今週、東アジアの中で特に世界からの視線が集まっているのが台湾です。
沖縄県の尖閣諸島からもほど近い東シナ海に位置していますが、この台湾をめぐっていまアメリカと中国の関係が緊迫しています。
日本にはどのような影響があるのでしょうか。
リチャード・アーミテージ元国務副長官
部隊は5月5日、イギリス・ロンドン。G7、主要7カ国の外相会合でした。
共同声明で中国が軍事的圧力を強める台湾海峡の平和と安定の重要性を確認したほか、WHO(世界保健機関)に台湾が参加することへの支持を表明。
茂木外務大臣は、
中国に対して自らの経済的規模・役割にふさわしい責任を果たすよう求めることで一致。
アメリカ、日本をはじめ、主要国は台湾を含む一つの中国としてきましたが、転換点を迎えているのでしょうか。
その発端が先月行われた日米首脳会談です。
共同声明では52年ぶりに台湾が盛り込まれ、中国側の動きを強く牽制。
その首脳会談の直前、アメリカ政府の非公式の代表団として台湾を訪問したのが東アジア情勢に精通するアメリカのリチャード・アーミテージ元国務副長官です。
今回、テレビ東京の単独インタビューに応え、台湾のトップ、蔡英文総統との対談の内容を明かしました。
「今回の台湾訪問でどんなメッセージを伝えたのか?」
バイデン大統領は台湾の民主主義を支援したい。
民主主義である台湾こそがアメリカや西側諸国の国益になると思っている。
アメリカにできるのは中国の台湾への横暴な対応をよく思わないことを明確にし、非公式な関係の中でアメリカができる支援を100%行うことだ。
中国軍は台湾周辺に戦闘機や空母の派遣を繰り返し威圧、アメリカ軍も周辺での活動を活発化させるなど緊迫した事態が続いています。
不測の事態の可能性はある。近い将来かは分からない。
7月に中国共産党100周年という節目もあるし、今年は東京オリンピック、来年は北京の冬季五輪がある。
中国は今やりたいことを理解していて、私は中国のやり方が好きではないが、今すぐ戦争を起こすという状況ではないと思う。
中国が圧力を強めているのは台湾周辺だけではありません。
5月7日、尖閣諸島の接続水域で中国公船2隻の航行は確認され、84日連続となりました。
さらに先月には中国海軍の空母「遼寧」を中心とする6隻の艦隊が尖閣諸島に接近。遼寧から早期警戒ヘリコプターが飛び立つのを確認した航空自衛隊が戦闘機をスクランブル発進させるなど緊張が高まりました。
中国が尖閣諸島に対して挑発行動を続けるのも日本の海上自衛隊や航空自衛隊を消耗させたいという思いもあるだろう。
日本においても周辺地域を守る上での台湾の重要性への認識が高まってきた。
ここを守ることが日本の安全保障にとって重要だということだ。
日本において公な議論はまだこれからだと思うが、今後台湾の重要性に関する議論が活発になってくると思うし、すでに具体的な動きも出ている。今後も続くだろう。
台湾情勢に詳しい専門家は…
東京大学の佐橋亮准教授、
軍事的に有事が起きれば日本はかなりの確率でまき込まれる。
有事の際は台湾と同じ状況に置かれるという認識を持つべき。
軍事的な意味だけではなくて政治的・外交的に中国に対してしっかりメッセージを出すことが重要。
そして、今回の訪問でアーミテージ氏ら一行は台湾と経済分野についても重要なやり取りがあったことを明かしました。
それは台湾の世界最大手の半導体受託生産メーカーTSMC(台湾積体電路製造)についてです。
TSMCのアリゾナ州への投資が決まり、蔡英文総統は喜んでいた。
またその投資が単なる経済的なものではなく、安全保障の側面もあることを理解していた。
日本もTSMCの研究開発拠点を誘致するなど各国にとって台湾は経済安全保障の上でも重要さが増しています。
半導体の分野でアメリカの台湾への依存度は高まる。
それは台湾の人々にとって自信につながる。
台湾が自由で開かれた社会であり続けることをアメリカがさらに必要とするからだ。
関係を深めるアメリカと台湾、佐橋さんは現状をこう分析します。
ここまで台湾の重要性が高まったのは歴史上初めて。
中国も台湾の半導体製造能力に賭けている。
台湾と中国大陸の関係が切れるかというとそれは相当難しい。
アメリカは今後そこを狙って輸出管理など具体的な手段をとってくる。
中国政府はこうした動きを批判。
中国外務省の汪文斌報道官、
科学技術と経済貿易を政治問題化し排他的なグループを作ることは市場経済と公平競争の原則に違反している。
関連国がゼロサム思考を捨て、時代の流れに則して自由貿易の規律を尊重することを望む。