コスト競争 勝ち抜く秘策は
小型衛星ビジネスに注目しているのは新興企業だけではありません。
IHIエアロスペースはJAXA(宇宙航空研究開発機構)とともに小型ロケット「イプシロン」の開発を手がけてきました。
2013年から打ち上げを始め、去年11月には5号機の打ち上げに成功しました。これまでの成功率は100%です。
IHIエアロスペース イプシロンプロジェクト部、湊将志部長。
燃料が固形なので即応性があり、すぐ発射できる良いロケットです。
イプシロンは全長26m、打ち上げ能力は1.2t。小型衛星を宇宙に運ぶための運搬用ロケットです。
宇宙空間に出ると前のカバーを開き、小型衛星を目的の軌道に運びます。
そして衛生を放出。およそ100kgの衛星だと一度に10基程度乗せることができます。
実はこのイプシロンプロジェクトは2024年をめどにJAXAからIHIに民間移管されることが決まっています。事業継続のためには新規顧客の開拓が欠かせません。
東南アジアや東アジアのロケットの打ち上げ手段を持たない国に顧客獲得の営業活動をしている。
先程のアクセルスペースが打ち上げに使うロシアのソユーズは1回の打ち上げで30基以上の衛星を運びます。
一方、イプシロンの場合は1回に10基程度が限界です。
ロケット製造や打ち上げのコストを下げなければ衛星の運搬費用が高くなってしまいます。
高い目標だがコスト半分を目指し、段階的に減らしていきたい。
厳しいコスト競争の中、目をつけたのが小型衛星専用の推進装置の開発です。衛星の向きを調整したり、軌道を修正するためのものです。
IHIエアロスペース 宇宙開発利用技術部、古賀笑平さん。
いま宇宙にゴミがたまって問題になっている。衛星がゴミに衝突すると喪失してしまう。
推進装置を使うと衝突しないように回避行動が取れる。
通常、大型衛星の推進装置には危険物質であるヒドラジンという燃料が使われます。取り扱いが難しく燃料を充填する手間やコストもかかるため小型衛星の場合は推進装置自体を付けないことが多いのです。
そこでIHIでは簡単に扱えるメタノール系燃料の推進装置を開発しました。
衛星に推進装置を外付けすることで宇宙ゴミの衝突を回避でき、寿命を伸ばすことができると見込んでいます。
この装置とロケットによる衛星運搬とのセット販売を模索しています。
今までの顧客はJAXAのような国の機関や人工衛星メーカーだった。
小型の人工衛星ではベンチャー企業や大学などに販売を考えている。
今後、日本での小型衛星ビジネスは発展し、世界と渡り合っていけるのか、勝負は始まっています。