最近、スーパーなどで見かけることが増えたニュージランドやカナダからの輸入牛肉の量を示したグラフです。
TPP(環太平洋経済連携協定)が去年末に発効したことで輸入量が今年の1月から急増しています。
今回注目するのはこれらの新勢力の中でも「その他」に分類されているある国の牛肉です。安くて良質な牛肉を日本人に届けようと奮闘するキーマンに密着取材しました。
株式会社ブロンコビリー
[blogcard url="https://www.bronco.co.jp/"]
東海地方を中心に展開するステーキチェーン店「ブロンコビリー」。
都内の店舗を昼時に訪ねると平日でもこの賑わいです。
200グラムのサーロインステーキお待ちしました。
おいしそう。
店の一番人気が今年5月にメニューに加わった熟成サーロインステーキ。
このステーキ目当てのお客様が急増していました。
味がワイルドです。
すごく「肉食ってる」という感じ。
人気の秘密が脂肪分の少ない赤身肉であること。
備長炭で一気に焼き上げることで肉汁を中に閉じ込めジューシーな味わいに仕上げています。
値段よりも高級感のある肉だと感じた。
この新商品のステーキ、以前から提供しているアメリカ産より700円も安いのですが味はアメリカ産に負けないと評判になりました。
実はこの肉、日本では珍しい南米ウルグアイ産です。
ウルグアイ牛
WBSでは5月、輸入されたばかりのウルグアイ牛を取材。
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このときの会見で竹市克弘社長はウルグアイ牛導入の狙いについてこう語っていました。
カナダ、ニュージランドがTPPの対象国になり、少し関税が安くなることによって輸入の価格が下がっているが、世界的には年々牛肉の価格は高騰して肉の取り合いの戦国期になっていく。
中国など新興国でも牛肉需要が高まっているため竹市社長は今後も手頃な価格のステーキを提供するには新たな輸入先の開拓が欠かせないと考えているのです。
ただ想定以上の人気が出たことである問題も起きていました。
ブロンコビリーの経営企画部、吉田光浩部長、
非常に売り上げ好調で8月のお盆前には一時品切れ。
せっかくこれだけの商材で。
そこそこ数量は確保して臨んだつもりだったんですけど。
安定調達できる輸入ルートの確立が課題となっていたのです。
日本から見ると地球の真裏に位置する南米ウルグアイ。
9月下旬、首都モンテビデオの空港に竹市社長の姿がありました。
社長自ら乗り込んだワケとは…
売れすぎて欠品になったので現地の方と話をしながらいいものを仕入れるようにできたら。
竹市社長、ウルグアイ訪問は試験輸入の時に続き2度目ですが本格的な視察と商談は実は今回が初めて。
ウルグアイではおよそ1,200万頭の牛が飼育されていて、人口350万の小国としては異例の頭数です。
どの家庭でも食卓にはほぼ毎日牛肉料理が並びます。
定番はアサードと呼ばれるまきを使った伝統的なバーベキュー。
僕たちは肉食動物だからたくさん肉を食べるんだ。
どこの家にもこの肉焼き釜があるよ。
国民一人当たりの牛肉の消費量はなんと日本人のおよそ6倍。
モンテビデオ市内の精肉店を訪ねるとなんとサーロインの1キロあたりの価格は1,100円と格安です。
Frigorifico Pando FMP.
[blogcard url="http://www.fmp.com.uy/"]
ブロンコビリーの竹市社長が最初に向かったのはウルグアイ有数の大手精肉卸売業者。
出迎えてくれたのは社長のエドゥアルド・ウルガルさん。
安定調達に向けて最大の交渉相手となります。
早速、提携の牧場を案内してくれました。
世界各地の牧場を回ってきた竹市社長も、
すごいな。広い。
この規模には驚いた様子。
どこまでがあなたの牧場?
緑色の牧草が見えるところ全部です。
ここでは牛1頭に対してサッカーコート2面分の牧草地がある計算。
トウモロコシなど穀物のエサはほぼ与えずに育てていました。
その分、アメリカ牛に比べるとおよそ2倍の34ヵ月間もかけて飼育されています。
牧草はとてつもなく安いよ。
ほぼ無料さ。自然に生えてくるからね。
安さの秘密を垣間見た竹市社長。
すると突然…
「いま食べた?」
食べました。
「どうでした?」
草です。
実は竹市社長が確認していたのは牧草の質。
オーストラリアとかだと草が枯れていることが必ずある。
ここは草が非常にいいので赤身がおいしくなる。
この青々した牧草が安さだけでなくうまさの秘密でもあることを確信したのです。
続いて案内されたのは精肉工場。
ここが薄いんですよ。この辺の肉付きが。
ほぼ草だけで育った牛はオーストラリア産牛やアメリカ産牛と比べてかなり小さめ。
身のつまりがいい。
硬いのではなくて。
こちらは同じ300グラムのサーロインを和牛、アメリカ産、オーストラリア産と比較したもの。
サイズが小さいのは一目瞭然ですが同じ300グラムで揃えると当然厚みが生まれます。
この厚みの分だけ肉汁が中にしっかりと閉じ込められるのだといいます。
ウルグアイ牛の可能性を改めて確信した竹市社長。
赤身がつまっている感があるのは飼育の日数が長いからなんだろうな。
やっぱり品質の差として出ている。
今後の取引拡大の思いを伝えようとすると…
すでにブロンコビリーのためにステーキ100万食分の牛肉を確保しました。
合計280トンを想定しています。
約束ですか?
今回、ブロンコビリーはステーキ1年分に相当するウルグアイ牛をこの工場から仕入れることで合意したのです。
翌日、竹市社長はある場所に招かれていました。
招待したのは日本の農水大臣にあたる農牧水産大臣です。
ぜひこれを受け取って欲しい。
ウルグアイ牛を日本に導入していただいたご尽力に対して。
ありがとうございます。
実はウルグアイの牛肉は口蹄疫の影響で日本や欧州への輸出が長い間できずにいました。
輸出解禁後、いち早く輸入したことで感謝の盾が贈られたのです。
ウルグアイ牛の安定調達に自信を深めた竹市社長。
今後はアルゼンチンなど別の産地にも目を向ける考えです。
直接話しをしながらいろんなことをわかってもらえた。
協力してもらえる良い関係性ができたのでは。
よりおいしいものを出せるように頑張っていきたい。