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[ガイアの夜明け] 家電で「究極の味」をつくる!新たな炊飯器・コーヒーメーカー(1)

2017年1月31日

家電で「究極の味」をつくる!~新たな炊飯器・コーヒーメーカー~

蔦屋家電

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東京・二子玉川。駅に直結したショッピングモール内にある蔦屋家電。

機能性やデザイン性を重視し選りすぐった商品だけを取り扱っています。

例えばクローゼットに見える家電。ハンガーが振動し数十分間吊るしておくだけで埃や臭いがとれます。さらにタンクに水を入れれば蒸気が出てシワも伸びます。いま日本で売っているのはここだけです。

博物館のような、新しいものの。見ているだけで楽しい。

おしゃれな感じだねと言いながら来た。

売り場に並べる商品は社内独自の厳しい審査に合格したものだけです。

その中でも大ヒットした商品のひとつがこのトースター。

水を入れ水蒸気を発生させて焼く、というこれまでにない斬新な発想でパンを焼きあげます。累計20万台を売り上げました。

ふっくら焼けるのが特徴です。

このトースターを作ったのがバルミューダ株式会社という家電ベンチャーです。これまで数々のユニークなヒット商品を生み出してきました。

蔦屋家電の木崎大佑さんは、

逆転の発想でつくられるのはすごく魅力的で面白い。スタッフはみんな楽しみにしている。バルミューダの商品を。

そのバルミューダ株式会社が次に手掛けるのは「炊飯器」。

バルミューダ株式会社

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バルミューダ株式会社の本社。今回、寺尾玄社長から炊飯器の開発を任されたのが唐澤明人さん(37歳)。普段はソフトウェアの開発をするエンジニアです。

家電を一から作るのはこれが初めて。

今まで確立されていた炊飯器がいいのか疑って始めた。

どんな方法で炊けば美味しいのか。唐澤明人さんは装置を自ら作りあらゆる方法を試しました。

例えばこんなものも、

上からヒーターで焼く。コメと水が下にあって上からすごい熱を加えたらどうなるか。

「どうでしたか?」

全然ダメ、炊けない。炊けないし、臭い。

こんなものも試しました。

今の炊飯器の一番売りにしているのが大火力。大火力が本当に必要ならケトルで炊くのが一番うまいと思った。

まさかの発想。結果は、

下は真っ黒に焦げて上は炊けていない。泡はものすごく出て吹き出した。

炊飯器をつくる経験もノウハウもない唐澤明人さん。開発への道はとんでもない失敗の連続でした。

新たな発想で究極の味を生み出す家電。開発にかける男たちの挑戦を追いました。

ビックカメラ

東京・有楽町にあるビックカメラ有楽町店。炊飯器の売場には100種類近くの商品が並んでいます。

開発競争は熾烈でそれぞれが消費者の目を引く特徴を打ち出しています。

中でも多いのが「ふっくら」や「もちもち」をアピールした商品です。今や強い火力でコメを躍らせるように炊くというのが流行りのようです。

中には10万円を超える炊飯器もあります。

かまどで炊いたような「ふっくら・もちもち」が主流。保温は24時間どのメーカーもできるが中には40時間できる炊飯器もある。

水蒸気でコメを蒸す

2016年7月のバルミューダ株式会社本社。

炊飯器の開発担当者、唐澤明人さん。さまざまな実験を繰り返していました。

そして辿り着いた方法があります。それは、

圧力鍋でお湯を沸かすと蒸気だけがすごい勢いで出て、その蒸気で水とコメを温める。

水蒸気でコメを蒸す」、今の主流とは全く違う方法です。

その特徴は内釜と外釜の二重構造にあります。まず外釜を本体にセットし水を入れます。次にコメと水を入れた内釜を外釜の中にセットします。外釜を加熱すると蒸気が発生し内釜を熱します。コメは内釜の熱に加え上からの蒸気によって徐々に炊き上がります。

従来の方法は水を沸騰させコメを炊きますが、その際にコメの成分が溶け出し泡になります。

しかし新しい方法だと水が沸騰せず泡は出ません。

水が沸騰するとコメが動き、コメ同士がぶつかります。するとコメの表面が削れ中の成分が溶け出すといいます。

しかし新しい方法だとコメは動かず表面はほとんど削られません。

電子顕微鏡を使って2つを比べてみます。すると蒸したご飯はカタチが崩れていません。唐澤明人さんはこの粒に旨味が閉じ込められ食感も新しくなると考えました。

形状を保ってポロポロほぐれる感じがあるが、中までストレスがなく噛める。ちょうどいい硬さがあって、そういう食感が新しいと思う。

しかし、今までの常識とは全く違う方法で炊き上げたご飯。一体どう評価されるのか?

早速、社内で試食してもらいます。比べるのはいま売れている他社製品で炊いた「ふっくら・もちもち」のご飯です。

お願いします。

まずは「ふっくら・もちもち」のご飯です。

続いて唐澤明人さんが開発した新しい食感のご飯。

寺尾玄社長は、

いい感じの差がついている。

まずまずの評価です。

しかし寺尾玄社長からさらなる注文が、

ここを基準にして、これから何をするのですか、という話。もっとうまくする。

新たな課題を突き付けられます。

唐澤明人さん

それにしても寺尾玄社長、この大事なプロジェクトになぜ唐澤明人さんを抜擢したのでしょうか?

