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[WBS] [新・ニッポンの素材力]産業の塩「人工水晶」

2017年11月20日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

日本の競争力の源としてWBSでは数々の素材を取り上げてきました。

例えば車の燃費向上を実現する軽くて丈夫な樹脂、再生医療で活躍する絆創膏型の人工皮膚など、その数、これまでで23種類にのぼります。

でも、まだまだ日本発の新素材はたくさんあります。

そこで装いも新たに「新・ニッポンの素材力」がスタートします。

人工水晶

今回注目する日本の素材は透き通る水晶。しかも人工的に作り出したものです。

何に使われているかというと電子部品。

英語で水晶はクオーツ。クオーツといえば思いつくのは時計です。

世界初のクオーツ時計が発売されたのは1969年のセイコー「クオーツ アストロン」。

それまでの機械式と比べ格段に精度が高いことから一気に普及しました。

クオーツ時計は今も進化、GPSや気圧、高度センサーなどを兼ね備えた最新式には表に3つ、そして裏にも1つ、合わせて4つの水晶部品が使われています。

セイコーエプソン株式会社

[blogcard url="https://www.epson.jp/"]

水晶はどんな役目をしているのでしょうか?

セイコーエプソンのマイクロデバイス事業部、阿部浩二部長に聞きました。

「水晶の役割は?」

水晶は半導体が動くための基準となる信号を作り出す部品になる。

水晶は力を加えると表面に電気が発生します。逆に電気を流すと規則正しく振動をするという特徴があります。

この振動を信号に変えて時刻や大量の情報を正確に処理をするのです。

セルスター工業株式会社

[blogcard url="http://www.cellstar.co.jp/"]

最近では交通トラブル対策としても注目されているドライブレコーダー。

勝永直隆副社長、

基盤を見て頂いて、こちらとこちらに水晶デバイスの部品が使われています。

このドライブレコーダーには2つの水晶部品が使われています。非常に小さな部品ですが、その役割は?

CPU(中央演算処理装置)の制御。時間の記録など水晶デバイスは非常に重要な部材。

他にもスマートフォンやデジタルカメラ、テレビにエアコン、さらにはドローンまでありとあらゆる製品に使われています。

電気で制御する製品に欠かせない人工水晶は「産業の塩」と呼ばれています。

エプソンアトミックス株式会社

[blogcard url="http://www.atmix.co.jp/"]

その人工水晶を大規模に製造する工場のひとつが青森県八戸市にあります。

今回、特別に従業員でも滅多に見られないという現場に立ち会わせてもらいました。

水晶製造部の坂本英樹課長、

中に水晶が入っているので引き上げをします。

引き上げ作業は数カ月に一度。貴重な瞬間です。

全部で200本くらい。

一度にこれだけの量を作れるのは世界でもトップクラスです。

1つの塊からは数十万個の水晶部品を作ることができます。

では、その重さは?

想像以上に重い。何キロくらい?

8キロ。

純度はほぼ100%に近い99.9999%。これだけの大きさでこの純度は天然ではありえないといいます。

人工水晶の原料

この人工水晶、どうやって作るのでしょうか?

重要なものが2つあります。

こちらが原料となる天然の水晶です。

天然の水晶が原料、これを使えばと思いますが、

クラック(ひび割れ)が入っていて歩留まりが悪くなるので製品には使えない。

天然水晶はひび割れや不純物や含まれていることが多いといいます。水晶が白く見えているのはそのためです。

そしてもう1つが、

種水晶。

種水晶は人口の水晶を薄くスライスしたもので、その厚さはわずか1ミリ。

この2つを釜の中に入れます。

釜の中の温度は約350度です。中では溶けた天然水晶の成分が種水晶を土台として再び結晶化します。

1日に0.5ミリずつ厚みを増していきます。

不純物が入らない高温、高圧の釜の中で約半年を掛けてじっくりと育成するのです。

人工水晶の需要

産業の塩、人工水晶の需要は今後も高まるばかりです。

例えば実用化が見え始めた自動運転や様々なものがネットに繋がるIoT、大容量高速通信には全て人工水晶の部品が不可欠。

人工水晶の先には私たちの未来の生活が映っています。

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