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[WBS] ANA 赤字5,100億円に!攻めの戦略がコロナで逆風![ANAホールディングス株式会社]

2020年10月28日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

ANAホールディングスは10月27日、今年4月から1年間の最終損益が過去最大の5,100億円の赤字になるとの見通しを示しました。

収益回復を狙い人件費を削減するため400人以上の社員をグループ内の企業に出向させる方針を明らかにしました。

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番組ではANAの社員に向けて通達された出向先のリストを独自に入手しました。そこには航空会社とはかけ離れた仕事が並んでいました。

ANAホールディングス株式会社

[blogcard url="https://www.ana.co.jp/group/"]

午後3時過ぎから始まったANAホールディングスの決算会見。

ANAホールディングスの片野坂真哉社長、

国際線は以前厳しい状況が続いている。

今年度の業績見通しは非常に厳しいものになりそうだ。

ANAは2021年3月期の業績予想を発表。5,100億円の最終赤字に陥る見通しだと明らかにしました。

リーマン・ショック後の2010年3月期に573億円の最終赤字を計上したANA。

今期はこれを大幅に上回り、過去最悪となります。

さらに、

コロナの長期化の備えとして4,000億円の劣後ローンの借り入れの契約を締結した。

財務体質を強化し、信用格付けを維持する。

財務基盤強化のために4,000億円の出資を銀行団から受けることも発表。

銀行団は返済の優先順位が低い代わりに金利が通常の融資よりも高い劣後ローンで貸し出します。

すでに社員の待遇に関しては冬のボーナスを支給しない方針を固めているANA。年収ベースでおよそ3割のカットになります。

そして10月27日に新たに発表したのは、

グループ内の人員配置の変更。グループ外への出向とともに賃金雇用に関するあらゆる施策を行うことで雇用を守っていく。

ANAは今回発表した事業構造改革案で来春に400人以上の社員をグループ外の企業に出向させる方針を明らかにしました。

異例となるグループ外の企業への出向。

ANAの現役客室乗務員がWBSの取材に応じました。

グループ外の企業に出向というのは全く考えていなかったので本当に予想の斜め上を行く発表。

出向といったところで今までCAとしか働いていなかった私たちが何か役に立てることはあるのか。

こちらはWBSが独自に入手した内部文書。ANAが社員向けに送ったもので出向先のリストが記載されています。

そこには通信会社大手のKDDIや家電量販店大手のノジマ、人材派遣大手のパソナなどの名前が…

仕事内容を見てみるとKDDIは社員向けの英会話講師。

ノジマはコールセンター業務。

パソナは電話対応業務などANAの業務とは全く異なる職種の募集が記載されています。

募集は来月10日まで。

今月23日に募集が発表されてから募集期間はわずか2週間です。

全く今までと異なる業務の出向先に行くので給料や休みの取り方も変わってくるし、転勤を伴う場合もあるのでもう少し早く発表してほしかった。

グループ外の出向について片野坂社長は…

「ANAとして社員の出向先をどう探したのか?」

先方からも打診があった。

われわれで検討して、どういう仕事をやらせてもらえるか調整して、飛行機だけで暮らしてきた人が飛行機以外の人と交流することで本人もすごく勉強になるだろうし、会社も大いなる刺激になると思っている。

