地域で奮闘する企業を取り上げる「輝く！ニッポンのキラ星」。今回は福島県郡山市からです。コロナ下で市場が不安定な中、価格が高止まりしている金。その金に特化したリサイクルで業績を伸ばしている企業を取材しました。
"有事の金"高騰で業績好調
福島県郡山市。全国各地へのアクセスに優れ、東北地方の中核として発展してきた街に資源再生メーカー「アサカ理研」の本社があります。
創業は1969年、従業員は197人。
売上げおよそ80億円、純利益は3億7,000万円あまり。
アサカ理研 製造本部
田邊利匡さん
こちらが集荷場。
取引先からお預かりした電子部品を保管している。
ドラム缶の中に大量にあるのは半導体などの電子部品スクラップを粉砕したもの。一見、廃棄物のように見えますが実は宝の山なんです。
アサカ理研 製造本部
田邊利匡さん
こちらがパソコン内部にある基板。
CPUやコネクタなどに金が含まれている。
弊社ではこういった使用済みの電子部品から金を回収している。
これらは資源として再利用できる有価金属のことで街中で眠っている鉱山という意味で都市鉱山と呼ばれています。
環境省によると日本の都市鉱山の金の量は現在地球に眠っている天然の金の16％に匹敵するといわれ、今後の活用が期待されています。
アサカ理研
油木田祐策社長
金は非常に薄く広く伸びる。
細かく部品の中に組み込まれている。
過度なやり方では母材まで溶かしてしまう。
いかに的確に適正な薬品をどの程度使うかがノウハウになる。
金メッキが付着した銅板、実際に金だけを溶かす実験を見せてもらいました。
アサカ理研 製造本部
田邊利匡さん
剥離液につけ込むと金だけが溶ける。
金メッキがついたパーツを剥離液という薬品につけると数十秒後には母材の銅を傷めずに金メッキがだけを剥離することができました。
そして金が溶けた溶液に金だけが吸着する特殊な溶媒を混ぜ合わせ金を抽出。さらに特殊な薬品を加えると99.99％の純金が取り出せます。
乾燥させたものがパウダー状の金です。
アサカ理研 製造本部
田邊利匡さん
こちらのカレー粉のような粉、これを3つ合わせて10キログラムの金になります。
今日の相場では8,500万円相当の粉になります。
通常の金の鉱山では1トンの金鉱石から取れる金は数グラム。
都市鉱山の場合、1トンの材料から200～300グラムの金が取ることが可能。
都市鉱山のほうが非常に効果的に金が回収できる。
最後に1,000度以上の熱で溶かして型に流し込めば純度99.99％の純金バーが完成します。
これらは金の延べ棒として販売されたり、電子部品の材料として再び工場で利用されます。
金の価格は有事の金と呼ばれるように景気後退懸念が高まる中で高止まりしています。
それに伴いアサカ理研の業績も好調。純利益は2019年に一旦下がったものの、そこからは右肩上がりで伸びています。
アサカ理研
油木田祐策社長
円安が急激に加速しているので収益自体には追い風になっている。
原料高というデメリットはあるが、プラスになっている面が多い。
そのアサカ理研が新たな柱とするために注力しているのが、本社から車で1時間半の場所にある、いわき工場で行われている事業です。
リチウムイオン電池再生事業に進出
アサカ理研
油木田祐策社長
福島県で新しいエネルギーに対して補助も出る。
なんとかこの地で新しい研究開発を進めようという動きが出た。
まだ世の中がリチウムイオン電池の再生まで目が行かないうちから相当早めに着目した。
2013年頃からリチウムイオン電池の再生リサイクルに着目した。
およそ10億円の設備投資でいわき工場を増設中。リチウムイオン電池再生事業の拠点となる予定です。
情報漏洩対策で工場内部は撮影禁止。代わりに見せてもらったのが…
アサカ理研 技術・開発本部
中澤順さん
リチウムイオン電池から回収した化合物（レアメタル）。
品質はほぼ売り物になるレベルまできています。
あとはお客様の要望に応えて少しアレンジを加える。
アサカ理研では廃棄されたリチウムイオン電池からレアメタルを電池の材料として再資源化する水平リサイクルを目指しています。
環境省は先月、資源を繰り返し利用する「循環経済」関連ビジネスの市場規模を現在の50兆円から2030年に80兆円以上に拡大させる方針を示しました。
アサカ理研
油木田祐策社長
来たるべき大リサイクル時代までに理想的なリサイクル方法の確立が必要。
我々の技術に興味を持つ企業と提携しながら拡大していきたい。