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[WBS]ファブレスメーカーの挑戦!商用軽EVに商機アリ[ASF株式会社]

2022年10月3日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

わずか1%未満という普及率にとどまる日本のEV(電気自動車)市場で新たな動きです。新興企業のASFは物流業者などが使う商用軽EVの量産第1号を初公開しました。生産を担当したのは日本ではなく中国のEVメーカーです。補助金込みでおよそ150万円という低価格を実現した背景を取材しました。

商用軽EVが続々登場

佐川急便7,200台EVへ

山口博之記者

群馬県高崎市のとある試乗会に来ています。
軽自動車が1台、これから出発するようです。

この日、試乗会を開いたのは日本の新興企業「ASF」と中国メーカーの「五菱(ウーリン)」です。

ASFは生産工場を持たない企画や設計などを手掛ける新興のファブレス企業。総合商社の双日などが出資しています。

そして五菱(ウーリン)新能源は中国南部の広西チワン族自治区に拠点を置く自動車メーカーでEVを生産しています。

今回の車両は佐川急便からASFが受注し、生産を五菱(ウーリン)が担いました。2030年までに軽貨物車およそ7,200台を全てEVに置き換える計画です。

この佐川急便向けも含め、5年間で10万台の生産計画を掲げています。

実際に乗ってみると…

山口博之記者

ハンドルがとても軽い。

ASF技術担当者

細かくハンドルを切る長時間運転のドライバーのなので細かな要望を伺いながら微調整する。

エチケット用品を置く収納ボックスや暗い場所でも伝票を見やすくするために照明を明るくしました。

また、運転手がシフトレバーをパーキングに設定し忘れた場合に車が勝手に進み出すのを防ぐシステムを導入。

これらは佐川急便のドライバー7,000人のアンケートなどを元にしています。

積載量は350キログラム。充電1回あたりの航続距離は230キロメートルです。

生産1号となる車両の発表会でASFの飯塚裕恭社長は…

ASF
飯塚裕恭社長

日本は非常にEV化が遅れている。
単純に中国のものを持ってきたわけではなく、一から中国の方と一緒に造り上げていった車両。

飯塚社長の前職は家電量販店大手「ヤマダ電機」の元副社長。生活に密着した商品の販売現場を通じて消費者と向き合ってきました。

ASF
飯塚裕恭社長

ヤマダ電機(当時)に35年勤めてお客様の満足度は価格を超えるものは無かった。
なんだかんだきれい事を言うが、最後は価格だと思っている。
われわれが価格で勝負できなくなったら存在価値がない。

バッテリーは中国の電池メーカー大手CATL製を採用するなど全て中国国内のサプライチェーンで調達した材料や部品を使っています。

バッテリーをはじめてコストを大幅に低減。

価格は補助金込みで150万円前後となり、日本車と比べて2割程度安くなったといいます。

業界団体によると軽貨物車の国内市場はおよそ40万台で、現在はほぼ全てがガソリン車です。

今回、日本市場向けに初めて生産したウーリンの幹部は…

柳州五菱新能源汽車
余洪橋副社長

今回、日本に初めて来た。街中で走っているEVはかなり少なかった。
日本は中国に比べて安全面の認証が圧倒的に厳しい。

今後、ウーリンはASFの販売網などを通じて日本市場でトラックなど車種を広げる方針です。

今回、中国メーカーに生産を委託したASFの飯塚社長。当初は日本メーカーも含めた生産の委託先を検討しましたが、期待に応えたのは中国メーカーだったといいます。

ASF
飯塚裕恭社長

全ての日本企業がおそらく意思決定が非常に遅い。
それに比べて中国企業はものすごく意思決定が早い。
われわれみたいなベンチャー企業であっても「向く方向が同じであればやろう」という決断。

三菱自動車 今秋に再発売

国内大手メーカーも商用軽EVを相次ぎ投入する計画です。

ダイハツはトヨタやスズキなどと共同開発するモデルを2023年度に、ホンダも2024年に100万円台で発売することを目指しています。

そうした中、国内唯一の商用軽EV「ミニキャブ・ミーブ」の販売を一度終了していた三菱自動車もこの秋に再び販売することに。

ミニキャブ・ミーブは三菱自動車が世界で初めて発売した量産EV「アイ・ミーブ」のバッテリーやモーターと同じものを使い2011年に発売した車です。

三菱自動車
軽EV推進室
五島賢司室長

販売して10年が経過。
商品ライフサイクルの観点からいったんやめようと判断した。
世界的に脱炭素の関心が高まっている。この車への関心が高まっている。
問い合わせも増えているので方針を変えて再販。

運送業者などからの強い要望を受け、一度販売を終えたモデルを再販するという異例の決断をしました。

各社が商用の軽EVを投入することについて…

三菱自動車
軽EV推進室
五島賢司室長

10年間以上、ノウハウの蓄積、商品の耐久性・信頼性を向上してきた。
商用車なので故障が一番良くない。
万が一に故障が起こっても修理する体制を持っていることも強み。

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