大学に通うために借りている人が多い奨学金。最近ではその奨学金を返済できずに延滞したことがあるという人は日本国内で約33万人に上るといいます。
同様にアメリカでも大学の学費の高騰により学生の多くが借金をしなければ進学できない事態となっています。
その中でいま、学費無料の大学が人気を集めています。
私立ベレア大学
[blogcard url="https://www.berea.edu/"]
アメリカ中東部に位置するケンタッキー州ベレア市。人口約1万5,000人の小さな町です。
ここにある私立ベレア大学は州で一番の難関校。
いま、ある理由で全米から注目を集めています。
それは約1,600人の学生、全ての学費が無料。その代わり学生は「あること」をしなくてはいけません。
その「あることと」は、ビクトリア・ライヘルトさん(2年生)によると、
いい機会だし、とても助かっているわ。
学費免除の仕組み
ブーン・タバーン・ホテルは大学が所有するホテル。
ビクトリア・ライヘルトさん、ホテルのベル係に早変わり。
週10時間ほど働く代わりに4年間の学費、1,000万円相当が完全に免除されるのです。
以前は別の大学に通っていましたが学費が高すぎて、こちらに編入しました。
アメリカでは今、大学の学費が高騰し多くの学生が借金をしなければ大学に行けない事態になっています。
学生ローン残高は右肩上がりで日本円にして155兆円以上。このままでは若者の消費を抑制しかねず、アメリカ経済に打撃だと2016年の大統領選でも問題になりました。
ヒラリー・クリントン元国務長官は、
アメリカの若者やその家族の負担になっている。学生ローン問題に取り組むことを約束する。
ベレア大学でジャーナリズムを学ぶディラン・バザーさん(4年生)。父子家庭のため学費免除の仕組みがなければ進学を諦めていたといいます。
大きな負担を背負わずに済み本当に良かった。お陰で妹も大学に進学できます。
経営の仕組み
一方、ベレア大学は学費収入がなくても経営ができるよう独自の仕組みを作り上げてきました。
カフェも大学が所有しています。接客も学生、パンを作るのも全て学生の仕事。
時給として5ドルほど貰えます。
広大な畜産農場も大学の所有。授業の合間を縫って学生たちは交代で牛や豚、鶏などの世話をして、大学はその肉を販売して収入を得ているのです。
教育学部だけど動物が好きだから、ここで働きたかったんです。
大学が所有する施設はホテルやレストランのほか、農園や森林まで10以上に上ります。
さらにこの仕組み、街の活性化にも一役買っています。
工房では学生が手作りの椅子やホウキなどを制作。それらはベレア大学ブランドとして人気となり街に観光客を呼び込んでいました。
隣の州から来た観光客は、
わざわざ来るまでやって来たの。ここの製品は良いし、他にはないわ。
大学側は受け入れる学生数を増やしていますが入学希望者の急増に追いつかないといいます。
ライル・ロウロフス学長は、
ローン問題を抱える学生は全米にたくさんいます。このやり方が解決策になるなら全米に「ベレア大学」が必要です。
果たして今後、アメリカの学生ローン問題を解決する糸口となるのでしょうか?
学生ローン問題
18歳以上のアメリカ人のうち学生ローンを抱えている人の割合は約6人に1人で、その数は4,420万人。
すでに学生ローン残高は住宅ローンに次ぐ規模になっていて、アメリカの中央銀行にあたるFRBの幹部なども学生ローン問題は将来的にアメリカの消費や経済に悪影響を及ぼすと警告を発しています。