ゼロコロナ対策の規制を受け、激しいデモが広がっていた中国が一転して規制緩和へと動き出しました。中国で一体何が起きているのでしょうか。北京支局の杉原記者に伝えてもらいます。
中国 ゼロコロナ見直しか?
デモから一転 制限緩和へ
杉原啓佑記者

新華社通信が発表したところによると新型コロナ対応の責任者である孫春蘭副首相が「防疫対策をさらに適正化する条件が整った」などと述べたということで、ゼロコロナ政策の転換を示唆したと見られています。
孫春蘭副首相は11月30日もコロナ対策の会合で「オミクロン株の毒性が弱まり、ワクチン接種が進むにつれ、わが国のコロナ対応は新たな局面に来ている」と述べたのに加え、「ゼロコロナ」というキーワードを使いませんでした。
そのため、今後の政策の変化を示唆したのではないかと考えられました。
この流れを受けてか、中国各地で制限の緩和が見られました。
中国 「やっと出られた!」
各地で制限緩和 喜びの声
激しいデモが行われていた広州市。しかし、規制が緩和された11月30日…
市民

封鎖解除だ!封鎖解除だ!
市民

20日間以上全く出られなかった。
やっとゲートから出られたわ!
封鎖が解除された道路には人が溢れ、一転してお祝いムードに。
緩和の動きは北京でも…
杉原啓佑記者

長く休業していたショッピングモールがきょうから営業を再開しました。
お客さんが店内へと入っていきます。
北京では感染者の急増で長く閉鎖していた商業施設の一部が12月1日から営業を再開しました。
杉原啓佑記者

ショッピングモールの地下にある食品スーパーです。
お客さんの姿が見えます。たくさん買い物をしています。
突然の営業再開にクリスマスの飾り付けを急ぐ販売員たちの姿も。
久しぶりに買い物に訪れた北京市民は…
北京市民

鶏肉と豆腐を夕食用に買った。
近所に住んでいるので、ここが開かないと買い物ができなかった。
相次いだデモとの関係は?
佐々木明子キャスター
喜びの声が上がっていましたが、北京では昨日も感染者が過去最多を更新したと聞いています。
一転して緩和に舵を切ったというのは連日のデモや抗議の結果なのでしょうか?

杉原啓佑記者

政府からはデモと制限緩和の関係については何も語られていませんが、市民の声が緩和につながったのではないかと見られています。
上海市民

習近平、退陣せよ!
共産党は降りろ!
北京市民

独裁者を罷免せよ!
続投反対!
中国ではタブーとされる習近平国家主席を名指しで批判するデモや抗議に中国政府が対応を迫られたのは明らかです。
ただ、看板政策であるゼロコロナ政策を否定したり、さらにはデモに屈したように見えれば、3期目に入ったばかりの習氏の権威を傷つけてしまうことになります。
そのためか共産党系のメディアも12月1日になって「オミクロン株の毒性は低下している」などと報じ、あくまでウイルスの弱毒化というものを強調することで今回の緩和措置がデモによるものではないと主張しているようにも見えます。
佐々木明子キャスター
そんな中でも制限緩和に動き出せば、影響の大きかった日本企業の活動にも好材料となりそうですか?

杉原啓佑記者

当然、日系企業も歓迎しています。
ただ、当面の間はゼロコロナ政策という大きな看板は変えずに中身を徐々に変えていくことになりそうで、専門家からも懐疑的な声が聞かれました。
中国 経済再開に期待も…
来年末まで「ゼロコロナ」?
自動車メーカーなど製造業を中心に日系企業の工場も多い広州。
ジェトロ(日本貿易振興機構)によれば制限緩和を受けて、12月1日から在宅勤務になっていた社員を出勤させている企業も多いといいます。
しかし、経済再開への期待がかかる一方、専門家はゼロコロナ政策の抜本的な見直しはまだまだ先だと見ています。
日本総合研究所
関辰一主任研究員

習近平国家主席がゼロコロナ政策はバランスのとれた政策だという考えを示したので、大きく路線変更をするのはなかなか難しい。
来年いっぱいまで感染者が見つかった地域で行動制限を行い、感染の拡大を封じ込めるという基本路線は残るのではないか。
日本総研の関さんによると中国の今年の経済成長率は3%前後となる見通しですが、来年のゼロコロナ政策が完全には解除されないため、成長率は4%台にとどまると見ています。
日本総合研究所
関辰一主任研究員

習近平国家主席からゼロコロナ政策の方向転換を明確に示す言葉が出たら大きな転換点だが、今のところはちょっと見通すことが難しい。