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[WBS]バイデン大統領来日!首脳会談で台湾防衛明言

2022年5月23日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

5月23日午後7時すぎ、東京・港区白金の住宅街は住民や警察などが集まり騒然とした雰囲気に。

田中瞳キャスター

いまバイデン大統領が乗る車が見えました。岸田総理が待つ八芳園に向かいます。

予定より1時間以上遅れて八芳園に到着したアメリカのバイデン大統領。岸田総理大臣と着物姿の裕子夫人が迎えます。

1時間半ほど夕食をともにした両首脳。

厳戒態勢が敷かれた5月23日の東京。

バイデン大統領が最初に向かったのは皇居です。御所では天皇陛下がバイデン大統領を迎えられました。

萩原由佳記者

午前10時45分、バイデン大統領を乗せたとみられる車が迎賓館に到着しました。

その後、元赤坂の迎賓館で岸田総理と会談します。

岸田総理

日米で「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて国際社会をリードしていきたい。

アメリカ
バイデン大統領

日米同盟は長きにわたってインド太平洋の平和と繁栄の礎となっている。

公開されたのは冒頭のみ。会談は2時間にわたって行われました。

そして…

岸田総理

米国大統領として初めての訪日。うれしく思う。
ジョー Welcome to Japan(ようこそ日本へ)。

アメリカ
バイデン大統領

総理、あたたかい歓迎ありがとうございます。

岸田総理

私からは日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明し、バイデン大統領からはこれに対する強い支持をいただいた。

アジア太平洋地域で軍事力を急拡大させる中国。その中国に対して日米両首脳はこれまでにないほど影響力拡大を阻止する姿勢を鮮明にしました。

そして注目が集まったのはバイデン大統領のこの発言です。

記者

台湾有事があった場合、軍事的に関与する気はあるか?

アメリカ
バイデン大統領

Yes.

記者

本当か?

アメリカ
バイデン大統領

それがわれわれの約束だ。

アメリカ バイデン大統領!台湾有事で軍事関与 反発も…

岸田総理大臣と来日しているアメリカのバイデン大統領は5月23日に就任後初めてとなる本格的な対面での首脳会談に臨みました。

この共同会見では続々と注目発言が飛び出しました。

例えば来年のG7サミット(首脳7ヵ国の会議)の広島での開催について、また日本の国連安全保障理事会の常任理事国入りに向けてアメリカが支持を表明したこと、さらにCDC(アメリカ疾病対策センター)の地域オフィスを日本に開設すること、さらには日本の防衛費の相当な増額を確保すると岸田総理が表明した、こういうこともありました。

そして今回、番組が特に注目したのが2つのテーマです。台湾防衛とアメリカ主導の新たな経済圏構想であるIPEF(インド太平洋経済枠組み)についてです。

まずはバイデン大統領が中国が台湾を攻撃した場合の軍事的関与を明言した台湾防衛についてです。

バイデン大統領の発言に台湾外交部が関係を感謝の意を表明する一方、中国は強く反発するなど早速波紋が広がっています。

バイデン氏「台湾防衛」に「Yes」!岸田総理「防衛費相当な増額」

山口博之記者

都内にある在日米軍の横田基地です。アメリカ空軍の戦闘機が並んでいます。
今日は基地を一般の人にも開放するフレンドシップフェスティバルというものが開かれるということでアジアの安全保障上の脅威に対応する多くの軍用機が展示されています。
オスプレイ、輸送機のC130Jの姿もあります。

週末に開かれた日米友好祭。

オスプレイには行列です。

訪れた人は11万人の上りました。

在日アメリカ軍の司令部が置かれる横田基地。その役割について在日米軍の幹部は…

横田基地に拠点を持つ補給部隊
キャンベル司令官

日米両部隊のリーダーのパートナーシップは非常に緊密だ。
横田基地は重要な空輸拠点であり、われわれは「自由で開かれたインド太平洋」を維持するための重要な役割を果たし続けている。
日本政府と日米同盟に感謝している。

日米同盟を象徴する基地に降り立ったバイデン大統領。5月23日の共同記者会見では踏み込んだ発言をしました。

記者

ウクライナへの軍事的関与はしたくないのに台湾に対しては関わるのか?

