アメリカのオレゴン州で開かれている世界陸上競技選手権大会。オリンピックに並ぶ世界最高峰の大会ですが、注目されているのは選手だけではありません。選手の足元ではシューズメーカーが威信をかけて熱い戦いを繰り広げています。その中で日本メーカーはどんな戦略で臨んでいるのでしょうか、カギは厚底シューズにありました。
加熱!「厚底」シューズ!
アシックスに勝算は?
6月にアシックスが開いた新商品発表会。
アシックス
廣田康人社長
アシックスのミッションはパフォーマンスランニングおよびレーシングカテゴリーでナンバーワンブランドになること。
マラソン向けの最上位モデル、厚底シューズの新商品を披露しました。最大の特徴はランナーの走り方に合わせて2種類のシューズを展開していること。大きな歩幅で走るストライド走法向け「メタスピード スカイプラス」と足の回転を早めて走るピッチ走法向け「メタスピード エッジプラス」があります。このシューズ、靴底の間に黒いカーボン製のプレートを内蔵しています。2種類のシューズはプレートの配置などを微妙に変えていてランナーの走り方に応じた高い反発力が得られるといいます。価格は2万7,500円です。
世界のレースで使われるナンバーワンブランドになると宣言した廣田社長にその狙いを聞きました。
アシックス
廣田康人社長
トップアスリートに指示されるシューズ、ギアを持つことは非常に重要。
ランニングを始めたばかりの人たちにもいい影響が及ぼされるのではないか。
背景にはシェアを奪われた過去が。2017年、ナイキが厚底シューズの「ヴェイパーフライ4%」を発表。翌年、このシューズを履いたケニアのキプチョゲ選手がマラソン世界記録を更新。ランナーの絶大な指示を得てナイキのシューズが市場を席巻しました。
打倒ナイキを掲げるアシックス。世界陸上の男女マラソンでは完走した選手のうち11人がアシックスの新しい厚底シューズを使用。なかでも地元アメリカの女性選手2人が5位、7位に入賞を果たすなどアシックスの厚底をアピールしました。
トップアスリートたちの実績は店舗での販売にもつながります。アシックスの店舗では早速その効果が。
番組スタッフ
世界陸上でトップ選手が履く靴は気になる?
ランニング歴4年
60代男性
気になるね。履けるレベルじゃないがイメージだけは選手になったつもりで。
アディダス、ワークマンも!?
アシックスだけではありません。アディダスも6月にシューズに内蔵するカーボンを板ではなく5本指の骨状にした新しいモデルを発表。今年も厚底シューズ戦争に名乗りを上げています。
アディダス・ジャパン
トーマス・サイラー副社長
日本のランニングシューズ市場は強豪がたくさん参入していて競争が激しい。
さらにここにきて意外なメーカーも。作業服で知られるワークマンです。
ワークマン
鈴木悠耶さん
もともとのきっかけは作業靴だったが、一般の人がこのシューズを見てランニングに使えるなと。
3年前、ワークマン独自の厚底技術を使った作業靴を販売し、疲れにくさが評判に。ランナーの声がきっかけで去年、初心者向けのランニングシューズを開発しました。そして今年4月、その厚底にカーボンを配合したプレートを搭載することで中級者向けのシューズが誕生したのです。値段はなんと2,900円。
この厚底シューズの実力をフルマラソン3時間を切るWBSディレクターが体験してみると…
フルマラソン自己ベスト2時間48分13秒
安藤淳ディレクター
予想以上に反発の力を感じて。フィット性や耐久性の問題もあると思うので単純比較は難しいが3,000円くらいでこの反発力のあるシューズができるのは驚いています。
発売してまだ3ヵ月ですが売れ行きも好調だといいます。
ワークマン
鈴木悠耶さん
最初は年間28万足を予定していたが「もっといける」となり、35万足を目標にしている。
巨大メーカー、新興メーカーが入り乱れ競争が激化する厚底シューズ。なかでもアシックスは2025年までにマラソンシューズなどの分野でナイキからシェアNo.1の奪還を目指します。
アシックス
廣田康人社長
走り方別、能力別に提供できるかが一番大切なこと。
できるだけ多くのスポーツマンを支えるブランドになっていきたい。