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[WBS]制限緩和も…ちぐはぐな感染対策に困惑の声

ワールドビジネスサテライト(WBS)

厳しい行動制限を伴うゼロコロナ政策の制限緩和に動き出した中国ですが、一部で混乱が起きている模様です。

北京支局
杉原啓佑記者

北京でも徐々に厳しい制限が解除されつつあります。
ただ市民生活を縛る強い制限が一部残されたままになっていてちぐはぐな感染対策に対し、市民の間には困惑する声も聞かれました。

中国 ゼロコロナ政策見直し
制限緩和も氷点下で混乱

デモ参加者

独裁者を罷免せよ!

先週、ゼロコロナ政策への大規模な抗議デモが起きた中国・北京。

週が開けた12月5日、状況に大きな変化が…

北京支局
杉原啓佑記者

北京市の地下鉄では今日から陰性証明の提示が不要になりました。

地下鉄やバスなどの公共交通機関でこれまで必要だったPCR検査の陰性証明が不要になったのです。

北京支局
杉原啓佑記者

1週間前は1車両に数人しか乗っていませんでしたが、乗客の数が増えたように感じます。

通勤時間帯には満員に。制限の緩和で人々の活動が少しずつ戻ってきました。

ただ、一方で混乱も。

緩和されたはずのPCR検査場に市民たちの長い行列ができていました。

12月5日の北京は氷点下。

北京市民

北京市は今も48時間以内の陰性証明を求めている。
建物に入るのにも必要だ。

公共交通機関では不要となった陰性証明ですが、北京市内のオフィスビルやショッピングモールに入る際には引き続き48時間以内の陰性証明の提示が義務付けられたままなのです。

それにも関わらず北京市はここ数日、検査の効率化のためだとして市内のPCR検査場を次々と撤去。

ちぐはぐな状況に市民からは困惑の声が上がっています。

北京市民

きのうはPCR検査を受けるのに3時間も並んだ。
仕事ができなければ金を稼げない。
車や家のローンも払えなくなるし、子どももいる。
誰の責任とまでは言えないが、わが国は今こんな状況だ。

一貫性に欠ける感染対策の変更。

なかには窓ガラスが割られてしまったPCR検査場も…不満はくすぶっているようです。

中国 暴動の工場も再開へ
一方で影響続く日系企業

一部で混乱はありながらも制限緩和の流れは広がっています。

市民

警察が人を殴っているぞ。
人を殴るのは犯罪だ。

先月末、河南省鄭州市で起きた暴動。iPhoneの世界最大の生産工場で行われたものです。

現場でのコロナ対策をめぐり抗議活動が激化。生産台数は大幅に落ち込むことになりました。

今回、工場のある鄭州市でも制限が緩和され、ロイター通信によると今月下旬から1月上旬にはフル生産が再開する見通しだといいます。

こうした動きは街の映画館でも…

お客さん

ようやく家を出て映画を見に行けるようになった。
長い間映画を見ていなかった。

映画館のマネージャー

政府から営業再開の通知を受けて、ただちに清掃と消毒作業を実施した。

そして、中国に工場を構える日本企業も徐々に再開の動きが…

ホンダは重慶市にある芝刈り機などを作る工場で12月5日から出社を再開。6日から部分的に生産を始めるとしています。

また、いすゞ自動車は12月5日から一部生産を再開しています。

その一方で日系の自動車メーカー大手3社が発表した中国での11月の新車販売台数は全社が1年前に比べて大幅なマイナスに。

新型コロナ感染拡大に伴う制限で販売店の休業や生産の落ち込みが響いていました。

中国 続く市民の抗議活動
米中対立 コロナ対策でも…

大江麻理子キャスター

今後、中国はどうなっていきそうでしょう?

北京支局
杉原啓佑記者

iPhoneの製造を中国にある工場に頼ってきたアップルは中国国外に生産拠点を移す動きを加速するとアメリカメディアが報じるなど経済への悪影響がすぐに収束するとは思えません。
また経済だけでなく、人々の不満もくすぶったままです。

12月4日も湖北市の武漢大学では学生たちによる大規模な抗議活動が起きました。

武漢大学のデモ

過程の公開を!情報の透明化を!

学生たちはゼロコロナ政策のもと制限されてきた対面授業の再開や大学の敷地内から自由に出て実家に規制する権利などを求めました。

また、一連の抗議デモで多くの人が警察などに排除されたり、拘束されたりする状況にアメリカから批判の声が上がっています。

来年初めに就任以来初めて中国を訪問するアメリカのブリンケン国務長官は12月4日にCNNのインタビューで「われわれは中国を含むどこの国においてもデモ参加者を弾圧することに反対を表明している」と牽制した上で人権と市民の基本的自由について中国側に提起する考えを示しました。

さらにアメリカの情報機関のトップは混乱のもととなっている習近平国家主席肝いりのゼロコロナ政策が中国経済に悪影響があると指摘した上で次のように語っています。

アメリカ
ヘインズ国家情報長官

ゼロコロナ政策が人々に与えている影響にも関わらず、習主席は西側の優れたワクチンを受け入れようともしない。
代わりにオミクロン株にまるで効果のない中国産ワクチンに頼っている。

ロイター通信によると、こうした状況に対して中国政府は12月7日にも新たなコロナ対策を発表する可能性があるということで、さらなる制限緩和が進むかもしれません。

そうした動きを裏付けるように中国メディアの第一財経は12月4日にコロナ感染者の95%以上は無症状か軽症というデータをもとに新型コロナウイルスの危険度について現在の分類から一段階格下げする可能性があると報じています。

習主席肝いりのゼロコロナ政策を表向きは維持しながらも、制限の緩和を徐々に進めていくものと見られますが、いま各地で起きている一貫性のない対策が続くようでは市民生活や落ち込んだ経済が今後、回復軌道に戻るかどうかは依然として不透明なままです。

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