中国のテクノロジーの最先端をシリーズでお伝えする「中国Tech」です。先月開かれた共産党大会では食料安全保障もテーマとなりました。その一翼を担うハイテク技術を駆使したスマート農業の現場を取材しました。
後付け200万円 自動運転コンバイン
中国・上海郊外の東京ドームおよそ110個分の広さを誇る巨大な農場。
10月から11月にかけて米の収穫がピークを迎えています。
上海支局
菅野陽平記者

いま向こうからコンバインが来ています。
ただこちらから見て左の手前、操縦席には人が全くいないです。
完全に無人で進んできます。
無人のコンバインは稲の列に沿って自動運転で直進。端まで刈り取ると自動で方向転換し、再び刈り取りながら進みます。
運転席に置かれたモニター。事前に設定された赤い線のルートの上を隙間なく進み、走行した場所は緑に塗られていきます。
開発したのは農業のスマート化を手掛ける創業7年のベンチャー企業「LIANSHI(聯適導航)」です。
LIANSHI(聯適導航)
李由さん

ここに2つのアンテナがある。
北斗衛星のアンテナ。
さらにこの操作端末ではRTK測位技術も使われている。
中国独自の測位衛星北斗十数機に加え、GPSからの電波も受信。さらに地上に作った観測点と通信することで位置測定の精度を高めるRTK測位という技術を活用します。
一般道路のように線やガードレールのような目印がない農地でも設定したルートに対してプラスマイナス5センチの誤差で進むことができます。
上海支局
菅野陽平記者

刈り取ったあとを見てみるときれいに刈り取りされています。
方向転換した場所も1本だけ残っていますがほぼ刈り取られています。
実はこのシステムは後付けが可能。この農場では以前から使っている日本のクボタとヤンマー製のコンバインに取り付けていて、費用は1台200万円で済むのだといいます。
上海外岡鎮無人農場
孫佳贇さん

燃料も節約でき、刈り取り精度も上がった。
収穫量は5%増えた。
ただ、刈り取った籾の入れ替えは人が遠隔操作する必要があるなど技術は開発途上。
しかし、ゆくゆくは田植えなども含め完全な無人化を目指すといいます。
スマート農業で食料安全保障
先月行われた共産党大会では食料安全保障を重視し、農業強国を目指す方針を発表。
収穫量や質を向上させるべく農業のスマート化が目標とされています。
この集団農場でもさまざまな技術を導入。人の背丈ほどもある大きな箱にあるのは…
上海外岡鎮無人農場
劉波農場長

稲に有害なウイルスや細菌の胞子を集めるためのもの。
分析して薬を使うか判断している。
さらにこちらは虫の捕獲装置。集めた虫の中にいる害虫の種類と数をAIが自動で判別して解析。薬の散布の時期を的確に判断し、量も抑えることができるといいます。
コントロールセンターの大画面に映し出されていたのは人工衛星やドローンで撮影した田んぼの写真。葉の色を基に生育状況を可視化するなどし、さまざまな分析をしているといいます。
中国が農業のスマート化を進める裏には日本とも共通した深刻な問題があります。
上海外岡鎮無人農場
劉波農場長

栽培を担当するスタッフも農機を扱うスタッフも皆、高齢化が進み定年を迎えているので若手を入れる必要がある。
新人は経験が足りないし、栽培の知識もない。
解決する唯一の方法が機械化、無人化、スマート化。