10月22日に閉幕した中国の共産党大会ですが、今回はまさに異例尽くめという展開になりました。大会の直前に習近平氏を批判する横断幕が市内に掲げられたり、前の国家主席の胡錦濤氏が会場から退席させられたり、そして集団指導体制から習氏1人に権力を集中することも実質的に決まりました。中国の人々のこれからの5年を期待と不安を抱えながら見つめていきます。
3期入りの習近平氏
"期待"と"不安"市民の視線
中国共産党
習近平総書記

新たな道のりは栄光と夢に満ちている。
われわれは全力を注いで奮闘し、勇気を持って前に進み、より輝く未来を作り出すように努力する。
中国共産党大会、そして習近平氏の3期目入りを街の人たちはどう見たのでしょうか。
市民

習氏の2期10年で中国に対する貢献は大きいと思う。
腐敗撲滅やコロナ対策の面なども含め民生の面ではよくやっていると思う。
だから私は習氏の再任を支持する。
市民

習氏が3度目の総書記に就任して、習氏の指導のもと、われわれはより良い、より多くの、より輝かしい未来を想像できると信じている。
北京から車で1時間ほどの農村でも新指導部の印象を聞きました。
市民

特に考えないよ。生活はより良くなっている。年々良くなっているでしょう。
番組スタッフ
今後、生活はさらに良くなると考えている?

市民

より良くなる。農民の待遇も良い。
生活はとても良い。
新指導部への期待と歓迎の声が聞かれる中、ある事件が党大会の直前に起きていました。

飯を食わせろ!自由をくれ!投票させろ!独裁で国賊の習近平を罷免せよ!
厳しい言論統制が敷かれる中、こうした批判は極めて異例です。
中国情勢に詳しい東京大学の阿古智子教授は国内政治に残る不安定さが習氏を不安にさせていると分析します。
大浜平太郎キャスター
ここまで体制を習派の人たちを固めた狙いは?

東京大学
阿古智子教授

習近平氏がますます独裁的な存在になっている。
自分にとって誰が敵なのか、非常に疑心暗鬼になっている。
周りを分かりやすい味方で固めなければ自分の座が脅かされるという警戒感が強い。
北京市内で私たちがマイクを向けると人々は習近平指導部への期待を語りました。
しかし、さらに話を聞くと経済の先行きへの強い不安の声も…
市民

現在は景気が下振れしている状況なので、より効果的な政策を打ち出す必要がある。
景気回復や全国でバランスのとれた発展を進めて欲しい。
これが私たち庶民にとって大事なことだと思う。
市民

今は若い人の就職が難しくなって、いい仕事が見つからない状況だ。
このあたりの支援をもっと強化してほしい。
若者は今、大きなプレッシャーにさらされている。
市民

仕事を見つけるのが難しい。40歳を超えた。私たちは仕事がなかなか見つからない。
ゼロコロナで傷ついた経済をなんとか立て直してほしいという意見が多く聞かれました。
喫緊の課題となる経済対策。新指導部はどう取り組むのでしょうか。
大浜平太郎キャスター
メンバーに改革派と呼ばれる人はいないようですが、そうすると経済政策はどうする?

東京大学
阿古智子教授

国有企業を優遇する環境が継続していて非常に懸念している。
民営企業が発展できない。圧力を受けることが顕著になっている。
合理的な判断ができなくなると経済的にも苦境に陥る。
ゼロコロナ対策を緩めようとしない。そのあたりもどうなるか。
毛沢東化するのか
不透明な中国の未来
自身に近い人間で指導部を固めた習氏。さらに権力が集中することになります。
中国の人々の脳裏をよぎるのは過去の歴史です。
毛沢東氏はかつて党トップにとどまり権力が集中。毛氏が起こした文化大革命は多数の死者を発生させ、彼が死ぬまで終わりませんでした。
のちにトップを引き継いだ鄧小平氏はその反省から集団指導体制や個人崇拝の禁止を取り入れました。
習近平政権の長期化が決まり市民に不安はないのでしょうか。
番組スタッフ
毛沢東氏は権力にいた時間が長く、その後、文化大革命を起こした。
海外メディアは再び文化大革命のような事態が起こらないか懸念しているがどう思う?

市民

そんな事が起こるはずがない。なぜなら中国共産党は日々良くなっているから。
そんな事が起きるわけないじゃないか。
阿古教授は一部分の成果が誇張され、その他の部分での失敗が隠されてしまう危険性を懸念しています。
東京大学
阿古智子教授

歴史を振り返れば大躍進政策や文化大革命など成果をアピールしている裏側で多くの人が餓死している状態だった。
行き過ぎた宣伝をやると、その裏側で失敗しているのは見えない。
習近平氏が同じ失敗を繰り返す可能性がある。非常に心配。
始まったばかりの習政権3期目の5年間。権力が集中する中での課題を阿古さんはこう見ています。
東京大学
阿古智子教授

習近平氏が合理的な判断をできるのか。
イエスマンが多いのでリーダーシップを発揮しやすい。
習近平氏が経済政策をどこまで合理的な判断ができるか。
もしかしたら3期目、4期目までに自分の跡継ぎを見出せるかもしれない。
亡くなるまでは自分の権力を及ぼそうとするのは確か。