先月九州を襲い甚大な被害をもたらした豪雨災害からおよそ1ヶ月が経ちました。
数十年に1度といわれる災害が毎年のように起きていますが、その被害を少しでも食い止めようと最先端の技術を使った取り組みが進んでいます。

Arithmer株式会社
[blogcard url="https://arithmer.co.jp/"]
東京・六本木。

ビルの一室を覗くとラフな格好をした男性たちが何やら作業をしています。
こちらの人は、
お客様から口のスキャンデータを取得しこれをAIで解析する。

歯型を取らなくてもAI(人工知能)が口の中の画像から隙間に最適な差し歯を設計するというものです。
一方、こちらでは…
4枚の画像を撮影する。

AIが写真から腕の長さや首周りなど体のサイズを自動で計算するアプリを作っています。

ここはAIを使ったシステムを開発する会社「アリスマー」。

100人の社員を率いているのが大田佳宏社長です。
彼らはせ最先端の数学や物理の理論を持っているので、それを応用して幅広い分野にソリューションを提供している。

実は太田社長自身も東京大学大学院で数理科学を教える特任教授です。

今この会社が開発したある技術が全国の自治体から注目を集めています。
それがこちら。洪水などで起きる浸水被害を予測するシステムです。

まずは最新式のドローンを飛ばして地形データを撮ります。

そのデータを元に街や川を3Dマップに細かく再現。

AIが地形の特徴を元に雨の量や川の決壊場所など膨大な組み合わせからその地域に起きる浸水被害を予測します。

水がどの方向から来て、どの程度まで浸かるのか住宅ごとに1cm単位でわかるといいます。

全国で初めてこのシステムを導入すると決めたのが東日本大震災で被害を受けた福島県広野町です。

福島県広野町の遠藤智町長、
被災現場となるその状況をイメージできる。

被災した状況で命を守るにために適切に対応するにはどのような対応の仕方があるか事前に確認できるのは意義があること。

通常、浸水被害を予測するこうしたハザードマップも人が作ると半年から数年かかるとされています。

アリスマーのAIではそれを数時間で算出できることから臨機応変な水害対策への活用が期待されています。
人はどうしても自分の良い方に考えたがる。

だからこそ客観的なリスクの見える化が重要視されている。

実際にこういう状況になると目の当たりにできるので危機意識が高まる。

この日、アリスナーをある人たちが訪ねていました。

画面に映し出されていたのは熊本県の球磨川流域の地図です。

浸水予測AIを使った予測地図です。

全損の基準となるところを地図上で赤色に塗っています。

7月4日に発生した球磨川の氾濫。流域の広い範囲で建物の浸水被害が相次ぎました。

図の真ん中の濃い青が球磨川。赤が浸水の高さから建物が全損したと推定されるエリアです。

実は彼らは損害保険会社の社員。
先月の豪雨災害で被害が大きかった熊本県人吉市での損害調査にアリスナーの技術を初めて導入していたのです。

店の看板に残った泥のあとから実際の浸水の高さを数カ所被災地の地図データに加えればその地域での浸水被害を正確に推定できます。

MS&AD 三井住友海上の丸山倫弘さん、
ドローンで調査することで立ち会い調査に行かなくても何メートル浸水したという情報が得られるので早期に保険金を支払える。

例えばこの家は4.89m、こちらは3.94mというように立ち会い調査をしなくても1軒1軒浸水度合いを算出することができるのです。

この技術、新型コロナの感染が拡大する中より注目を集めています。
MS&AD あいおいニッセイ同和損保の久保田秀人さん、
お客様のところにお邪魔しなくても遠隔で損害の確認ができて支払える。

ウィズコロナの時代にマッチした取り組み。

さらに今後見据えているのが首都圏での大規模水害です。
もし荒川が氾濫したらどうなるか。

保険金をどう支払えるか、保険会社にとって大きな課題。

間違いなく人手が足りなくなるので支払いまで半年や1年経ってもおかしなくない。

それを短期間で支払える環境が整えられた。

事前の水害対策だけでなく被災後の検証にも力を発揮するこのシステム。大田社長は水害の多いアジアなどでの活用も視野に入れています。
様々な可能性をシミュレーションして起きるかもしれない災害に備えていく。

世界に先駆けてAI技術をインフラ化し、災害に強い国として世界に発信できれば。
