中国のゼロコロナ政策の行方に日本企業も注目しています。抗議デモで抜本的な政策の修正に踏み切る可能性はあるのでしょうか。
中国 相次ぐ抗議デモの余波
"ゼロコロナ政策"の修正は…?
厳しい行動制限を伴うゼロコロナ政策をめぐり中国各地に波及した抗議デモ。
11月28日も浙江省杭州市で大規模な集会が開かれ、参加者の一部が拘束されました。
習近平国家主席の退陣などを求める激しいデモが発生した上海市では…
上海支局
菅野陽平記者

週末にデモが行われた現場近くの道路です。
道の右側には警察が乗るバスが待機しています。
11月29日も街の至る所で警備にあたる警察官の姿が…
当局は再び抗議活動が広がらないよう警戒を強めています。
一方、欧米各国ではデモの封じ込めを図る中国政府への批判が相次ぎました。
イギリスのスナク首相は28日の演説で経済連携を強化してきたイギリスと中国の関係について「黄金時代は終わった」と断言しました。
イギリス
スナク首相

はっきりと言おう。
英中の「黄金時代」は終わった。中国政府は人々の声を聞くのではなく、さらに取り締まる方を選んだ。
アメリカ政府からも…
アメリカ
カービー戦略広報調整官

人々は集会を開き政策や命令に平和的に抗議する権利が認められるべきだ。
欧米からの批判も高まる中、11月29日に記者会見を開いた中国の衛生当局は…
中国
衛生当局の担当者

市民から寄せられたさまざまな問題について積極的かつ効果的な対応を行い、それぞれの措置がより正確に温かみがあるようにしていく。
国民の声に絶えず耳を傾け、行動規制に伴う生活面への影響について改善を図っていく姿勢を示しました。
しかし、ゼロコロナ対策の修正について具体的な言及は避けました。
中国の新規感染者数は5日連続で3万人を超え、高止まりが続いています。
この事態を受け、上海ディズニーランドは11月29日に新型コロナ対策のため臨時休園すると発表。
日系企業への影響も続き、ホンダは2日連続で湖北省武漢市にある自動車工場の稼働を停止。外出制限により従業員が出社できなくなったためだと説明しています。
ゼロコロナ政策で日本企業は?
ゼロコロナ政策による混乱を日本企業はどう見ているのでしょうか。
都内で11月29日から始まった発酵・醸造食品をテーマにした企業展示会「国際発酵・醸造食品産業展」。日本酒から味噌までさまざまな商品が並んでいます。
兵庫県姫路市のヤヱガキ酒造。およそ20年ほど中国に輸出してきましたが、ここ数年の日本酒ブームで海外販売の3割は中国向けだといいます。
小川知美記者

飲みやすい。
しかし…
ヤヱガキ酒造
内海寛明専務取締役

中国が結構伸びていたがゼロコロナ政策で鈍化している。
飲食店に行けない、店を閉めていることが原因。
ゼロコロナ政策をめぐる中国でのビジネスに不安を覗かせます。
ヤヱガキ酒造
内海寛明専務取締役

まだ先行きが見えないので何とも言えない。
現地の人が動けるかどうかに尽きる。
経済が回っていってほしい。
鈴与工業は納豆を作る機械を中国の15の工場に納めている企業。
健康志向の高まりから発酵商品への注目が集まり、ビジネスチャンスを見出していましたが弊害も出ているといいます。
鈴与工業
鈴木大輔副社長

中国側との話が進みにくい。
ステークホルダーと役所が密にコミュニケーションできない点で足取りが重くなっている。
さらにパン製造機メーカーも…
戸倉商事
戸倉宏明専務取締役

3割ほど落ちている。
進んでいた仕事が「景気が悪くなったので計画を延期します」という話がたくさん出てきた。
われわれのディーラーは四苦八苦している。
一方で新たに中国進出を目指す企業「アットハンド」。米を発酵させたホイップクリームなどを独自で開発していて、先月上海の展示会に出展。
ゼロコロナ政策によるマイナスの影響は一時的だと考えています。
アットハンド
発酵工場 責任者
植村洋一郎さん

日本の人よりも健康志向が高い。
発酵食品をトレンドとして取り入れたい人が多い。
コロナに感染しないために免疫を上げる。
発酵食品を中国の人も分かっている。
習近平政権が下す選択は?
一方で経済団体のトップからは…
経済同友会
桜田謙悟代表理事

抗議デモのニュースを見て驚いた。
輸出の市場としての中国は既に縮小しているが、これ(ゼロコロナ政策)がさらに長引くのであれば停滞は続くだろう。
日本の経済界も注視する中国のゼロコロナ政策。
抗議活動の広がりを受け、習近平政権は今後、方針の修正に踏み切るのでしょうか。
専門家は…
日本国際問題研究所
津上俊哉客員研究員

ゼロコロナ政策をやめる、抜本的に緩和する。
これは中国政府としては取りにくい選択だ。
習近平氏が「やっぱり無理だ」と言えば別だが、下の人間がそれを言うことはできない。
長期化するゼロコロナ政策への不満が政権への批判にもつながった今回の抗議デモ。専門家は政権として国内の秩序を重視した形で対処していくと予測します。
日本国際問題研究所
津上俊哉客員研究員

抗議活動について中国政府は中身を二つに分類しようとしている。
一つはコロナで暮らしていけないという切実な生活上の訴えにどう対応するか。
もう一つは「共産党は降りろ」「習近平は辞めろ」など政府への抗議活動。
反政府的な抗議活動には中国共産党は厳しく対応すると思う。