いま首都圏ではビルの建設ラッシュが続いています。
2017年だけでも東京23区内に大規模なビルが20棟完成する予定です。さらに2018年には23棟、2019年には25棟、そして2020年には24棟と続々と大規模なビルが完成する予定になっています。
こうしたビルの建設ラッシュによってある食堂が大変な活況となっているということです。
一体どんな食堂なのか、その現場を取材しました。
アサヒコーポレーション株式会社
東京・日比谷にある建設中のビル「(仮称)新日比谷プロジェクト」。
映画館やオフィスが入居する大型複合施設で2018年の春にオープン予定です。
施工は鹿島建設株式会社。現在、工事関係者、約1,500人が作業にあたっています。
昼の休憩時間、職人たちがエレベーターに乗り向かった先は、何故かこのビルの11階。職人たちが集まっていました。
そこにあったのはプレハブ小屋。そして奥には行列が出来ていました。
天玉そばの大盛りです。
ここは現場で働く職人たち専用の食堂です。
運営しているのはアサヒコーポレーション株式会社という会社です。
東京23区内だけでも建設中のビル、12ヶ所に出店しているこの業界のトップ企業です。
その人気のヒミツとは何なのか?
人気の秘密
午前10時の少し前、食堂のスタッフが揚げ物を始めました。こんがり揚がった鶏のから揚げ。それを手早く串に刺していきます。唐揚げが3つ刺さった「から揚げ棒(150円)」。
そして午前10時。職人たちは休憩時間に入ると続々とから揚げ棒を買っていきます。1日に約100本は売れるといいます。
職人さんは、
1日1本、これ食べると昼まで持つんですよ。
そして午前11時、今度は天ぷらを揚げ始めました。天ぷらそば用のかき揚げです。
午前11時半、早めの昼食をとりにやってきた職人たちが、
天玉そば。
麺は注文を受けてからさっと湯がいて先程揚げたかき揚げを乗せます。
職人たちの休憩時間に合わせてできたてを用意するのが人気の秘訣です。
職人さんは、
外に出なくて良いし温かいものが食べられるので非常に助かっています。
通常、建設現場では作り置きのお弁当を出されることが多いといいます。
しかし、ここではアツアツの天ぷらそばが370円。ご飯300gとボリュームたっぷりのカレーライスは400円。都心ではランチで1,000円を超えることもざらですが、ここならほとんどのメニューを500円以内で食べられます。
鹿島建設株式会社の担当者、吉川淳さんは事前に試食をして数社の中からアサヒコーポレーション株式会社を選んだといいます。
味やサービスが非常に満足いくものだったので当現場に採用してみることにしました。非常に評判は良いですね。
いま建設ラッシュで現場は人手不足気味。職場環境を良くすることで職人の働く意欲を高めようという狙いです。
しかし、あくまでも建設現場の食堂のため2017年の秋には閉店。このフロアもオフィスになる予定です。
井上義市社長
東京・品川区。オフィスビルの一室にアサヒコーポレーション株式会社の本社があります。
2009年に創業し、売り上げは約4億2,000万円。
社長の井上義市さんはもともと建設会社で働いていましたが、この分野に需要があると見込んで独立しました。
東京オリンピックに向けて建設ラッシュも進んでいて、今後かなり需要があると思う。
奥を見せてもらうと何やら大量の荷物が…、
食器ですとか鍋。これで1店舗分ぐらい。建設現場が終われば撤収しなくちゃいけない。
撤収した料理器具が一時的に置かれていますが、すぐにまた建設現場に運ばれるそうです。
虎ノ門は13日からお願いしたいって。
今後、すでに10店舗の出店が決まっているといいます。
日本橋室町3丁目再開発事業A地区
そのひとつが日本橋室町3丁目再開発事業A地区です。
2019年に完成予定の大型複合施設で鹿島建設株式会社などが施工にあたっています。
今回、食堂を出店するのは敷地内にある仮設休憩所の1階。
あの赤いのがうちの店なんですよ。
アサヒコーポレーション株式会社の社員たちが下見にやってきました。
今度の食堂となる赤いコンテナ。しかし見ると他にも色違いのコンテナが並んでいます。
この現場、アサヒコーポレーション株式会社以外にも3店舗が出店します。コンビニ大手の株式会社ローソンも初出店を決めました。
株式会社ローソン
実は株式会社ローソンも増え続ける建設現場を有望な市場として捉えていました。
株式会社ローソン広報室の竹元裕貴さんは、
一定のお客様の人数は見込めますし、工事現場は増えていくと思うので良い話があれば今後、個別に検討していきたい。
鹿島建設株式会社
鹿島建設株式会社は今回なぜ4店舗も出店させたのか?
鹿島建設株式会社の高橋佳之さんは、
複数社入ったほうが作業員には喜ばれると考えている。
アサヒコーポレーション株式会社
アサヒコーポレーション株式会社ではライバル店舗とどう戦うか作戦会議を開いていました。
作業用品はローソンに売っていないと思っている。
でもそんなの売る必要ないんじゃないですか。
うちは食堂だけ、一本で勝負すれば良い。
手作りでやったほうが良い。
オープン
2月2日、いよいよオープン。
昼の休憩時間に入り職人たちがやってきました。キョロキョロと辺りを見回し、職人が選んだのはアサヒコーポレーション株式会社のお店。
オススメは?
しょうが焼き丼セットかカレーセット。
しょうが焼き丼セット。
しょうが焼き丼と天ぷらうどんのセット「しょうが焼き丼セット(700円)」を購入。
一方、別の2人組は株式会社ローソンの店舗に入っていきました。
職人たちの選択肢も増えたようです。
毎日、味比べみたいにできるので気分転換兼ねてすごく良い。
東京オリンピック以降について
いま活況となっている建設現場、しかし東京オリンピック以降、その勢いは減速するのでは?
アサヒコーポレーション株式会社の井上義市社長は、
東京駅周辺とか丸の内、大手町は老朽化した低いビルがあるが軒並み建て替え計画が入っている。東京オリンピック後も関係なくうちの商売は問題ないと思う。