日本銀行は10月31日、金融政策決定会合を開き、現状の金融緩和策の維持を発表するとともに足元の物価見通しを下降修正しました。
企業がモノの値段を上げることに慎重で賃金の上昇が鈍いことが背景のひとつだといいます。
物価上昇のカギを握るという賃金は今後上がっていくのでしょうか?
日本銀行
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10月31日、会見場に姿を見せた黒田東彦総裁。
長引く金融緩和策のリスクについて聞かれると、
大規模金融緩和をやらないで景気が悪くなって物価が下がったほうがいいとの考えなら別だが、そうでない以上は私どもは最も適切な金融緩和をしてきた。
珍しく語気を強めた黒田総裁。
物価上昇率2%への道は未だ開けていません。
日銀は10月31日、経済物価の情勢をまとめた「展望リポート」を公表しました。
2017年度 | 1.1% → 0.8% |
2018年度 | 1.5% → 1.4% |
足元の物価見通しを引き下げ、2017年度は1.1%から0.8%に、2018年度は1.5%から1.4%としました。
しかし長い目で見れば物価は上昇するとして「2019年度ごろ」としている2%の目標達成時期は維持しました。
何故なのでしょう?
企業の賃金・価格設定スタンスが積極化し中長期的な予想物価上昇率も上がる。
日銀は企業の積極的な賃上げに期待を寄せているのです。
果たして企業は賃上げに対してどのような姿勢を取っているのでしょうか?
三菱電機株式会社
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三菱電機は人手不足を補う工業用機器などの売上が伸び2017年4-9月期の純利益が過去最高の1,311億円に。
ソニー株式会社
[blogcard url="http://www.sony.jp/"]
ゲーム機やスマートフォン部品の販売が好調なソニーは2018年通気の営業利益を6,300億円に上方修正し、20年ぶりの過去最高益を予想するなど各社好調な決算が相次いでいます。
吉田憲一郎副社長は、
ソニーの場合、世間一般でいうベアではなく、社員の役割と実績に応じ賃金の改定を実施。
賃上げ要求
企業に賃上げを要求しているのは日銀だけではありません。
安倍晋三総理が2018年の春闘で「3%の賃上げが実現できるように期待する」と表明。
これに対し経済界からは厳しい声も…。
経済同友会の小林喜光代表幹事は、
ベースアップやボーナスを含め、今まで2.1%、2.2%だから3%はかなり高い目標だと思う。
さらに連合が求める2%のベアについても難色を示しました。
連合の2%も高い。無理だろう。
企業が思い切った賃上げに踏み切れない中、企業の景気状況をよく知る日銀の黒田総裁は強気です。
企業収益は過去最高水準で推移しているほか、労働需給が一段と引き締まっているので賃金上昇圧力は着実に高まっている。
ヤマトホールディングス株式会社
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人手不足に悩まされているヤマトホールディングスは社員の賃金について聞くと、芝﨑健一専務執行役員は、
実質的には労働時間に対しての給料は上がっていく。ベアはそれとは別に労働組合との交渉になる。
「今の水準より上がるか?」
正社員に対して時給という考え方ではないがベースでみた場合は上がっていく。
実質的な賃上げに言及したヤマト。
10月31日に発表した決算では宅急便の運賃を値上げしたものの純利益の通気見通しに変更はありませんでした。
今後、AI(人工知能)を活用した配送サービスの他、自動運転による物流サービスを検討するなど経営を改革し中期的な成長を目指しています。
賃上げスタンスが積極化
「企業の賃上げスタンスが積極化するためにはこれから先、何が必要か?」
黒田総裁は、
将来の成長予測がしっかりしていれば設備投資もするし、人も雇うし、価格も上げていけるので賃金も上げようという気になるでしょう。