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[モーニングサテライト]「中国焦点」学習塾規制から1年「体育」に熱視線

2022年6月30日

モーニングサテライト

「中国焦点」のコーナーです。

今回のテーマは中国の教育を取り上げます。中国政府は去年、学習塾を対象とした規制の強化を打ち出しました。その規制というのは学習塾は利益を追求してはいけないと非常に厳しい内容でした。

この規制の強化から1年、教育現場の変貌を取材しました。

学習塾に異変!"教育格差"を無くせ

6月上旬、北京市内のとある学校の前には人だかりができていました。

北京支局
杉原啓佑記者

多くの受験生が試験解除へと入って行きます。

毎年6月に実施される高考(ガオカオ)と呼ばれる中国の大学入試です。

我が子を抱きしめる母親の姿に、道路には交通整理を行う警察官まで。会場には独特の緊張感が漂います。

受験生

自信はある。今年で2年目の受験なので。

受験生

頑張ります。

会場前には心配そうに待つ保護者の姿が。試験にかける思いはわが子以上です。

受験生の保護者

大丈夫、あの子は強い子なので。
何年もかけて勉強をがんばってきた。努力が報われるように願っている。

涙ながらに試験の成功を祈ります。

厳しい学歴社会の中国。試験の結果が人生を決めるともいわれ学生たちは皆勉強漬けの日々を乗り越えてきました。

こうした加熱し続ける教育環境をめぐり中国政府は去年7月にある政策を打ち出しました。

既存の学習塾を非営利組織に転換させる。

小中学生に国語・算数など主要科目を教える学習塾に対し、利益を求めることを禁止しました。

さらに学校の宿題の量も大幅に削減させるなどいわば中国版のゆとり教育政策です。

北京や上海などでは子ども1人が大学を卒業するまでにおよそ5,000万円かかるとされています。

政策には行き過ぎた競争を抑え込むとともに国民の間で不満が高まる教育費の高騰にメスを入れる狙いがありました。

こうした中、去年には賑わっていた北京市内の学習塾に異変が。

北京支局
杉原啓佑記者

1年前には多くの生徒が通っていたこちらの学習塾ですが、今はテナント募集の張り紙が貼られています。建物の中は真っ暗で何も見えません。

多くの学習塾は教室の閉鎖に追い込まれ、教育業界では大規模な人員削減が相次ぎました。

現在中国論が専門の神田外語大学の興梠一郎教授は中国政府の学習塾への姿勢は政治的キャンペーンだといいます。

神田外語大学
興梠一郎教授

共同富裕というスローガンが出てきて格差を無くすことを政策でやる。
塾の場合は教育の格差を無くすことを人為的にやろうとした。
実は不動産価格を無理やり総量規制で下げようとしたのと同じ。
一種のポピュリズムというか人気取りみたいなところもある。

学習塾への規制強化から1年、実はいま盛り上がりをみせる塾があるといいます。

教室を覗いてみるとバスケットボールをしながらスマートフォンに語りかける男性の姿が。何をしているのでしょうか。

塾の指導員

今、オンラインで授業をやっていた。
今この画面の中に1・2・3・4…合計8人の生徒がいる。

北京市内に53教室を構えるこちらの運動を教える塾。この日の授業はバスケットボールのドリブルと体力トレーニングです。

生徒は小学生から中学生の子どもたち。コロナ対策のため今はオンライン授業ですが、通常は大きな体育館で教えています。

週1回2時間の授業で月謝はおよそ2万5,000円。安くはありませんが生徒数は急激に増えているといいます。

運動塾・優肯閆総監督

学習塾への規制が始まってから生徒数は15%ほど増えた。
学習塾へ通っていた子どもたちの時間に余裕ができたので、その空いた時間に運動塾に通い始める子どもが増えた。

生徒数はこの1年で2,000人余りも増え、今では1万7,000人が通っています。

運動塾に人気が集まる大きな理由がもう一つ。

オンライン授業を受けていた翟くん(9歳)。去年から運動塾に通う時間を増やしたといいます。

レッスンの様子を見守る両親は…

翟くんの両親

高校入試の得点が70点に増える予定だ。

翟くんの両親

バスケなど体育種目は高校入試で配点がある。
塾で長時間練習してきた子の運動レベルが高いということは一目見れば分かる。

中国の高校受験では体育の実技試験があります。

北京市ではバスケ、サッカー、バレーなどから種目を選択する仕組み。

政府は体育の配点を現在の30点から今後7年間で70点まで引き上げると発表しています。

翟くんの両親

運動することで高い集中力を鍛えることもできる。
運動は他の科目の勉強にもとても役立つと考えている。

ほかに水泳の塾にも通うという翟くん。習い事にかけるお金は1年間で400万円に上ります。

政府の規制強化で業績が悪化した大手学習塾も新たなビジネスチャンスに商機を見出しています。

学習塾大手の新東方教育科技は去年、各地で高校受験向けの体育コースをスタートさせました。

こうした運動塾の市場規模は2023年には2兆6,000億円に拡大するとの試算も。

学習塾規制が始まる前の2020年と比べると実に8割も増える見込みです。

興梠教授は今後も制作のブレが続くと指摘します。

大浜平太郎キャスター

「法治より人治」とはどういう意味?

神田外語大学
興梠一郎教授

指導者が変わると全部変わる。思想も路線も。
だから大きくブレる。
規制をちょっと緩めてきている。でもその時は絶対看板を下げない。
共同富裕は失敗したとは言わない、ゼロコロナも失敗したとは絶対に言わない。
現場で変えていく。
成長も止まるし、大量の失業者が出るから、そこは現実的

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