新しい価値をつくろうとするとき、どれくらい常識に縛られないで自由に発想していくかがとても大事。例えばモーターの動きを伝えるギアに問題があったとき、普通の人はギアを変えようとする。唐澤はそもそもこのギアをなくすことができないかを考えられる。

唐澤明人さんは大学卒業後、長年派遣のプログラマーとしてさまざまな企業で働いてきました。契約が終わると海外に出掛け、また派遣社員として働く。という繰り返し。

しかし1から商品の開発に関わりたいと5年前にバルミューダ株式会社に入社しました。

できるかどうか最初は分からないので、危ない橋を渡る感じではあるが、社長がチャレンジする人なので、そこは恐れずにやれる。

温度

唐澤明人さん、開発スタッフとともにさらなる味の追求を始めました。

もう少し試したい。温度を。

開発の鍵は温度。唐澤明人さんが手にしたのは釜に熱を伝えるためのヒーター。

このヒーターの出力を制御することでご飯の味が決まります。釜や内蓋などさまざまな場所に温度センサーをつけて最適な温度を探っていこうというのです。

そのためには温度の設定を変えながら炊くしかありません。

温度を5度ずつ上げ下げしてデータを取っている。

データをひとつ取るごとに自ら試食。多い時は1ヶ月で300回も炊いたといいます。

すると唐澤明人さん、突然外に行きます。

ずっと食べているので嫌になって、嫌になると何を炊いてもおいしくなくなる。逆に昼は「まるごとバナナ」や甘いパンのようなものを食べている。本当はダメですかね。それでも食べ続けられるくらい、うまくないと。

こうしてご飯を食べ続けた唐澤明人さん、ついに理想の温度設定に辿り着きました。

いま主流の炊飯器は20分頃から温度が急激に上昇、一方、バルミューダ株式会社の炊飯器は30分頃から一気に上昇しますが炊き上がりまで100度は超えていません。

さらに普通の炊飯器では当たり前の機能をあえて付けませんでした。

保温性能を突き詰めていくのか、おいしいご飯を炊いて「その時に食べてもらう」と割り切るか。「保温はいらない」という考えがあったので、それはカットした。

デザインは羽釜を意識したシンプルなモノに決定。機能もシンプル。炊飯だけで勝負します。

古澤勝康さん

10月下旬、熊本県南阿蘇村。最新の試作機を持って唐澤明人さんがやって来ました。

この時期に収穫をしている米農家を探して来ました。

40年、米農家を営む古澤勝康さん(63歳)。

唐澤明人さんはとれたての新米を炊いてコメのプロに感想を聞いてみたいといいます。

取り出した炊飯器にはあの温度曲線が組み込まれています。

一粒一粒が元気ね。

うまく炊き上がったようです。そして味は?

噛めば噛むほど味が出てくる。

冷えてもいいってことね。

冷えた時の方がより差が出る。

これで発売に向けて自信が持てました。

台湾・台中市

ところが唐澤明人さん、なぜが表情が冴えません。

もっとパラパラした感じが理想としてあるが、それが安定して出せていない。

試作機をつくる度に味にバラツキが出るというのです。

一体、何が起きたのか?

こちらは台中市、台湾の第三の都市です。

そこにバルミューダ株式会社の炊飯器開発担当者、唐澤明人さんの姿がありました。設計の責任者、石津征一さんとある場所に向かっていました。

着いたのは台湾の中堅電機メーカー。

この工場で炊飯器を量産する計画です。

炊飯器もこのラインで作る?

唐澤明人さん、生産体制をチェックします。量産化に向けた部品も並べられています。

ところが調べてみると、

全然ダメ。

多くの部品に精度の問題があります。

そのため試作機によって味にバラツキが出ていたのです。

できて当たり前のことがうまくいかないことがよくある。

石津征一さん、修正の指示を出します。

最終チェック

12月中旬、バルミューダ株式会社本社。修正された試作機が届きました。

これを使って味の最終チェックが行われます。

試食お願いします。

クリアできなければ、またやり直しです。

寺尾玄社長、評価は?

うまいよ。すごくおいしかった。べたついてない。

寺尾玄社長も笑顔です。

心配していた味のバラツキもなくなっていました。

バルミューダ ザ・ゴハン

1月12日、都内のホテル。100人以上のマスコミ関係者が集まっていました。

バルミューダ株式会社の新作発表会です。

バルミューダ ザ・ゴハン」の価格は4万4,820円。

新たな炊飯器はどう評価されるのでしょうか?

開発担当者に指名されて1年半が過ぎた唐澤明人さん。

いま思うことが、

世の中の炊飯器を変えるというよりは、新たしい方法があるというクリエイティブな部分を示せたのがうれしいというか意味があると考えている。

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