アメリカ
バイデン大統領

Yes.

記者

本当か?

アメリカ
バイデン大統領

その決意をわれわれは示している。
アメリカは「ひとつの中国」政策に同意しているが、中国が台湾を武力で奪えるという考えは適切ではない。

これまでアメリカは中国が台湾に侵攻した場合の対応をあらかじめ明確にしないいわばあいまい戦略を取ってきました。

ただ去年の日米首脳会談では共同声明で台湾海峡の平和と安定の重要性を明記。首脳間の文書で台湾が記されるのはおよそ半世紀ぶりのことでした。

そして5月23日のバイデン大統領の発言は中国と台湾に関する外交政策の変更ではないとしながらもさらに踏み込んだものとして受け止められたかたちです。

台湾の外交部は即座に反応。「台湾を守るとの確固たる約束を再確認した」と高く評価し、心からの歓迎と感謝を表明しました。

一方、台湾市民の反応は…

台北市民

台湾民衆はバイデン大統領が介入すると言ったのに対し安心している。
武器を提供するのか兵隊を送ってくるのか判断が難しい。

日米首脳会談で意見が交わされた台湾有事。台湾の情報機関のトップは日本の安全保障にも直結する事態だと指摘します。

台湾
陳明通国家安全局長

中国の「完全統一」とは台湾を攻め込むことに留まらず、釣魚島(沖縄県尖閣諸島)も含まれるため日本への直接的な脅威だ。
日本は中国、ロシア、北朝鮮という核保有国からの脅威にさらされており、日本は当事者であって傍観者ではない。

こうした脅威に岸田総理は…

岸田総理

力による一方的な現状変更の試みはいかなる場所であれ断じて許容できない。
日本の防衛力を強化し、その裏付けとなる防衛費の増額を確保する決意を表明し、バイデン大統領からはこれに対する強い支持をいただいた。

防衛費の拡充を明言したほか、いわゆる反撃能力も含めて選択肢を排除しないと強調しました。

また岸田総理は武力侵略や核兵器による威嚇について断固拒否するという姿勢を示すため来年の先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)を被爆都市の広島で開催することを表明。

国連改革をめぐっては日本の常任理事国入りに対してバイデン大統領から支持を取り付けました。

中国をけん制した両首脳の共同記者会見。

現実的な脅威に直面する時期はいつなのか、大学で中国の歴史などを専攻し、外交官として北京に駐在した経験を持つオーストラリアのケビン・ラッド元首相は次のように分析します。

オーストラリア
ラッド元首脳

台湾をめぐる問題に対する中国の計画は長期的で軍事行動は2020年代後半から2030年代前半になるとみられる。
中国は欧米の経済制裁によって経済が機能不全にならないように金融・経済の弾力性や独立性、自立性の水準を満たす対策に取り組んでいる。

各国の思惑は?

今回はこの台湾防衛、日本の安全保障について現場に取材をする記者に中継で話を聞いていきます。

まずは官邸キャップの篠原さんに話を聞きます。

日本 防衛費増額の狙いは?

岸田総理はバイデン大統領に対して日本の防衛力を抜本的に強化するその裏付けとして防衛費を相当に増額するという決意を伝えました。この背景には何があったのでしょうか。

官邸キャップ
篠原裕明記者

通常は日米首脳会談というと日米間の経済問題が語られることが多いのですが、今回は安全保障に関わるまさに政治的な議題が中心となりました。
会談では日米同盟の根幹である敵の国が日本を攻撃する場合にはアメリカは核戦力などで報復する意思を示して日本への攻撃を思いとどませる拡大抑止をさらに強化する方針が確認されました。その上で今回、岸田総理がバイデン大統領に対して日本の防衛費の大幅な増額に言及した背景について日本政府関係者は「ウクライナは大統領が最後まで残って戦った。有事に自ら戦う意欲を示さないと世界は助けてくれない、防衛力の強化が必要だ。」と話しています。

