11月11日は中国の「独身の日」です。毎年ネット通販各社が大型セールを行って話題になりますが、今年はどんな盛り上がりを見せているのでしょうか。日本企業の戦略などを深掘りしていきます。
中国 爆買いの象徴…今年は?
「独身の日」セールまもなく終了
残り1時間ほどで終了を迎える「独身の日」セール。これまで日本をはじめ多くの海外企業が力を入れてきたこのネット通販イベント。先駆けとなったアリババの取引額は去年10兆円に迫り、中国爆買いの象徴ともなっていました。
今年は大台達成の期待がかかる中、中国のZ世代にある変化が…
26歳 女性

私は買いだめや大量購入は好きではない。
27歳 男性

私は理性的だ。
いつも必要か考えて決める。
爆買い思考が弱まる中、企業には新たなアプローチが求められているのです。
Z世代を掴もうと猛スピードで変化する中国の巨大商戦に迫ります。
爆買いの象徴…若者に変化
中国「独身の日」セール
佐々木明子キャスター
中国ではこの時間も独身の日のセールの真っ只中ですが、中国で「95后」と呼ばれる1995年以降に生まれたZ世代の消費行動ですが変化が見られます。

解説キャスター
原田亮介さん

中国は世界最大の越境電子取引の市場です。
日本企業にとってもとても大事な日です。
佐々木明子キャスター
セールが行われている中国から上海支社の菅野記者に伝えてもらいます。

上海支局
菅野陽平記者

いま私は中継販売の現場に来ています。
後ろで生中継で商品を販売しています。
中国ではこうしたライブ販売が当然です。
現在22時57分、あと1時間ほどで11月11日が終わります。
各企業がラストスパートをかけている状況です。
佐々木明子キャスター
去年はアリババだけで取引額が10兆円近いということですが、今年はどういう状況ですか?

上海支局
菅野陽平記者

アリババなどの各ECは売り上げを発表していません。
実際に色んな会社に話を聞いてみると今年は低調ということです。
アクセス数が全体的に2~3割去年より低いということです。
新型コロナの影響で中国の景気は冷え込んでいますので、その影響が出ているとみられます。
佐々木明子キャスター
日系企業もラストスパートで売上を上げなければというところですね。

上海支局
菅野陽平記者

実際に中継現場を見てみると、こちらでは大手刃物メーカーの貝印さんが中継をしています。
カミソリや爪切りといったケア商品が並んでいます。
佐々木明子キャスター
去年と比べると売り上げはどうなんでしょうか?

上海貝印貿易
渡辺博明総経理

もう少しまで目標達成というところまできています。
佐々木明子キャスター
中国の消費に欠かせないZ世代ですが、消費行動が慎重という話がありましたが貝印の戦略は?

上海貝印貿易
渡辺博明総経理

私どもは生活密着産業なのでライブでも商品の良さや価値を伝えています。
また中国のZ世代はクチコミに敏感なので、ライブ放送で商品の特徴を丁寧に伝えています。
佐々木明子キャスター
Z世代向けの商品も考えられているんですね?

上海貝印貿易
渡辺博明総経理

品質などにもこだわっていますが、クールでかっこいいデザインを打ち出しています。
中国でも男性がZ世代を中心に身だしなみや美容にこだわっているお客様が増えているので、この商品を来年投入します。
今回のライブのインフルエンサーは男性ですが、こちらも我々が今回契約した方になります。
上海支局
菅野陽平記者
こちらの男性はコスメやメイクに精通し、中国でインターネット上で500万人以上ファンを持つインフルエンサーです。

佐々木明子キャスター
渡辺さんは上海で若者の姿を見てきたと思いますが、変化は感じられていますか?

