シリーズ企画「コロナクライシス トップの決断」。
外食需要が減り一時は出荷量が大幅に減少した日本酒の獺祭。
しかし、わずか4ヵ月で業績はV字回復に向かっているといいます。
どのように逆境をはねのけたのでしょうか?
旭酒造株式会社
[blogcard url="https://www.asahishuzo.ne.jp/"]
中国・上海。
春、新型コロナの影響で客足が途絶えた飲食店。
しかし今、ある変化が…
お客様が戻ってきたのです。
なかでも売上アップを支えているのが壁一面に並んでいる日本酒の獺祭です。
新型コロナが落ち着いてからお客様が一番注文するのが獺祭。
いま急激に外食需要が回復する中国で獺祭は去年以上に売れているというのです。
獺祭を製造する山口県の旭酒造を訪ねると…
工場はフル稼働。
しかし実は数ヶ月前までは経営危機にあったといいます。
そこには逆境をはねのけたトップの決断がありました。
感染が広がった3月。
外出自粛で外食需要は激減。
この時も獺祭工場を取材していました。
全国から注文がなくなり製造ラインは止まった状態。
売り上げは去年に比べて7割減少し、創業以来の危機を迎えていたのです。
「心境としてはどうだった?」
旭酒造の桜井博志会長、
ものすごい恐怖。
これどうなるんだろうと。
売り上げが悪いから生産を落とす。
会社がもつかもたないか計算を徹底的にやった。
なんとか生き残れるめどはたった。
生産量50%ならいける。
問題として立ち上がったのが米。
日本酒を作る米は食べる食用米ではなく酒米を使っています。
獺祭には酒米の中でも王様といわれる山田錦だけが使われています。
1年間で獺祭に使われる山田錦はおよそ8,000トン。
獺祭の生産を半分に減らした場合は当然この山田錦も半分必要なくなります。
酒米の購入を減らすという選択肢が出る中、下した決断は…
製造部から「4,000トン作付けを減らしてもらいましょう」と言われて。
ちょっと待て。
それはそのままいこうと。
「酒米の購入は一切減らさなかった?」
基本的には計画通りやった。
「迷いは無かった?」
無かった。
そこには農家と歩んできた苦難の歴史が…
新しい日本酒を作るため全国の生産地を回った桜井会長。
そこで見たのは経営難で苦しむ農家の姿。
そこで山田錦の栽培方法を伝授し、品質が良ければ高く買い取り農家を支えてきたのです。
こうした全国の農家との共作が獺祭なのです。
山田錦の生産者の一人、村田仲平さん。
コロナの影響を受け多くの農家が苦労する中、山田錦を全量買い取ってもらい農業を続けていく活路が見えたといいます。
生産者としてはすごい安心感があった。ありがたかった。
田んぼはいったんやめると、田んぼを荒れ地にすると元に戻らない。
おそらく何年も元に戻らない。
「よしやろう」と立ち上がってくれた農家ばかり。
「売れないし原料余るからこれでいい」とは言えない。
もちろん買い取った米は1粒足りても無駄にはしません。
粘りや甘みが少ない酒米の特徴を生かしリゾットやチャーハン向けの食用に転用したり、日本酒の製法を変えて消毒用エタノールを開発したり無駄のない経営で乗り切りました。
7月には海外向けの出荷量が100%を超えるまでに回復。
全体の売り上げも7割まで持ち直しました。
海外の需要回復に即座に応えV字回復の軌道に乗ることができたのも「逆境にこそ原点に立ち返る」、その決断があったからなのです。
「日本経済の回復の軌道は?」
日本経済の回復には2~3年かかるという厳しい見立て。
この逆境をどう乗り越えていくのでしょうか?
海外の輸出を伸ばしながら国内のマーケットを守っていく。