「中国焦点」のコーナーです。
中国の習近平指導部が進めるゼロコロナ政策が中国の経済だけでなく世界経済を揺さぶっています。指導部は今後のこの政策を堅持する方針ですが、中国の国内企業や中国に進出している日本企業なども経済の長期停滞への不安が広がっています。このゼロコロナ政策に揺れる現場を取材しました。
上海ロックダウン 見えぬ経済活動再開
3月下旬からロックダウンが続く中国・上海。
こちらは52日ぶりに封鎖が解除された住宅団地。1家庭1人、1日4時間までと厳しい制限があるものの多くの住民が外へと出掛けました。
ただ、店のほとんどは閉まったまま。営業再開にこぎつけた店はごくわずかです。
一方…
上海支局
菅野陽平記者

オフィスがあるエリアにやってきました。ビルの入口は封鎖されていて入ることができません。この辺りのオフィスビルはどこも全棟が封鎖されています。
経済活動再開のめどはまだ立っていません。
政府は重点産業を中心におよそ1,800社の操業再開を許可したものの日系企業は6割以上の工場が1ヵ月以上全く稼働できていません。
さらに長期ロックダウンによる物流の停滞が日本にも大きな影響を与えています。
NXグループ(ニッポンエクスプレス) 中国法人
直野徹さん

お客さんがかなり焦り始めている。
今まで作れなかったもの、消費地の在庫、工場での在庫がかなり底を突いてきている。
ゼロコロナを問う!
北京に忍び寄るロックダウン
一方、首都・北京でも感染が拡大。緊張が高まっています。
北京支局
佐藤真人記者

コロナ規制が強まる中、北京市民の憩いの場になっていたオリンピックの記念公園ですが、こちらも閉鎖されてしまいました。
多くに人が集まる大規模な公園は入ることができなくなったほか、観光地は軒並み営業を停止しています。さらに地下鉄もおよそ70の駅が封鎖に。
ただ、北京市民は…
北京市民

北京は首都。そこ(ロックダウン)まではしないはず。
北京市民

上海のコロナ対策が戒めになるだろう。上海のような低レベルなことは起きない。
専門家は仮に北京でロックダウンになったときの経済への影響の大きさを指摘します。
東洋証券上海駐在員事務所
奥山要一郎首席代表

上海は封鎖しないしないと言いながら突然ロックダウンになったので北京もロックダウンの可能性はゼロとは言えない。
北京も上海に続いてロックダウンとなると中国の経済目標の達成はかなり困難になってくる。
"専門設備はない"隔離施設の実態
ゼロコロナ政策を堅持する中国指導部。
上海では大規模展示場やオフィスビル、学校などに臨時病棟を建設し、およそ30万床を準備しました。徹底した感染者の隔離を行うためです。
新型コロナで陽性となり、先月9日間臨時病棟に入った饒さん(27歳)。隔離中、施設内部の様子を撮影し続けていました。
送り込まれたのは自動車工場を改造した施設です。
饒さん(27歳)

施設の中は感染者が寝たきりの状態を想像していたが楽観的な感染者がいっぱいで雰囲気もそんなに重くなかった。
施設にいたのはほとんどが饒さんと同じ無症状や軽症の感染者。3月以来、上海で確認された感染者は累計およそ63万人。その9割以上が無症状の感染者です。ゼロコロナ政策のもとでは全員を隔離しているのです。
饒さん(27歳)

治療をほとんど受けていなかった。隔離がメイン。
漢方薬が配られた。医者は「自分の体調次第で飲んでください」と。
医療関連の設備は消毒スプレーくらい。病院にあるような専門設備はほとんどなかった。
さらに施設には1,000人以上の感染者がいましたが医師は数人しか確認できなかったといいます。
饒さん(27歳)

不便なのはベッドの間隔が狭くよく眠れなかった。
洗面などは数ヵ所の洗面台しかない。
中国の大手企業の経営者からは徹底した隔離対応を見直すべきだという意見も出ています。
専門家の視点!習近平氏はどう向き合う
中国の現代政治や東アジアの国際関係が専門の東京大学 高原明生教授です。
コロナ政策をめぐり習近平国家主席は最高指導部と中国社会という2つの対象に同時に向き合わなければならない難しさがあると指摘します。
東京大学
高原明生教授

党大会が開かれるときはしっかり経済発展をして社会を安定させることが大事なこと。
今年はそれができない状況。習近平氏はとても困っている。いきなり政権権力基盤が揺らぐことはないがダメージにはなる。
習近平氏でも14億人が不満を強く持つようでは難しい。
不満の広がりが起きないように厳しいロックダウンをやって広がりを抑え込むのが今の作戦。
番組が先週末に実施した専門家へのアンケート調査では今後ゼロコロナ政策の修正を図ると答えた人は63%。政策の見直しが不可避という意見が多数でした。
堅持 | 37% |
---|---|
微修正 | 63% |
放棄 | 0% |
大浜平太郎キャスター
今後ゼロコロナ対策自体を微調整していく可能性はあるのか?

東京大学
高原明生教授

ゼロコロナ対策を変えたとはなかなか言えない。微調整はありえる。
2020年の初めの武漢のロックダウンからパンデミックが始まり、中国から広まった。
そのときの措置、減税や補助金、そういう政策を取らざるをえない。
そういう状況に今陥っている。しかし他にやりようがない。
必ずうまくいくか言えないが、共産党としては賭けざるをえない。