上海貝印貿易
渡辺博明総経理

スピード感のあるマーケットなので好みの変化も非常に激しい。
なかなか売れなかった商品が急に売れたり、その逆もあります。
商品もアプローチの方法も常に変化や進化が必要だ感じています。
中国ではこういったライブ配信以外にも企業が新たな戦略で若者の取り込みを図っています。
それがバーチャルヒューマンと呼ばれる人たちです。一体、どのような存在なのでしょうか。
中国 人気沸騰の"人物"とは
Z世代消費を狙う新戦略
司会者

おなじみのナンナンです。
きょうは「Tommy未来世界」をお伝えします。
ライブ配信で洋服を売る男女。男性はCGで作られたバーチャルヒューマンです。
バーチャルヒューマン

白いセーターに新しいロゴはシンプルで活力がありますよ。
いま中国ではこうしたバーチャルヒューマンがネット通販の場で活躍し始めているのです。
ホンダが中国で販売する主力車種「アコード」のプロモーション映像。ここで登場する2人もバーチャルヒューマンです。広汽ホンダが独自に作りました。
広汽ホンダ
森山克英総経理

今われわれが狙いたいジェネレーションZ(Z世代)というのがデジタルに非常に敏感な当たり前に使っているお客様なので、非常に親和性が高いと思ったのがバーチャルヒューマン。
中国のZ世代を狙う企業の間で始まったバーチャルヒューマンブーム。
その火付け役となったのが「AYAYI(アヤイー)」です。誕生したのは去年5月、すでに国内が100社もの広告に採用されています。
その仕掛け人が于皛さんです。
燃麦科 創業者
于皛さん

日本では多くのアニメで主人公の髪は銀色だ。
中国"人気のヒト"秘訣は…
Z世代消費を狙う新戦略
中国のZ世代を狙うべく急増するバーチャルヒューマン。1番の人気を誇り、いまや100社もの広告に採用されているのが「AYAYI(アヤイー)」です。
なぜ架空のキャラクターがここまでヒットしたのか仕掛け人に直撃しました。
燃麦科 創業者
于皛さん

重要なポイントは短い髪型。
中国で短い髪型は有能で洗練され元気なイメージを表している。
2点目は銀色。
銀は中性的で力が感じられる色。
日本では多くのアニメで主人公の髪は銀色。
ヒットの秘訣は徹底的な調査。一般人だけでなく芸能人、インフルエンサー、さらには採用する側の企業経営者まであらゆる人の好みを綿密に計算して生み出されたのがAYAYIなのです。
燃麦科 創業者
于皛さん

今の若者は生まれた時からiPadやiPhoneなどの電子製品に接触している。
若者はバーチャルヒューマンをすごく受け入れている。
生活環境がデジタル化されている。
バーチャルヒューマンのビジネスでの活用は確実に拡大していく。
デジタル世代であるZ世代を取り込む動きは日系企業にも。
多くの日経企業のEC戦略を支援するトランスコスモスです。
バーチャルヒューマン

ようこそ、ノーリツの新製品メタバース会場へ。
今年8月、ノーリツが行った給湯器のPRイベントにバーチャルヒューマンを起用しました。
その結果…
トランスコスモス中国
岡田俊也さん

実際のEC店舗への流入はイベント前の3.3倍くらいまで増えた。
そして、今回の独身の日セールではバーチャルヒューマンの先を行く新たな取り組みが始まりました。
アリババが始めた仮想空間、メタバース上のバーチャルモール。街を歩いていみると「アディダス」にスイスの時計メーカー「ティソ」などの国際ブランドも出店しているのです。
店内にはバーチャル腕時計。拡大したり、角度を変えてみたり、自由自在に見ることができ、実際の商品をそのまま購入することも可能です。
しかし、モール内にお客さんの姿はまばらで中国でも始まったばかりの取り組みです。
トランスコスモス中国
岡田俊也さん

早い段階から新しい取り組みをしていくことで、盛り上がってきたときに乗り遅れない対応をしていくことが重要。
今回、独身の日セールとして初めて試験的にメタバースに参加した日本企業は…
バンダイナムコエンターテインメント上海
諸麦達也さん