前代未聞の出向。その背景について専門家は…

桜美林大学の航空・マネジメント学群、戸崎肇教授、

今回のコロナウイルスの影響はいずれなくなる。

その後いま一度国際線の需要が急激に伸びていくことが考えられる。

またその段階で雇い直して育て直すことは無駄でチャンスを逃すことになる。

ANAはこの10年、積極的に進めてきたのは国際路線の強化です。

コロナ前、就航していた国際路線の数は67路線。

輸送能力を示す国際線の旅客輸送量も年々増加。この10年で倍以上になりました。

背景にあったのはライバル会社の経営破綻です。

日本航空の西松遙社長(当時)、

多大なご迷惑をおかけする結果となり誠に申し訳なく思っています。

2010年、JALが経営破綻。負債総額は2兆円以上、救済のため3,500億円の公的資金が投入されました。

当時、ANAは…

伊東信一郎社長(当時)、

公的資金をバックにマーケットの秩序が乱れるようなことは困る。

公平な競争条件が確保されるべきだと訴えた結果、国もそれを認め様々な面でANAに優先的に機会が与えられました。

例えば羽田空港の国際線発着枠の配分ではJALが5だったのに対し、ANAは11と2倍以上獲得。

その結果、2015年には初めて国際線の旅客輸送量がJALを逆転しました。

トップの座を手にしたANAはさらに攻めに出ます。

その象徴となったのがこちらの通称「空飛ぶウミガメ」、エアバスA380です。

2階建て、座席数は520席と世界最大でカタログ価格は1機500億円です。

この大型機を成田-ホノルル線に投入。

当時ハワイ路線はJALが最大のシェアを持ち「JALの牙城」といわれていました。

その牙城を崩す挑戦に打って出たのです。

そこに想定外に起きたのが新型コロナでした。

国際線の9割が運休する今、皮肉なことに全日空の飛躍を支えてきた国際線への設備投資が重荷となり裏目に出たかたちとなっています。

そして今回の構造改革案で打ち出されたのが、

事業規模の一時的な縮小に対応するため保有機材数は大幅に圧縮する。

当初、今年度末時点の機体の数は274機を予定していましたが、31機減らし243機にする計画です。

なかでも国際線などに使われる大型機は60から36に削減します。

また大幅な減便が続く国際線の再開については需要が回復した際、成田ではなく羽田の発着便から優先的に再開する方針です。

コストを見直す一方、アフターコロナを見据えた戦略も。

予定しているのが新たなLCCの立ち上げです。

ANAやピーチでカバーできない東南アジア・オーストラリアを中心に第3ブランドを立ち上げ、需要の回復をにらみながら2022年度をめどに運航を開始します。

これまでは比較的価格が高く短距離から長距離までカバーするANAと価格が安く短距離を専門とするピーチ・アビエーションを展開してきました。

コロナ後の新規顧客の獲得を狙い価格が安く東南アジアやオーストラリアに飛ぶ中距離LCCを立ち上げます。

コロナがおさまるまで2~3年かかると思う。

この2~3年をどのように耐え忍び、同時に体質転換を図っていくか。

それをなし得た企業が需要の回復時、市場にリーダーとして浮上する。

成田国際空港株式会社

[blogcard url="https://www.naa.jp/jp/index.html"]

国際線の需要蒸発の影響を受けているのが成田空港です。

10月27日、ターミナルを訪れると…

坂本透記者、

チェックインカウンターです。ご覧の通り人影もまばらで閑散とした雰囲気です。

先月の国際線の発着便数は去年の2割弱ですが、旅客数はいまだ3%に留まっています。

影響は空港内の店舗にも。

NAAリテイリングの神﨑俊明社長、

当社のデューティーフリーのショップ。

この店は4月から休業している。

成田空港で免税店などを運営するNAAリテイリングでは85店舗のうち7割が休業を余儀なくされていて先月の売上げは去年のわずか7%にまで落ち込んでいます。

空港全体では6割近くの店舗が休業中で多くの店がシャッターを下ろしています。

成田国際空港では家賃の一時免除や支払い猶予など店舗に対する支援策を打ち出しています。

成田国際空港の田村明比古社長、

開港以来最大の危機だと思う。

空港ビジネスは他の業種と違い工場や店舗を閉鎖して撤退することは許されない。

三栄メンテナンス株式会社

[blogcard url="https://soranoyu.com/"]

影響は周辺の施設でも。

成田空港から車でおよそ5分のところにあるこちらの温泉施設「成田空港温泉 空の湯」。

売りは源泉かけ流しの露天風呂です。風呂からは離着陸する飛行機を眺めることができます。

また1泊5,000円からで宿泊も可能。

空港の利用客や職員などを狙った24時間営業の施設として去年12月にオープンしましたが…

「空の湯」を運営する三栄メンテナンスの萩原康宏社長、

成田は1月後半にはコロナの影響が出ていた。

この施設では宿泊客の受け入れを週末に限定するなど営業時間を短縮。

およそ20人いた従業員は半分に減らしました。

今は地元客をターゲットになんとか営業を続けています。

飛行機も見られる。風呂も入れる。家からも近いのでいい。

コロナ前の水準に戻るには数年かかると見ています。

生き残っていくには経費をかけないことと地元客にどれだけ来てもらうかに尽きる。

周辺地域の経済にも大きな影響を与えている成田空港。

復活のカギを握るのが本格的な国際線の再開ですが…

2024年にならないと去年のレベルまで回復しないという予測。

4万3,000人が空港で働いていて、その周辺の雇用も生んでいる。

できるるだけ、それが失われないようにしなければいけない。

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