中国だけでなく日本などに対してもトランプ大統領は貿易交渉を求めています。
そのトランプ氏、各国との交渉で強力なカードに位置づけているのが輸入自動車や部品への追加関税です。
その中でも今回、WBSが注目したのがアメリカ南部、サウスカロライナ州にあるBMWの自動車工場です。
BMWにとって世界最大の工場でここで生産された車の多くを中国やEUなどに輸出しています。
自動車関税に揺れる現場を取材しました。
BMW
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アメリカ南部、サウスカロライナ州にあるスパータンバーグ。
この街の経済を支えているのは自動車産業です。
郊外に車を走らせると見えて来たのはドイツの自動車大手BMWのエンブレム。
BMWにとって世界最大の生産規模を誇るアメリカ工場です。
広さは東京ドーム14個分、およそ1万人を雇用しています。
2017年はSUVの高級車「Xシリーズ」をおよそ37万台生産。そのうち6割のおよそ23万台を中国やヨーロッパなどに輸出しました。
BMWはいまやBIG3を抜いてアメリカから最も多くの自動車を輸出しているメーカーです。
しかしいま岐路に立っています。
トランプ大統領、
EUから輸入される全ての車に25%の関税をかけていく。
トランプ政権がアメリカに輸入される自動車や部品を対象に最大25%の追加関税を検討しているからです。
ドラクスルマイヤー社
BMWに自動車部品を納入しているメーカー。
材料の調達などを担当しているヴォーゲルさんは自動車関税に強い懸念を抱いたいます。
アメリカ担当購買部長のチップ・ヴォーゲル氏は、
どの程度かは分からないが関税の影響は必ずあるだろう。
この工場ではおよそ800人を雇用。
主にBMWの車の内装や電子部品の製造しています。
この日作っていたのはSUVに組み込むセンターコンソールです。
組み立てる前の部品を見せてもらうと、
この部品はメキシコで作られて、ここに送られてくる。
部品の多くはメキシコのほか、中国やEUなどから輸入しています。
自動車関税が発動されれば対象となった国から輸入した部品にも高い関税がかかり製造コストが高騰してしまうのです。
自動車関税が発動されれば、そのコストをBMWに負担してほしい。
そして車の生産が止まれば私たちも生産を止めないといけない。
デビッド・ブリット氏
すでにBMWは中国による報復関税により中国国内での販売価格を引き上げるをおえないなど打撃を受けています。
こうした中でさらに自動車関税が発動された場合、スパータンバーグでの生産体制を見直す可能性に言及しています。
スパータンバーグの郡議会議員を務めるデビッド・ブリットさん。
1990年代、繊維産業が衰退したこの街でBMWの工場を誘致した人物です。
BMWを誘致するため5つの州で競った。
誘致成功後はスパータンバーグと州全体にとって恩恵しかない。
鉄筋コンクリートの建材メーカーの経営幹部でもあるブリットさん。
この日つくっていたのもBMWの関連工場向けの建材でした。
この工場だけでも500人の従業員がいる。関税が上がり生産が減少すれば全従業員の生活が影響を受ける。
ブリットさんは自動車関税が発動されBMWが生産体制の見直しに動けば街の経済は再び低迷してしまうと危機感を強めています。
私は共和党員でトランプ大統領に投票したが自由貿易を支持し関税には反対だ。
トランプ大統領は間違っている。
セバスチャン・ゴルカ元大統領副補佐官
こうした反対論をよそにトランプ大統領は自動車関税の発動を辞さない構えを崩していません。
その本気度とは?
トランプ氏に近い保守強硬派のセバスチャン・ゴルカ元大統領副補佐官はテレビ東京の単独取材に応じました。
自動車関税はジョークではなく大統領は本気だ。
この30年間、貿易不均衡が続いていることを懸念している。
さらにボルカ氏は日本を含めた同盟国に対しても通商交渉で譲歩しなければ自動車関税を発動する可能性があるとの見方を示しました。
EUはアメリカからの輸入車に4倍もの関税をかけている。
真の友人はそんなことをするだろうか?
それは大統領がやることではなく大統領は是正を求めている。
国内に反対論を抱えつつ自動車関税を交渉カードとして持ち続けるトランプ大統領。
発動を巡る駆け引きは今後、さらに激しくなりそうです。