われわれもメタバースに出ることでどういうお客様の反応があるか興味深かった。
現在中国で進んでいる技術革新は日本や各国でも広がりを見せていて、そういう部分では中国は先を進んでいる部分もある。
今後、われわれの世界各地域でのマーケティングに役立つと考えている。
中国「独身の日」セール
次世代ビジネスの実験場?
佐々木明子キャスター
バーチャルヒューマンには驚きましたが、中国では一大セールの中でもメタバースが始まっていたんですね。

解説キャスター
原田亮介さん

まだ未完成に見受けられましたが、中国がデジタルになぜ強いかというとトライアンドエラーをいとわない。
繰り返すことで加速することが特徴的。
例えば電子決済のPayPay、これも最初は4割でトラブルが発生していた。
あるいはいま開発が進んでいる自動運転もそうだと思う。
世界で最も進む中国の市場でどういう実験が行われるか注目です。
佐々木明子キャスター
挑戦できる場があるのはスゴいですね。
上海の菅野記者は取材を重ねていますが、こうした新しいテクノロジーの本格的な普及の可能性をどう見ますか?

上海支局
菅野陽平記者

アリババのメタバースは私も使ってみました。
何より未来感が溢れていて楽しいです。
もしかしたら数年後にはマストツールになっている可能性もあると思っています。バーチャルヒューマンの普及の背景には中国ならではの事情もあります。
ここ数年、中国では芸能人やインフルエンサーの脱税やイデオロギーの問題で表舞台から姿を消すことが起きています。
企業からしたらバーチャルヒューマンはそういったリスクやありませんし、稼働時間の制限もなく、なによりコストが安い。ある意味、テクノロジーが究極のリスク回避作になっている。
急成長中の東南アジアなど若者が増加していることで世界人口の32%、3人に1人がZ世代です。
この巨大なZ世代市場を狙って動きを加速させている中国発の企業への関心が高まっています。
中国発ファッション原宿上陸
世界を席巻するその実力は?
この週末、東京・原宿にオープンするのが中国発のファストファッションブランド「SHEIN」。
ドレスの値段は2,113円。超低価格と豊富な品ぞろえを売りに150を超える国と地域でネット通販を展開しています。
特にアメリカのZ世代に絶大な人気を誇り、ショッピングアプリのダウンロード数はアマゾンを超え世界2位。
さらに企業価値は1,000億ドル、およそ14兆円に。
名だたるファッションブランドを凌駕する中国発のファストファッションが今後、日本や世界のZ世代市場を席巻するのでしょうか。
田中瞳キャスター

Z世代を席巻する「SHEIN」の特徴をまとめました。
原宿の店舗でも商品を見ることができるだけで販売はアプリに特化させています。
そして日々変化するトレンドをAIを活用して分析。
そのデータを基にすぐさま商品化しています。
そうして生み出される新商品の数は毎日数千点に上るといいます。
佐々木明子キャスター
田中さんはSHEINを使ったことは?

田中瞳キャスター

きょう初めてサイトを閲覧して、試しにポーチを見てみました。
一度商品をクリックしたら似たようなポーチが大量に出てきました。
消費に慎重なZ世代にとっては見比べられるというところがいいと思いました。
佐々木明子キャスター
AIで分析してデータでスピードアップする、これがアパレル企業に登場するのはスゴいですね。

解説キャスター
原田亮介さん

SHEINは創業当初はもともと検索エンジンの専門家で、アパレルの会社というよりデジタルの会社。
AIを使ってアパレル業界を変えてやろうということでシーズンに1回商品を入れ替えるのではなく、時間単位で変える。
そういう試み。
どの工場でどうやって作っているのか、そういったことがまだ分かっていない。
ファストファッションは環境負荷が大きいという批判もある。
Z世代は社会意識も高いので、そういった情報を発信していくのが課題。