中国の経済の中心地である上海が新型コロナウイルスの感染拡大で事実上のロックダウン(都市封鎖)となってから2ヵ月あまりが経ちました。
生産や消費が停滞した影響で5月31日に発表された5月の中国の製造業の景況感を示すPMI指数では景気判断の節目となる50を3ヵ月連続で下回りました。
こうした中、上海市はまもなくロックダウンの解除に踏み切ります。
上海支局の菅野陽平記者とつながっています。
まもなく"ロックダウン解除"!
約2ヵ月時が止まった中国・上海
大江麻理子キャスター
菅野さんの生活もロックダウンの影響を大きく受けていましたが今の上海はどういう状況でしょうか?
上海支
菅野陽平記者
まもなく日付が変わるとロックダウンが解除される上海です。
私の後ろの歩道橋には待ちきれない人が外に出てきています。
私自身も先週から外出ができるようになり、ロックダウン以来初めてこうして自宅の外で中継をしています。
大きなトラのモニュメントがありますが、実はこちらは2月の旧正月の飾りで、それがいまだに残されたままです。
こうして外に出て時が止まったままの街を見ると、いかにロックダウンが長かったのかと実感しています。
この辺りは上海屈指のショッピングモールが建ち並ぶエリアですが、これらも明日から一斉に営業を再開するとしています。
3月のロックダウン開始から2ヶ月あまり、正常化に向かい動き始めた上海を取材しました。
「外出」楽しむ上海市民 不安も…
上海支
菅野陽平記者
旧フランス租界のエリアにやって来ました。この辺りは外出許可が出た人が多いのか非常に人で賑わっています。多くの住民が外へと出てきています。
上海の中心部、路上で食事を楽しむ人に、青空美容室も。
自動車での移動にはまだ許可証が必要なため徒歩や自転車で外出する人が多く見受けられました。
上海支
菅野陽平記者
こちらはスーパーマーケットですが入り口からズラーっと人が並んでいます。後ろが全く見渡せないほどです。
一方、地下鉄は先週から先行して一部路線で運行を始めています。ただターミナル駅に向かう路線に乗ってみると…
上海支
河渕準平記者
大きな荷物を抱えた乗客がたくさん見受けられます。
いつロックダウンが再開するか先が見えない中、他の都市へ脱出する人も少なくありません。
そして5月31日…
上海市
宗明副市長
6月1日から防疫管理をしっかりと行う前提のもとで企業や企業団地、ビルなどの全面的な操業再開と生産再開を加速させる。
1日の感染者が31人まで減少するなど感染収束のめどが立ったとして上海市政府は6月1日からロックダウンの解除を進めると宣言。
公共交通機関の運行を全面的に再開するほか、企業活動の制限についても解除するとしています。
正常化に向かう一方でいまだ野外でテント生活を強いられる人たちも…
バイク便の配送ドライバーとして働く饒さんもそのひとり。
配送ドライバーは多くの人と接触するため感染リスクがあるとして半月以上も家に戻ることが許されていません。
バイク便の配送ドライバー
饒さん
どう表現していいか分からないが、まるで原始人のような生活。
仕事を再開してからシャワーは浴びていない。
ロックダウン前の収入は1日400~500元(7,600~9,500円)だった。
現在の1日の収入は平均200元(3,800円)前後。
饒さんにとって大きな収入源だったのがオフィス街でのランチの配達。
明日からの制限解除に望みを抱く一方でオフィスに人が戻ってくるのか心配だといいます。
バイク便の配送ドライバー
饒さん
コロナが早く収束してほしい。
オフィスビルで働く人が私たちを養っていると言える。
彼らが仕事を再開できなければ私たちも収入を確保できない。
経済活動いつ正常化?
大江麻理子キャスター
明日からロックダウンが解除されるということですがどの程度正常化することになるのでしょう?
上海支
菅野陽平記者
明日から基本的にオフィスの出勤は可能になるとなっています。ただロックダウン中に一度でも陽性になった人は立ち入ることができないなど、オフィスへの立ち入りは最小限の人数にするようにといったあやふやの通達を出すビルもあります。
一斉再開となるかは不透明です。
ショッピングモールの大きな球体のスクリーンには普段は公告が流されていますが、いまはコロナ対策の呼びかけなどが表示されています。
封鎖は解除されても感染者が出ればオフィスや住宅は再び封鎖されるので気を緩めることができない状況が続きます。
大江麻理子キャスター
上海のロックダウンの影響は日本も受けていましたが、それは今後どうなりそうですか?
上海支
菅野陽平記者
ロックダウンによって日本を含む世界の物流拠点だった上海港が機能しなくなっていましたが、政府はコンテナの取り扱いが平常時の95.3%まで回復したと発表しています。
ただ日経の大手物流会社に聞くと作業員が現場に戻ることができていないので、4~6割の回復にとどまっているというのが現実のようです。
日系企業の多くも6月1日からオフィスや店舗での業務を再開しますが、実際に聞いてみると2ヵ月ぶりなのでまず出てみて状況把握してみないと先が見えないという声がほとんどです。
こちらも正常化まではまだ時間がかかりそうだと感じています。