毛沢東氏のような存在になろうとしているのか?
そのためには体制固めを図る必要が今後でてきます。
そこで重要となるのが今回の党大会、もうひとつのポイントである最高指導部人事です。
この最高指導部は「チャイナ・セブン」とも呼ばれていて7人で構成されています。
改めて見てみると習近平派というのはご自身を含めて2人しかいません。少数派なんです。
最高指導部は慣例で68歳が定年で年齢で見ると習近平氏と胡派の李克強首相以外の5人が交代の対象となっています。ですから5人の後に入ってくる人がどれだけ習近平派なのかが注目されています。
まずは習主席の後継者と見られている陳敏爾氏(57歳)が抜擢されるのではないかと言われています。
また習主席の盟友でもある王岐山氏(69歳)は定年の慣例を破って留任されるのではないかという話もあります。
このチャイナ・セブンの人事はプロセスが外部から一切見えない密室で決まることになっています。ですから習氏に近い人物がどれだけ起用されるかというのは権力の強さを図る目安になっています。
そこで北京支局の五島さんにもう一度聞きます。
「党大会の今後はどのように進む?」
共産党大会は18日から24日まで1週間に渡り開かれます。通例ですと24日、最終日に党大会であがった議題に採決します。共産党の規約に習近平氏の名前が明記されるか、また党主席が復活するか、ここで決まるものと見られています。最高指導部の人事については党大会が閉幕した後、25日にお披露目となる見通しです。
「党主席の復活の可能性は?」
最後まで調整が続くものと見られています。ただ党の規約に習近平国家主席の名前が載るかについては、18日の演説で習主席は自らの思想を「新時代の中国の特色ある社会主義思想」と表現した上で堅持しなければならないと強調しました。
毛沢東思想や鄧小平理論と共に習氏の思想が明記されることを示唆したものと見られます。
習主席は自らの基盤をさらに確かなものにできるか注目が集まります。