歴史的な円安の中、10月28日に開かれた日銀の金融政策決定会合。大規模な金融緩和の維持を決めた後の黒田総裁の会見で金融政策の先行きの他に注目を集めたのが物価の見通しでした。一体なぜなのでしょうか。
日銀 金融緩和策を維持
続ける背景は"一時的な物価高騰"
記者会見に臨んだ日銀の黒田総裁。
日銀
黒田総裁

金融緩和策を現状維持とすることを全員一致で決定した。
今すぐ金利引き上げとか金融緩和策の出口が来るとは考えていない。
早期の利上げを改めて否定。この姿勢に為替市場では…
長江優子記者

黒田総裁の会見が先程終わりました。円相場はじわりと円安が進み147円台をつけています。
記者会見前、146円40銭台だった円相場は147円台に。円安ドル高が進みました。
こうした相場におよそ3億円を投資する個人投資家は…
個人投資家
JINさん

147円にいった。すごい、また150円にいくのかな。
年明け以降、一方的に進む円安ドル高に警戒を強めています。
もうひとつ注目を集めたのが10月28日に日銀が示した物価の見通し。円安もあり物価が高騰しています。
消費者物価指数は9月、1年前と比べて3.0%の上昇と日銀が目標とする2%を上回っています。
また東京都区部の消費者物価指数はおよそ40年ぶりの高い伸びに。円安が加速させた資源高に電気料金や食品など幅広く値上げが進んでいるためです。
そのため日銀は10月28日に今年度の物価上昇見通しをプラス2.9%に上方修正しました。
一方、23年度と24年度は資源高が落ち着くことで1.6%にとどまると予測。
黒田総裁は金融緩和を維持することが必要だと主張したのです。
日銀
黒田総裁

年明け以降は海外からのコストプッシュ要因の押し上げ寄与が減衰していくため消費者物価の前年比は来年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくと考えている。
日銀 金融緩和策を維持
物価上昇いつまで?
来年4月以降、物価の上昇率が縮小するとみる黒田総裁ですが企業はどう対応するのでしょうか。
東京・目黒区のドン・キホーテを訪ねると、店頭には「世の中の値上げに負けてたまるか!!」の文字が…
メーカーによる値上げが相次ぐ食用油やマヨネーズ、トイレットペーパーなど食品や日用品、201品目の価格を来月中旬まで据え置くというのです。
お客さん

高くなると言われると、その商品を買い込む。
ただ、キャンペーン終了後も価格の据え置きを続けるかどうかは決まっていません。
パン・パシフィック・インターナショナルHD
初山俊也上席執行役員

競合他社も見ているから、価格に反映するかしないかはギリギリまで見定めている。
一方、埼玉の所沢駅に2024年に開業する商業施設の起工式を開いた西武ホールディングス。
後藤社長は原油高を念頭に商品やサービスの価格を引き上げる必要性を訴えました。
西武ホールディングス
後藤高志社長

原材料価格に見合った価格引き上げはやっていかないといけない。
10月28日に決算を発表した日立製作所。
日立製作所
河村芳彦副社長

まだ半分ほど価格転嫁が難しい状況にある。
日銀の物価見通しについて専門家は…
東短リサーチ
加藤出社長

多くの企業は卸売りのコスト上昇を消費者に転嫁できていない。
ゆっくりと転嫁しようとしている状況なので、日本銀行のイメージよりも物価の下がり方のペースは遅い可能性がある。
9月の消費者物価指数が1年前に比べ3%上昇しているのに対し、企業同士が取引する商品の価格を示す企業物価指数は9.7%上昇。企業による価格転嫁が進めば日銀の想定を超える可能性があるというのです。
日銀の黒田総裁は…
大江麻理子キャスター
来年度の物価見通しは1.6%。賃上げが進んでも2%は難しいのか?

日銀
黒田総裁

賃金や物価が今考えられている以上に上昇することもあり得ると思うが、来年度も2%を安定的に達成できる状況にはならないのではないか。