日本の防衛費は従来GDP(国内総生産)の1%以内というめどでしたが、去年の自民党総裁選では防衛費の増額が論点の一つとなりました。

岸田総理はその後の衆議院選挙で防衛費についてNATO(北大西洋条約機構)の加盟国が目標としている「GDP比2%以上も念頭」という公約を掲げて戦いました。防衛費は今年度予算ではGDP比0.95%の5兆4,005億円ですが、すでに自民党の茂木幹事長は来年度予算では6兆円台半ばを確保したいと述べてGDP比1%以内というめどを超える数字に言及しています。

政府は防衛費を増額してその先にはどういう道筋を描いているのでしょう。

官邸キャップ
篠原裕明記者

政府与党は敵の国内にあるミサイルの発射拠点を攻撃する、打撃するいわゆる反撃能力の保有を検討しています。

岸田総理も5月23日の首脳会談後の会見でいわゆる反撃能力も含めて選択肢を排除しないと述べていますし、官邸の関係者の中にはもっと率直に東アジアの情勢を見ればミサイル配備も日本も考えないといけないとはっきり話す人もいます。

自民党内では政治や安全保障関係の安定がなければ経済の安定はないとして防衛費の増額論は好感されていますが、平和の理念の重視する公明党はGDP比2%の防衛費の増額目標には慎重な姿勢をみせていて、国内的には簡単に進むかは見通せません。

過去にも発言で火消し 意図的か

続いてはバイデン大統領の来日に同行しているワシントン支局の中村記者に聞きます。アメリカのバイデン大統領、中国が台湾を攻撃した場合の軍事的な関与についても言及しましたが、ここまで踏み込んだ発言をした真意はどこにあるのでしょうか。

ワシントン支局
中村寛人記者

バイデン大統領が宿泊しているホテルの前に来ていますが、この時間でも多くの警察官が警戒警備にあたっています。
今回の発言ですが、実は去年の8月にも同様の発言をして、直後にホワイトハウスが釈明をした経緯があり、今回も意図的に間違えたのかどうか疑問が残ります。
またバイデン大統領は今回のアジア歴訪を経済安全保障の両面で中国に対抗する姿勢を示す絶好の機会を捕らえています。

実は現職のアメリカ大統領が初来日の際に中国を訪れないのはここ20年では初めてというところにもそのメッセージが現れていますが、アメリカはインド太平洋の戦略について、中国を帰ることではないとし、タイ中国政策を進める上で同盟国や友好国と協力して有利な環境を作ることを目指しています。

こうした意味でもバイデン大統領がまず韓国を訪問したのにも東アジアにおける対中国政策の中核としたい日本と韓国の関係改善が急務と考えているからです。

5月24日には日本、アメリカ、オーストラリア、インドというこの4ヵ国、Quad(クアッド)の首脳会合が開催されます。アメリカ側にはどのような狙いがあるのでしょうか。

ワシントン支局
中村寛人記者

ここでもアメリカとしては経済や軍事の面で影響力を高める中国への包囲網を固めていきたい考えです。

オーストラリアでおよそ9年前に政権を担ったラッド元首脳はテレビ東京の取材に対し、今回のクワッドはアメリカが中国への対抗を目的としたIPEF(インド太平洋経済枠組み)について議論を進める場になるのではないかと指摘しています。

オーストラリア
ラッド元首脳

「クワッド」首脳会議はインド太平洋経済枠組みと具体的な施策の展開のために利用される可能性がある。
インド太平洋地域や中国との関係におけるアメリカの戦略には欠けている部分があるからだ。

アメリカの政府高官はIPEFについてインド太平洋でアメリカの経済的リーダーシップを回復する重要な転機になるとその意義を強調しています。

中国"武力介入"発言に強く反発

そして続いては北京にいる佐藤記者に話を聞いていきます。

中国政府は今回のバイデン大統領の発言にどう反応しているのでしょうか。

北京支局
佐藤真人記者

中国政府はアメリカに対して警戒感をあらわにしています。
台湾を中国の領土であり内政問題だとする中国政府は今回のバイデン大統領の発言に対して語気を強めて反論しました。

