東日本大震災から11年以上が経ちましたが復興は道半ばです。現在の福島県浪江町、水産加工業が盛んだった港の周辺は今も更地となっていて町の人口はおよそ1,800人と震災前の12分の1にとどまっています。こうした被災地に新たな産業を生み出そうと東京・品川から仙台を結ぶJR常磐線を活用した新たな取り組みが始まっています。
特急で活エビを東京へ!陸上養殖で復興支援
JR常磐線が通る福島県浪江町。
震災後、無人駅となったJR浪江駅。そのホームの脇に置かれていたのは黒いコンテナ。
中を覗くと水槽のようなものが。
JR東日本スタートアップ シニアマネージャー
隈本伸一さん

こちらが陸上養殖施設になります。
小さいコンテナの中で陸上養殖できる素晴らしいシステム。
JR東日本が駅の空きスペースで陸上養殖の実証食気を始めるというのです。
JR東日本スタートアップ シニアマネージャー
隈本伸一さん

今、鉄道の駅としてはお客様の利用が少なくなっているが、そこに新たな産業を作らないと人が戻ってきても生活できる形にならない。
新たな産業を起こして鉄道の利用を増やす狙い。
そこでJR東日本が目をつけたのが陸上養殖で画期的な技術を持つベンチャー企業でした。
神奈川県平塚市にそのベンチャー企業の開発拠点「ARK 湘南製作所」があります。
この小さなコンテナでの陸上養殖が世界で注目を集めているのです。
一体何がすごいのかARKの栗原洋介さんに聞いてみると…
ARK 共同創業者
栗原洋介さん

一番の特徴は小さいこと。
いろいろな所に置いて「どこでも誰でも養殖できる」というコンセプト。
水槽で育てているのはスーパーでよく見かけるバナメイエビです。
1つの水槽で養殖できるのは最大4,000尾。バナメイエビは稚エビから3ヵ月ほどで出荷できる大きさに育つため収益化しやすいといいます。
ARK 共同創業者
栗原洋介さん

陸上養殖の採算性が難しいのは初期投資で数億円から10億円くらい金がかかっていたけれども、我々のユニットだと500万円からという値段になっているので最終的な収益が出しやすいモデル。
コストを抑えるため無人で養殖できるシステムを開発。自動給餌器でエサをやり、水の温度や酸素の量もスマホでモニタリングできます。
さらに…
ARK 共同創業者
栗原洋介さん

電源の工事は必要ない。普通の家庭用コンセントで大丈夫。
壁に太陽光パネルを設置しているので昼の電力は再生可能エネルギーでまかなうことができます。
新鮮なバナメイエビはプリプリとした食感と甘味が楽しめるため冷凍物に比べ2倍から3倍の高値で売れるといいます。
ARK 共同創業者
栗原洋介さん

すごくおいしい。
栗原さん、浪江駅でもこのバナメイエビを育てます。
3月31日、品川駅。栗原さん、この日3,000尾の稚エビを浪江駅まで運びます。
エビを輸送するのは常磐線の特急ひたち。栗原さんも乗り込んでいよいよ出発。
品川駅を出発しておよそ3時間半。エビを乗せた特急が浪江駅に到着しました。
駅員

放流します。
稚エビを水槽の中へ。およそ3ヵ月間、この水槽で育てます。
エビが大きくなったら常磐線の特急で東京まで生きたまま運び、レストランやスーパーなどに販売します。
さらにARKの栗原さん、こんなアイデアも。
ARK 共同創業者
栗原洋介さん

「浪エビ弁」を作りたいですよね。駅弁。
直感的にいけるのではないか。
自分だったら食べる。
今後はJRのほかの無人駅にもARKの陸上養殖施設を設置して、復興を後押ししていきたいといいます。
JR東日本スタートアップ シニアマネージャー
隈本伸一さん

駅という人が集まる結節点で新たな産業をつくって、そこから町や漁港へ広がって産業の流れをつくっていけたら。