マンションの老朽化に関する問題。築40年を超えるマンションが増え、各地で補修や建て替えに迫られています。ただし、所有者と連絡がつかないなどの理由で対応ができないケースがあり、今回、国が対策に乗り出しました。一体何が問題なのか現場を取材しました。
急増する"老朽"マンション!
所在不明者続出で改築も困難?
田中瞳キャスター
東京都荒川区にあるマンションですが、いまある問題を抱えているといいます。
築40年のマンション、管理組合の理事長に話を聞くと…
田中瞳キャスター
そこまで老朽化しているように見えないが?
管理組合の理事長
別所穀謙さん
目に見えない老朽している部分がある。
別所さんが取り出したのは打診棒。壁を叩いて音のチェックをします。
管理組合の理事長
別所穀謙さん
タイルが浮いている。壁面にちゃんとくっついていない。
放っておくと落下する可能性があります。
さらに…
管理組合の理事長
別所穀謙さん
亀裂の部分。欠けている。
上層部がこういう状態になれば漏水につながってしまう。
このような共用部分を大々的に直す場合は所有者の4分の3以上の同意が必要と法律で決まっています。しかし…
管理組合の理事長
別所穀謙さん
当マンションの特質として、このマンションに住んでいない人が部屋を持っているというのが半数を超えている。
投資用マンションとして買われている。
投資家はなるべく費用をかけたくないのが当たり前の話。
拒否されてしまうことがあり得る。
さらに住んでいない人の半分が中国人でほとんど連絡が取れません。
こうした所在不明者は「反対票」として扱われ、修復や建て替えの阻害要因になっています。
持ち主と連絡が取れないケースはほかにもあります。高齢化で所有者が死亡した場合、その後、誰が相続したか分からなくなったり、そもそも相続人がいなかったりする場合があります。
こうした問題を国も深刻に捉え、対策に乗り出します。
葉梨法務大臣
大規模修繕、再生をする、建て替えをする、これには合意形成の中で相当なハードルがある。
法務大臣は9月2日、法改正に向け議論をしてもらうよう法制審議会に諮問することを明らかにしました。
改修・建て替えに高い壁
田中瞳キャスター
今回、私が取材したマンションは築40年でしたが、この築40年以上の分譲マンションなどの戸数は現在の116万戸から10年後は249万戸と倍以上に増える見通しです。
佐々木明子キャスター
それだけ古いマンションが増えることなので補修や建て替えが必要になってきます。
田中瞳キャスター
現在の法律では共有部分を大きく変更する場合には所有者の4分の3、また建物自体を建て替えるとなると5分の4の賛成が必要でもともとハードルが高いです。
さらに取材したマンションのように所有者の行方がわからない場合、そもそもいなかったりする場合、これは反対の票として扱われてしまいます。
なので賛成の決議を取るというのは簡単なことではありません。
佐々木明子キャスター
だからこそ国が今回それを進めようと動き出したということですが具体的にどのような議論が進んでいるのでしょうか?
田中瞳キャスター
これまで法務省などが参加する研究会で議論が行われてきました。さまざまな要件緩和の案が出ていて、決議に必要な賛成者の割合自体を現在の4分の3や5分の4から引き下げる案や所在不明や所有者不明のケースを議決の母数から外してしまう、除外するということです。
佐々木明子キャスター
自動的に反対扱いになる所在不在や所有者不明を外すことでより関与している人たちの意見を反映させやすくするということです。
田中瞳キャスター
具体的な事例で説明します。
1つのマンションに同じサイズの部屋が20戸あります。そのうち5戸が所在や所有者不明だと反対の扱いとなりますので、この時点で5分の4に到達せず、建て替えは成立しません。
もし12戸が建て替えに賛成だった場合、不明者を除外することができれば賛成が5分の4に達するので建て替えは成立します。
佐々木明子キャスター
今回の動きについてマンションの建て替え事情に詳しい専門家に話を聞きました。
建て替え"要件緩和"で合意形成が進む可能性
全国で建て替えマンションを開発する旭化成。建て替えが進まない背景の1つが所有者の合意の形成に長い時間がかかることだといいます。
旭化成不動産レジデンス
マンション建替え研究所
重水丈人所長
建て替えの発議をしてから成立するまで平均8.3年というデータがある。
しかし、要件が緩和されれば合意形成が進みやすくなり、建て替えを検討する管理組合も増えるのではとみています。
旭化成不動産レジデンス
マンション建替え研究所
重水丈人所長
建て替えを進めたいがいまひとつ気持ちが盛り上がらなかった管理組合では「改めてやってみよう」という前向きな気持ちになれると思う。
そこの要素はすごく大きい。