小此木藍さん
東京・多摩市。
友人とランチを楽しんでいるのは小此木藍さん(35歳)。
アパレル企業などに人材を派遣する会社に勤めています。
週末に会うこともあるが子供が互いに3人ずついるので、結構賑やかで、あまりゆっくり話す感じではない。
プライベートのひと時にも見えますが、実は会社の「フリー出勤」という制度を使って仕事をしている最中なのです。
フリー出勤
フリー出勤は電話などで緊急時の対応さえできれば週に1日、どこにいても良いという制度です。
実質的な週休3日制ですが、給料は変わりません。
あっ電話。ちょっと静かにしててね。
取材中も派遣スタッフのトラブルを巡り電話が掛かってきました。
先月末に就業したばかりのスタッフと、いま直接連絡が取れていない。
電話がない時間は何をしていてもOK。
この日は子供達と公園へ行きます。
休日はサッカーの習い事があるので、こうやって、そろって遊べることがない。平日のお休みは楽しい。
フリー出勤を満喫する小此木藍さんですが、子供たちに聞いてみると、
「ママの仕事は大変だと思う?」
うん。いつも電話で大変そうだから。
「どこで電話しているの?」
ベランダとか、キッチンのところとか。
平日の時間
夕方、子供を家において出掛けたのはネイルサロン。
フリー出勤の日に手入れをするのにもワケがあります。
土日だと予約が取りにくかったり、子供の用事が入ってしまって自分の時間が作れなかったりするので、平日にこういった時間があるのは動きやすくていいと思う。
株式会社シーエーセールススタッフ
[blogcard url="http://www.ca-ss.jp/"]
小此木藍さんが働くのは「CA Sales Staff」。
派遣先と労働者の板挟みでストレスが溜まりやすい職種のため、一時は離職率が3割を超える深刻な状況でした。
そこで人材流出に歯止めをかけるため、試験的に導入したのが完全週休3日制。
しかし、広報室の松葉谷維子さんによると
思いのほか、うまくいかなくて対象となった社員の業績が落ちたり、自分が休みの間に業務がうまく回っているか心配になって「休んだ気がしない」といった、ネガティブな意見が多かった。
「完全週休3日制」について社員にアンケートしたところ相次いだのは「他のメンバーに負担がかかる」「気持ちよく休めなかった」といった声です。
そこで会社が休みを決めず、自分で働き方を選べるフリー出勤に変えたのです。
フリー出勤は自分の業務のバランスによって調整できるので、自分の裁量で休みや出勤を決められるのが一番のポイント。
会社にも大きなメリットがありました。
2012年に33%以上あった離職率はフリー出勤を本格導入したことで6%台まで劇的に改善したのです。
この日開かれたのはささやかなお祝いの席。
小此木藍さんはフリー出勤のおかげもあって1人で80人の派遣スタッフを担当するという会社始まって以来の記録を達成しました。
人材コーディネーターや営業は人のことで謝ったり、対応することが多くて結構ストレスがたまる仕事だと思うが、実質週休3日になって気持ちのリセットがうまくできるようになり、次の日まで仕事のことでくよくよ引っ張らなくなった。
SCSK株式会社
[blogcard url="https://www.scsk.jp/"]
東京・江東区にある住友商事株式会社系のIT企業「SCSK」。
この会社は「残業代」を従業員に保証することで労働時間を削減しようとしています。
2015年6月、WBSも取材していました。
打ち合わせをダラダラ続けないため立ったまま会議をしたり、自分の退社時刻をカードで周囲に告知したりするなど残業削減に向けた取り組みを続けていました。
こうした様々な工夫を積み重ねた結果、平均の残業時間を月20時間以下に削減することに成功しました。
一方、社員の手取りが減らないよう残業をしなくても最大で34時間分の残業代を給与に上乗せしました。
社員たちにも変化が出てきました。
池田徹朗さん
5時をすぎて足早に会社から出て行くのは池田徹朗さん(38歳)。
向かったのは「グロービス経営大学院」です。
こちらの学校は実践的な経営学を学んだり、多様な人脈を築いたりできる社会人大学院。
池田徹朗さんは普段の仕事では出会えない異業種の人たちとの交流が予想外の結果につながっているといいます。
学生同士というのは利害関係がないので、懇親会を中心に意見交換して視野が広がる。いろいろな立場の視点で物事が見られるようになるのが大きな効果。
残業削減に週休3日制、働き方改革の波は徐々に日本企業に広がっています。