中国外務省
汪文斌報道官

国家主権と領土を堅く守る中国国民の決心と意思、強大な能力を見くびるな。
14億人の中国国民の対立側に立つな。
中国は自らの主権と安全の利益を守るために必ず行動する。
われわれは言ったことは必ず実行する。

経験では国営メディアの記者の質問に対して普段滅多に使わないスクリーンを使いながら答えていました。

バイデン大統領の発言など現在のアメリカ政府の姿勢が一つの中国の原則からいかに逸脱しているかを力説する様子は必至さすら感じさせました。

バイデン大統領が台湾海峡で武力衝突が起きた際の軍事的な関与について発言したことは中国で権威ある夜7時のニュース番組でも伝えられておらず、中国側にとっては衝撃が大きかったとみられます。

米中の通商摩擦などこれまでの米中間の懸案を解決するのは難しいとしても、日本と韓国という隣の国に来ておいて中国には立ち寄らない、いわば素通りをされたかたちの上、ウクライナがロシアに攻められたときと同様にアメリカは身体を張って台湾を軍事的に助けないのではないかという台湾に存在した悲観論を打ち消す形になったバイデン大統領の訪日は中国の不満をさらに高めるものとなりました。

"半導体"供給網も…!中国に対抗IPEF13ヵ国参加

そしてバイデン大統領の来日でもうひとつ大きな動きがありました。それが5月23日に発足を宣言した新たな経済圏構想であるIPEF(インド太平洋経済枠組み)です。日本、アメリカのほか、韓国やインドなど合わせて13ヵ国が参加を表明しています。インド太平洋地域の経済でも存在感を増している中国に対抗する狙いがあるのですが一体どのようなものになるのでしょうか。

アメリアカ主導経済圏IPEF発足!"半導体不足"解消に繋がる?

5月23日午後にアメリカのバイデン政権が提唱する経済圏構想「IPEF(インド太平洋経済枠組み)」の発足会合が開かれました。

アメリカ
バイデン大統領

21世紀の経済はインド太平洋地域が中心になっていく。

この枠組みはアメリカにとってアジア地域で中国に対抗する経済圏を作る狙いがあります。

発足メンバーには日米のほか、韓国やインドなど13ヵ国が名を連ねました。

対象となる分野はデジタルを含む貿易や供給網の強靭化などの4つで参加国による共通のルールを作る考えです。

なかでも供給網については世界中で不足している半導体などへの対策が喫緊の課題となっています。

田中瞳キャスター

いまも半導体不足が続いているという現場を見てきます。

田中キャスターが訪ねたのはガスコンロや給湯器などの設備をネットで注文できる「交換できるくん」の横浜倉庫です。

早速、案内してもらうと…

交換できるくん
池田順一執行役員

半年前や3ヵ月前にお客様から注文をもらってメーカーから当社に納品された商品。

在庫はたくさんあるように見えますが、これらはお客さんが3ヵ月以上前に注文した商品。半導体不足やコロナによるロックダウンの影響で入荷が遅れていたといいます。

ただこれらも1週間以内にお客さんに届けられ、在庫は全てなくなるといいます。

交換できるくん
池田順一執行役員

メーカーの情報だと今年来年とまだ状況は続きそうだと言われているので先の見通しは分からない。

さらに入荷が遅れる商品も増加。去年末は給湯器でしたが、いまは高機能のガスコンロや食洗機などに拡大。

お客さんに届けられていない受注額の合計は7億円以上に上ります。

この会社で去年、ガスコンロを注文したお客さんは…

ガスコンロを注文した
小杉智さん

当初少なく見積もって3~4ヵ月くらいかかるだろうと言われていた。
実態は半年ぐらいかかった。

家電や住宅設備に欠かせない半導体ですが、2030年になると生産能力では中国が世界トップになるという見通しもあります。米中対立の激化や台湾周辺の緊張感が高まれば半導体の確保に大きな壁となります。

そして5月23日。

岸田総理

最先端半導体の開発を含む経済安全保障分野の協力や宇宙などに関する具体的な協力でも一致できた。

今後、日本とアメリカは次世代半導体の研究開発や半導体の供給不足への対応で協力。IPEFでも加盟国と連携することで半導体の供給網の強化を狙います。

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