緑色で示したがん細胞を治療薬が破壊している様子を早送りした映像。赤色は細胞よりさらに小さいサイズの薬でがん細胞をプチプチとやっつけている映像です。
こうした医療技術は1ナノメートル、100万分の1ミリメートルという極めて小さな世界で行われていることからナノ医療と呼ばれ、世界中で研究が進められています。そのナノ医療の技術で世界をリードしようとする国内企業や自治体の取り組みを取材しました。
ナノ医療で世界をリードせよ!
まるで"ミクロの決死圏"の技術!
羽田空港の対岸にあるこちらの建物。川崎市にある、その名も「ナノ医療イノベーションセンター」。
企業や大学の10以上の研究機関が入居しています。
その一つが脳疾患の薬に関する研究を進めるブレイゾン・セラピューティクスです。
ブレイゾン・セラピューティクス
鰐渕文一社長

治療薬を"ナノ粒子"の小さいカプセルに包み、脳に届ける技術を実用化しようとしている。
カプセル状になったナノ粒子の大きさは30~50ナノメートル。この中に薬を閉じ込めることができます。
例えば人間の身長を地球の直径に置き換えてみると、ナノ粒子のカプセルの大きさはサッカーボールに相当。極めて小さいことがわかります。
そのナノ粒子を腕に注射すると血流を進んで脳に向かっていきます。
そして脳に到達すると脳血管の壁を通って薬が内部に届く。
まるでSF映画の「ミクロの決死圏」のような技術をこの会社は開発しているのです。
ブレイゾン・セラピューティクス
鰐渕文一社長

現在応用されている技術は脳に直接投与したり、脊髄と背骨の間の隙間に注射器で打ったりする方法で、やはり患者にも負担になる。
現在は脳の疾患にあったさまざまなナノ粒子の製造方法の検証や動物実験を実施。
ブレイゾン・セラピューティクス
鰐渕文一社長

数年以内には臨床試験を開始したい。
"シェアラボ"で川崎から世界へ
そして6月6日に同じイノベーションセンター内に新たな施設がオープンしました。
ナノ医療イノベーションセンター
島﨑眞さん

ひとつのラボを何社かでシェアする"シェアラボ"。
ナノ医療などライフサイエンス分野の研究開発を行うスタートアップ企業専門の共同オフィスと実験室です。
一定の入居料と使用料を支払うと施設にある実験設備を自由に使用することができます。
ナノ医療イノベーションセンター
島﨑眞さん

高価な分析装置がそろっている。例えばこちらの機械、質量分析計。
番組スタッフ
価格はどれぐらい?

ナノ医療イノベーションセンター
島﨑眞さん

値段は聞いたことないがかなり高い。
ちょうど億ぐらい、何千万円か。
さらにこちらは共焦点レーザー顕微鏡という特殊な電子顕微鏡。一般的な電子顕微鏡よりも長時間にわたって細胞などの動きを観察できますが価格は数億円するということです。
資金の余裕がないスタートアップ企業はこお施設を利用することで初期投資を抑えることができるのです。
ナノ医療イノベーションセンター
島﨑眞さん

起業したばかりのスタートアップが高価な機械を買いそろえるのはとてもじゃないができない。
ぜひこの研究環境、機械をうまく使って、新しいイノベーションを起こしてもらいたい。
さらにもう一つ、スタートアップを支援するために発表されたのがアメリカのバイオラボという会社との提携です。
バイオラボ
ヨハンネス・フルハーフCEO

私たちはこの川崎でともに世界の科学を魅了する"マグネット"のような存在になりたい。
バイオラボはこれまで230以上の企業の経営支援を行ってきました。
今後、アメリカなど海外の企業との橋渡しで日本のスタートアップをサポートしていく方針です。
バイオラボ
ヨハンネス・フルハーフCEO

日本の基礎科学は素晴らしいし、素晴らしい製薬会社もたくさんある。
しかし、日本にはスタートアップを育てるエコシステム(生態系)が欠けている。
そこを支援していきたい。
羽田空港に近いこの立地を活かし、川崎市は世界に通用する企業を排出したい考えです。
川崎市
福田市長

国内だけでなくて世界に発信していく。
ナノ技術を使った医療を川崎から創り出して世界に貢献していく。
川崎からやっていきたい。